僕らのソウルフード。新潟あっさりラーメン「三吉屋 本店」
ソウルフード・食べる
2019.04.01
あの店のアノ味。みんながときどき無性に食べたくなる、ソウルフード。
ほっと心を休めたいとき、慣れ親しんだあの味が恋しくなる。そんな新潟市民のココロもカラダも癒してくれるソウルフードといえばこちら、新潟5大ラーメンのひとつ「新潟あっさりラーメン」でお馴染みの「三吉屋 本店」。街とともに歩んできた歴史、60年余も変わらぬ味を守り続けたその信念など、店主・坂田さんにお話をうかがいました。

三吉屋本店
坂田和男 Kazuo Sakata
1948年に生まれ、御年71歳。大学以降を東京で過ごす。父が営んでいた「三吉屋 本店」を手伝うこととなり、ゼロからラーメンの道に入って40年余。新潟ラーメン界のレジェンドと称され、三吉屋ブランドを守り続けている。
これが新潟5大ラーメンのひとつ「三吉屋 本店」のラーメン
「三吉屋 本店」のラーメンは、“あっさり”を象徴する一杯です。煮干しやとんこつ、野菜などを炊いたきれいなスープ、のど越しと弾力を兼ね備えた極細麺、具は脂身の少ない豚モモ肉のチャーシュー、メンマ、ナルト、ネギが盛られたいたってシンプルなもの。しかし、ただ“あっさり”なだけではありません。しっかりとしたコクがあり、物足りなさを感じさせないのが特徴です。

古町とともに歩んできた歴史は60年余
昭和32年、まだ古町に堀が存在していた頃。当時はよく見かけた、屋台が少しばかり立派になった小屋のような店舗で「三吉屋 本店」の歴史は始まりました。4席しかないカウンターで提供していたのは、今と変わらない「中華そば」。現在の場所(西堀)に実店舗を構えたのは、開店から数年が経ってから。昭和39年に開催された新潟国体のあおりを受け、店をこの地に移したのです。当時から値段以外なにも変わっていない店内では、初期のレジスターや食券がいまだに使われています。ちなみにメニュー看板には「中華そば」などの表記にならび、当時人気を博していたサイダー「シトロン」の文字のなごりも。「三吉屋 本店」は60年余に渡って古町という街とともに歩んできました。大和デパートが閉店し、NEXT21も変わり、そして新潟三越も…。これからの古町を危惧しているという坂田さん。でも、暖簾をくぐって見える開店当時から変わらぬ店構えと味だけは守り続けたいと語ってくれました。



味を変えない。これしかできないから芸はない。
「60年も変わらないラーメンを出している。これしかできない(しない)から芸はない」と坂田さん。その言葉の裏には、長年通ってくれているお客さんたちへの思いがあります。三吉屋のラーメンは、家族3世代で食べにくることもざらにあるそう。親が子へ三吉屋のラーメンの味を伝え、それがまた繰り返されていきます。毎度毎度「おいしかった」と伝えることは、恥ずかしがり屋な新潟の県民性では難しいでしょうが、「ご馳走様」と「ありがとうございました」この二言のやり取り、目を合わせるコミュニケーションだけで、坂田さんはお客さんが味に満足してくれたか感じとっているそうです。ずっと変わらぬ味を、みんなが求めてくれている。だからこそ、お客さんの気持ちを裏切らないために、“味を変えない”を貫き通しています。

ラーメン職人として「変わらぬ味」を守り続けていきたい。
坂田さんは本店を守り、お兄さんは信濃町、弟さんは駅南で各々「三吉屋」の看板を背負っています。60年以上も人気店の地位を守り続けているのであれば、県内にいくつ支店があってもおかしくないと思っていました。どうして3店舗だけなのだろう。でも話を聞いているなかで、その疑問は解決されました。西堀、信濃町、駅南それぞれで提供されている同じ「中華そば」。実際に食べ比べたことのある人なら分かると思いますが、店舗によって若干味わいが異なります。その理由のひとつが厨房環境。とても繊細に作られているスープには、あっさりのなかにしっかりとしたコクを出すために大量のとんこつを使用しています。清湯スープに近い状態に仕上げるため、弱火でじっくりと煮込んでいるのです。この仕込みに使っている寸胴がポイント。大きさによって、仕込む量によって、若干のバラつきが出てしまうんだとか。ずっと味を守り続けてきた3兄弟ですら味の違いが出てしまうのだから、とても他人に任せるなどできない。経営者の立場であれば、支店を増やし収益を上げることを考えます。でも「三吉屋」の3兄弟は、経営者ではなく、ラーメン職人として味を守る、伝えることを大切にしているのです。「いつでも変わらぬ味を食べられる」そのことを守り続けたいという坂田さんの気持ちを聞いて、この懐かしい「中華そば」の味がまたすぐに恋しくなるような気がしました。

三吉屋 本店
新潟県新潟市中央区西堀通5-829
025-222-8227
11:00~16:00、17:00~19:00 / 火曜
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