New Eyes Niigata #11 マーク

New Eyes Niigata

2026.08.25

目に映るもの、出会う人、そして日々の生活……海外から新潟にやってきた人たちは、今、この街でどんなことを思い、感じているのでしょう。新シリーズ『New Eyes Niigata』では、海外出身の皆さんが歩んできたこれまでの人生の物語を振り返りながら、彼らが「新潟」という新しい環境で見つけた、小さな発見や気づきをお伝えしていきます。

 

11回目は、オーストラリア・マジー出身のマークさんです。2002年に来日し、現在は新潟でイングリッシュスクール「Cubby House」を運営しています。日本語がまったく話せない状態から、どのような経緯で新潟へ移住し、独自のスクールを立ち上げたのでしょうか。来日した当時のエピソードから新潟での生活、そして現在の教育活動に至るまでの歩みをうかがってきました。

 

 

企画/プロデュース・北澤凌|Ryo Kitazawa
イラスト・桐生桃子|Momoko Kiryu

 

フレーズ集片手にはじまった新潟での生活。

――マークさんは、いつ頃日本にいらっしゃったんですか?

マーク:2002年の4月16日です。ちょうど日韓ワールドカップが開催される頃ですね。

 

――サッカーがお好きでそのタイミングに?

マーク:いえ、オーストラリアで出会った妻を追いかけて日本へ来ました。彼女が先に地元の新潟へ戻ることになったので、僕も仕事を辞めて日本へ行くことを決めたんです。

 

――当時の日本語力はどうだったんですか?

マーク:まったく話せませんでした。最初は新潟にある妻の実家にホームステイをしていたんですが、旅行用のフレーズ集を片手に、ジェスチャーを交えながらコミュニケーションをとっていました。留守番をしたときは、お義母さんから「お腹が空いていますか」と聞かれると、僕も「お腹が空いていますか」とオウム返しにしていましたね(笑)

 

――そこからどのように日本語を覚えていったんでしょうか。

マーク:恥ずかしがらずに、覚えたフレーズを誰にでも使うようにしていました。お店の人に唐突に話しかけたり、仕事から帰ってきたお義父さんに、毎日「今日どうでしたか」と聞き続けたり。知っている言葉をどんどん使って、自分から距離を縮めていくことが上達の近道でした。

 

――マークさんの出身地である「マジー」は、どんなところなんですか?

マーク:シドニーから北西に約300km離れた、人口1万5000人ほどの小さな町です。「ワインと蜂蜜の土地」とも呼ばれる自然豊かな場所で、人間よりも羊の数の方が多いくらいですね。僕自身も牧場で育ち、学校から帰ると馬に乗って遊んでいました。

 

 

――マジーと新潟で、似ていると感じる部分はありますか?

マーク:食べものが美味しいところですね。それから、人の距離感も少し似ています。小さなところなので最初は打ち解けるのに少し時間がかかりますが、一度仲良くなると家族のように温かく接してくれます。

 

――逆に、文化の違いを感じる部分はどこでしょうか。

マーク:オーストラリアはおおらかというか、全体的に緩やかなんですよね。バスや電車が時間通りに来ないのは日常茶飯事です。その点、日本は効率的で、特に専門のお医者さんにすぐ診てもらえる医療制度は本当に素晴らしいシステムだと思います。これは決して当たり前のことではないですからね。

 

――新潟で暮らす中で、もっとこうすればいいのにと感じる部分はありますか?

マーク:公園の芝生がいつも長かったり、道路脇に雑草が多かったりすることですね。新潟の海は本来すごく綺麗なのに、ゴミが落ちていたりして、手入れが行き届いていない場所が多いんです。オーストラリアは公園やビーチ、道もすごく綺麗に管理されています。新潟も環境整備にもう少しお金をかければ、もっと人が集まる場所になるんじゃないかなと思います。

 

――オーストラリアは環境整備に対する意識が高いんですね。

マーク:向こうでは、どこにでも芝生があるのが当たり前なんです。だから、日本に来てはじめて土のグラウンドでラグビーをしたときは「砂埃もすごいし、痛そう!」と本当にびっくりしました。

 

――日本へ来る際、オーストラリアから持ってきた思い入れのあるアイテムなどはありますか?

