レトロな雰囲気のなかで楽しめる
「猫町珈琲店」のコーヒーと猫雑貨。
カフェ
2025.11.18
昔ながらの建物が並ぶ村上市中央商店街の「町屋通り」。そのはじっこに佇む薄荷色のレトロな外観の建物に、「精巧舎村上印刷所」という看板が掲げられているのですが、その下には小さく「猫町珈琲店」の文字が……。扉を開いて中に入ってみると、そこは猫雑貨に囲まれた異空間。柔らかい雰囲気の店主・板東さんがお出迎えしてくれました。
板東 寛司
Kanji Bando(有限会社 風呂猫)
1950年兵庫県生まれ。千葉大学写真工学科卒業。出版社、映像制作会社勤務を経て、1991年に「風呂猫スタジオ」を設立。猫専門のカメラマンとして、撮影のみならず出版やデザイン、イベントプロデュースなどを手がける。移住した村上市で2022年に「猫町珈琲店」をオープン。ライターの奥さま共々愛猫家。自宅には4匹の猫を飼っている。
移り住んだ村上の町で出会った
レトロで味わい深い雰囲気の廃屋。
――こちらは元々「精巧舎村上印刷所」という会社の建物だったんですよね。どうしてここで喫茶店をはじめたのか教えてください。
板東さん:村上へ移住してから、猫にまつわる本や雑貨が多過ぎて置き場に困ったので、保管しておくための倉庫を探していたんですよ。そんなときにこの建物と出会い、味わいのあるレトロな雰囲気が気に入ったので、ここで喫茶店をやってみたくなって「猫の日」にあたる2022年の2月22日に「猫町珈琲店」をオープンしました。
――どうして村上へ移住されたのでしょう?
板東さん:村上に初めて来たのは20年前のことでした。私は日本酒が好きで、なかでも「〆張鶴(しめはりつる)」がお気に入りだったので、村上まで買いに来たんです。当時は新潟県外で「〆張鶴」を手に入れるのがなかなか難しかったんですよ。そのときに鮭の塩引講習を体験し、それから毎年通って受け続けるようになりました。
――毎年ってすごいですね(笑)
板東さん:13年間通い続けたので、塩引道場でいちばん上の段位までいっちゃいました(笑)。毎年訪れているうちに村上の町並みや文化が気に入って、夫婦で移住してきたんです。
――そうだったんですね。この建物って、ほとんど手を入れずに利用しているんでしょうか?
板東さん:とんでもない(笑)。屋根から床までボロボロの廃墟だったので、1年半かけてリノベーションをおこないました。ただ、古い建物の雰囲気は残したかったので、建具や家具は古いものを修繕して使っていて、新品はほとんどないんですよ。
――お店全体が「リサイクル」なんですね。
板東さん:そのおかげで、初めてご来店されたお客様には「異空間に来たみたい」と驚いたり喜んだりしていただけます。


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猫にまつわる本やレコード、雑貨……
本物の猫はいないけど「猫カフェ」。
――膨大な量の本やレコードがありますけど、これって全部猫にまつわるものなんですか?
板東さん:2,000冊ほどある本のほとんどは、本好きでライターをやっている妻のものです。2階には「たま猫」と呼ばれるブリキ製の猫のおもちゃと、「猫ポット」「長靴をはいた猫」のコレクションギャラリーがあって、カフェのお客様に公開しています。
――それだけ猫のアイテムが揃っていると、ある意味「猫カフェ」ですね(笑)
板東さん:ときどき猫のいる「猫カフェ」と勘違いしたお客様がいらっしゃって「猫はいないの?」と言われてしまうことがあります(笑)
――これだけ多くの本やレコード、雑貨があるのに、意外と圧迫感を感じないですね。
板東さん:天井の高い町屋ならではのつくりのおかげですね。ゆったり寛いだ時間を過ごしていただきたいので、広めに余裕を持ったレイアウトにしているんです。お客様からは「コーヒーを飲みながら本を読んで過ごしていたら、時間が経つのを忘れてしまった」と言っていただけます。
――それほど居心地がいいんでしょうね。コーヒーやミルクのカップが、取っ手まで猫の手になっていて可愛いです(笑)。こちらでは、どんなコーヒーが楽しめるんですか?
板東さん:自家焙煎した3〜5種類の豆から、好きなものをお選びいただけます。コーヒーは食品と同じように鮮度が大切ですから、使う前に焙煎するよう心掛けているんです。
――自家焙煎したコーヒーが飲めるんですね。
板東さん:以前住んでいたところは山の中だったので、コーヒー豆を売っている店がなかったんです。だから美味しいコーヒーを飲むためには、自分で焙煎するしかなかったんですよね。焙煎については独学で身につけたんですけど、もっと勉強して美味しいコーヒーを提供できるよう極めていきたいと思っています。


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「猫町珈琲店」のオーナーは
猫の写真専門のフォトグラファー。
――村上へ移住する前はどんなお仕事をされてきたんですか?
板東さん:実は私、猫の写真を専門に撮影するフォトグラファーなんですよ。出版社や映像制作会社で経験を積んで写真で独立することになったんですけど、たくさんいるフォトグラファーと差別化するために自分の武器になるものはないかと考えました。そこで大好きな猫を専門に撮るようになったんです。今でこそ猫の写真を撮影するフォトグラファーはたくさんいますけど、当時はまだ少なかったんです。
――そこもやっぱり猫専門なんですね(笑)。フォトグラファーとしては、どんなお仕事を?
板東さん:猫の写真撮影はもちろん、オリジナルカレンダーやポストカード、写真集のデザインから編集出版まで携わってきました。「猫とアート」をテーマにした企画展やイベントもプロデュースしています。
――イベントのプロデュースまでやっているんですか。
板東さん:なかでも私が主催している「日本招猫倶楽部(にほんまねきねこくらぶ)」が毎年9月29日の「招き猫の日」ちかくに伊勢市や瀬戸市などで開催している「来る福招き猫まつり」は、30年も続いているイベントなんですよ。瀬戸市では「せともの祭」と並ぶ二大祭りになっていて、市から表彰も受けました(笑)
――30年も続いているのは、すごいですね。
板東さん:期間はイベント参加のために「猫町珈琲店」もお休みさせていただきます。他にも仕事の合間に喫茶店の営業をしているので、お客様からは「いつ来ても閉まっている」と言われてしまうんです(笑)。ご予約いただかなくてもお越しいただけますが、遠くから来られて閉まっていたり満席だったりすると申し訳ないので、ご予約をおすすめします。

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