ハンバーガーを食べるときに困ることってありませんか?具材の層が少ないハンバーガーだったら、ガブッとかぶりつけるんだけど、肉、トマト、チーズ、ベーコン、卵などの具材が何重にも積み重ねられたハンバーガーの場合、どうやってかぶりつけばいいの…と。こんなとききれいに食べることができる、正しい食べ方というのはあるんでしょうか? 今回はボリューム満点のハンバーガーを提供している「KEN’s BURGER」の遠藤さんに、ハンバーガーへのこだわりと分厚いハンバーガーの正しい食べ方を教えてもらいました。
KEN’s BURGER
遠藤 和彦 Kazuhiko Endo
1975年三条市生まれ。高校卒業後、松ヶ根部屋(まつがねべや)に入門し力士として過ごす。ケガにより相撲界を離れ、飲食業を経験したのち、長崎の佐世保バーガーの店で修行。2011年 新潟へ戻り、上古町に「KEN’s BURGER」をオープンする。看板犬のチョコちゃんをかわいがっている。
——今日はよろしくお願いします。ハンバーガーショップらしくアメリカンな店内ですね。
遠藤さん:店にポスター、ナンバープレート、ミニカーなどアメリカンテイストの雑貨を飾っているのは、ハンバーガーショップだからということもあるんですけど、私の個人的趣味でもあるんです。本町にある雑貨屋さんで買ってきたり、ネットオークションで手に入れたりしています。ナンバープレートは状態や年代にもよりますが、州によっても人気がちがうので、値段も変わってくるんです。
——コレクションも兼ねているんですね。メニューを見るといろいろなハンバーガーがありますが、どれがおすすめですか?
遠藤さん:1番人気は「古町スペシャルバーガー」です。これは、肉、卵、チーズ、厚切りベーコンという人気具材が勢ぞろいしている、オールスターのようなハンバーガーです。味のバランスもいいのでおすすめですね。それから「ベーコンモッツァレラバーガー」。肉、厚切りベーコンの他に、モッツァレラチーズが入っていて、さっぱりして食べやすいので女性に人気があります。あと「アボカドサルサチーズバーガー」もピリ辛で軽い刺激があり人気のハンバーガーです。
——どれもおいしそうですね。いま目の前にボリューム満点のハンバーガーが運ばれてきたんですが、これはなんというハンバーガーですか?
遠藤さん:これは「MAD BURGERシリーズ」の「KAMIFURUごちそうバーガー」です。「MAD BURGERシリーズ」にはすべて肉が2枚使われています。その中でこのハンバーガーには、肉、卵、チーズ、厚切りベーコン、アボカド、グリルドパインといった主役級の具材がたっぷり使ってあるんですよ。クレイジースモール、クレイジージャンボの2種類からサイズを選ぶことができ、これはクレイジースモールになります。
——「KAMIFURUごちそうバーガー」ってスモールサイズでもこの大きさなんですね(笑)。どこから食べたらいいのか迷っちゃいますが、正しいハンバーガーの食べ方ってあるんですか?
遠藤さん:正しい食べ方はありません。ハンバーガーを食べるときは汚れて当たり前なので、手も口のまわりも汚して豪快に食べてください。ひとつだけおすすめしたいのは、上下のバンズをぎゅっと押しつぶしてから食べてみてほしいです。そうすることで、具材がパンズになじんで一体感が生まれ、おいしく食べることができるんですよ。
——なるほど。きれいに食べなくてもOKなんですね(笑)。ハンバーガーの重ね方って作る上で重要なんでしょうか?
遠藤さん:もちろんです。重ねる順番が変わるだけで味が変わりますから。「KEN’s BURGER」ではハンバーガーによって重ね方をすべて変えています。たとえば、野菜の上に肉を乗せる場合と、肉の上に野菜を乗せる場合とか。一番おいしく食べられる順番で重ねるようにしてるんですよ。
——そうなんですね。重ね方にこだわってるということは、具材にもこだわっているんですか?
遠藤さん:はい。自家製ベーコンは厚さを5ミリにそろえています。肉も自家製で、噛んだときに肉汁が染み出るよう、使う部位や配合に気を使ってますね。野菜はシャキシャキした食感が大切ですから、鮮度にはもちろんこだわります。パンズは業者さんに配合の指示をして作ってもらっているオリジナルです。
——主要な具材はすべてこだわりを持って作っているんですね。それを調理する際はどんなことに気をつけてるんですか?
遠藤さん:私が修行した「佐世保バーガー」のスタイルどおり、必ず注文を受けてから作るということですね。作り置きしておくと、肉汁をはじめとした具材の汁が抜け出てしまうし、その汁でパンズも湿ってしまうんです。調理する間待っていただくことになりますが、作りたてのおいしいハンバーガーを味わっていただきたいので、ご理解いただきたいところです。作るときは全体のバランスに気をつけています。いろいろな具材を重ねているので、ひとつひとつが主張しすぎると味がバラバラになってしまうんです。いっしょに食べたときにバランスよく味わえるよう心がけてますね。
——遠藤さんはお店を開く前は何をされていたんですか?
遠藤さん:中学を卒業して松ヶ根部屋に入門し、若嶋津(わかしまづ)の弟子として5年ほど力士をやっていました。でもケガでやめることになって、東京の飲食店でしばらく働いていたんです。そのとき、たまたま佐世保バーガーの店をやっている方と知り合い、長崎の店でハンバーガーづくりの修行をさせてもらうことになったんです。
——おすもうさんだったんですか!ちょっと驚きました。佐世保バーガーのお店での修行が「KEN’s BURGER」の原点になっているんですね。
遠藤さん:そうですね。その頃には自分のお店をやりたいと思っていたので、いろいろ勉強するつもりで働いていました。その後2011年に新潟に戻り、「KEN’s BURGER」をオープンしたんです。カミフル(上古町)に出店した理由は元気な街だと思ったからです。ハンバーガーを食べながら歩くことが似合う街なんじゃないでしょうか。
——なるほど。ではお客さんはやはり若い人が多いんでしょうか?
遠藤さん:専門学校の学生さんなど若い人はもちろんですが、80歳くらいのおじいさんやおばあさんも来てくれますよ。どちらかといえば女性が多いですね。お店で食べていく人とテイクアウトのお客さんは半々くらい。夏はテイクアウトが多いし、冬は店の中で食べる人が多いです。いろいろな年代のお客さんが来てくれるので、上古町に出店してよかったと思っています。
——最後に遠藤さんのハンバーガーに対する思いを聞かせてください。
遠藤さん:そうですね。「軽食」というニュアンスではなく「料理」としてのハンバーガーを提供していきたいと思ってます。もちろんリーズナブルなファストフードのハンバーガーもいいんですけど、具材から手作りしているハンバーガーのおいしさをもっと知ってほしいと思ってます。たとえば、夕飯に何を食べるのか選ぶとき、ラーメン、イタリアン、焼肉など料理の名前がいろいろ挙がると思うんですが、そこにハンバーガーが入るようになってほしいんです。
元力士という驚きの経歴を持つ遠藤さんが作るのは、ボリューム満点なビッグサイズのハンバーガー。サイズは大きいものの、ひとつひとつの具材にこだわり、全体のバランスに気を使った繊細な味わいです。ハンバーガーはきれいに食べるものではないそうなので、手や口をソースだらけにして豪快にかぶりついて味わいましょう。