マーク:ラグビーのシャツですね。向こうにいた頃は地域のチームに所属して、仕事のように本格的にプレーしていた時期もあったんです。だから日本へ来たときも、真っ先に「ラグビーチームはどこ?」と探してチームに入りました。

 

 

――マークさんのルーツとも言える大切なアイテムなんですね。

マーク:ええ。オーストラリアからたくさん持ってきたんですが、今はもう僕自身はプレーしていないので着る機会がなくて。最近は娘が「可愛いから貸して」と言って、ファッションとして着ていますね(笑)。あとはものではないですが、オーストラリアのソウルフードであるミートパイも僕を象徴するものです。向こうには個人で営業しているミートパイ屋さんがそこら中にあって、お店ごとに独自のこだわりの味があるんですよ。この「店舗ごとの味へのこだわりっぷり」は、日本のラーメン屋さんとすごく似ていますね。僕も向こうにいた頃は、決まったお気に入りのお店があって、よくそこで買って食べていました。

 

英語を「学ぶ」のではなく「英語で過ごし、英語で学ぶ」。手作りのスクールに込めた想い。

――イングリッシュスクール「Cubby House」はどんな経緯ではじめたんでしょうか。

マーク:最初は新潟の英会話教室で働いていたのですが、1回40〜50分のレッスンでは物足りなさを感じていました。もっと長い時間を子どもたちと一緒に生活しながら、英語に触れられる環境を作りたかったんです。当時は新潟にそうしたスクールがなかったので、一度埼玉や東京のインターナショナル幼稚園で働き、運営やアクティビティのやり方を学びました。

 

――修業期間を経て、新潟に戻られたんですね。

マーク:2013年に新潟へ戻って、スクールをオープンしました。ただ、最初はまとまった資金がなかったので、売りに出されていた元薬局の建物と駐車場をそのまま賃貸として貸してもらったんです。そこから少しずつスクールを軌道に乗せて、開業から6年経ってようやくこの場所を買い取ることができました。

 

――「Cubby House」は、一般的な英会話教室とどのような違いがあるのでしょうか。

マーク:英語をただ「勉強する」のではなく、「英語で過ごし、英語で学ぶ」場所だということです。言葉を繰り返して暗記させるよりも、英語を使いながら遊んだり生活したりする。そうすることで、子どもたち同士が自然と英語で会話するようになります。ホームステイに近い感覚ですね。

 

 

――子どもたちが日本語を使わない環境を作るのは、難しくないですか?

マーク:誰かが日本語を話すと、せっかく作った環境が壊れてしまうので、私は基本的に「日本語を使わない・分からない人」に徹しています。たとえば、「ママがいい~~」と泣いている子がいれば、日本語で慰めるのではなく「I know. You want Mommy, right?」「You can say ” I want my Mommy”」と、自分の要求を英語で伝える方法をその都度インプットしていくんです。そうやって環境が定着してくると、今度は子どもたち同士で「ここは日本語じゃないよ、こう言うんだよ」と自然に教え合うようになります。子どもたち自身でサバイバルしているような感じで、面白いですよ。

 

――子ども同士で教え合うんですね。スクールを運営していて、やりがいを感じるのはどんな時ですか?

マーク:生徒たちの成長を実感できたときですね。例えば、小学校1年生の子が自分で原稿を書いて、「北極の動物と普通の動物の違い」について英語で堂々とスピーチをしたりするんです。文法を詰め込むのではなく、子どもが興味を持ったテーマを英語で深掘りしていく姿を見ると、本当に嬉しいです。

 

――本当に英語が日常に根付いているんですね。

マーク:そうですね。だからなのか、うちのスクールは途中で辞める子がほとんどいません。最初は幼稚園に入る前の1年間のつもりでも、小学校、中学校に上がっても「通い続けたい」と言って残ってくれます。私たちは「Cubby House Family」と呼んでいるんですが、ただ英語を教えるだけの関係ではなく、ひとつの家族のように子どもたちの成長を見守っていけることが、私自身の大きな幸せになっています。

 

 

――スクールの建物も、木材が使われていてとても温かみがありますね。

マーク:外壁の木材の塗装やメンテナンスは、今でも自分でやっています。綺麗な状態をキープするのが好きで、足場を立てて上まで塗るところまで、愛情を注いで手入れを続けている大切な場所です。

 

――最後に、これから新しいことに挑戦したいと考えている人たちへメッセージをお願いします。

マーク:他人の目を気にしすぎず、自分が本当にやりたいことを見つけることです。誰がどう思うかではなく、自分がどう感じるかを大切にしてください。一度勇気を出して外の世界に出てみると、新潟の魅力にも改めて気づくことができると思います。

 

※最新の情報や正確な位置情報等は公式のHPやSNS等からご確認ください。なお掲載から期間が空いた店舗等は移転・閉店の場合があります。また記事は諸事情により予告なく掲載を終了する場合もございます。予めご了承ください。

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