川原や海辺、山の中など、様々なロケーションで楽しむことのできるバーベキューは、アウトドアシーンを盛り上げる最高のレジャーのひとつです。夏が近づくと、家族で、友達と、仲間と、バーベキューをする機会も増えてきますよね。火をおこして網で焼けば誰でも気軽に楽しめるバーベキュー。でも本格的なバーベキューはもっと奥が深い料理って知っていましたか? バーベキューの奥深い世界を「新潟バーベキュー協会」会長のパンチョ須田さんに教えていただきました。
新潟バーベキュー協会
パンチョ須田 Pancho Suda
本名 須田和行。1958年新潟市生まれ。1985年より新潟県庁前で、釜飯で有名な「ととや」をオープン。約30年続いた「ととや」閉店後は、2012年より「新潟バーベキュー協会」の会長となり、バーベキューの普及活動に尽力している。ドイツワインに詳しいほか、役者としての顔も持つ多彩な人物。
——まずは「日本バーベキュー協会」について教えてください。
パンチョ須田さん:日本に正しいバーベキュー文化を普及するために、2006年に会長の下城民夫さんが東京で設立した団体です。「バーベキュー検定試験」や「バーベキューレシピコンテスト」などの実施、バーベキュー関連のイベントやセミナーを開催したりしています。
——「バーベキュー検定」なんてあるんですね。
パンチョ須田さん:2006年に「日本バーベキュー協会」が考案した教育プログラムです。「初級」「中級」「上級」「MC」の4ランクがあって、「初級」はバーベキューの正しい基礎知識や、手際よく肉が焼けるレベルを目指すものなので、どなたでも気軽に受けることができますよ。検定を通して、正しいバーベキューの知識が広がることを期待して実施しているんです。
——須田さんも「バーベキュー検定」を受けたんですか?
パンチョ須田さん:もちろんです。検定を受けるまではプライベートで普通にバーベキューをやっていて、技術や知識には自信を持っていたんです。だから「バーベキュー検定」を受けるときは「こんなもん、楽勝だろう」なんて感じだったんですけど、いざ受けてみたら知らないことばっかりで「目から鱗」でした。
——そんなに知らないことばかりだったんですか?
パンチョ須田さん:今までやってきたバーベキューの知識が覆りましたね。炭の配置方法だけで6種類もあるんですよ。ふつう、あまり知らないじゃないですか。
——知りませんでした(笑)。須田さんは現在何級なんですか?
パンチョ須田さん:「上級」です。「上級」の検定試験は、50問の筆記試験と1時間半の間に料理を6品作る実技試験なんです。審査員が2人でチェックする厳しい試験で、合格率は受験者の20%くらいかな。全国に180人くらいしかいないと思います。合格すると協会が発行したIDカードがもらえて、スマートバーベキューを実践できる資格なんです。
——「新潟バーベキュー協会」と「日本バーベキュー協会」はどんな関係なんですか?
パンチョ須田さん:「新潟バーベキュー協会」は「日本バーベキュー協会」から正式に認定された地域協会の第1号なんです。地域協会っていうのは「日本バーベキュー協会」の趣旨を受け継ぎつつ、各地域で活動をしながら正しいバーベキュー文化を広めることが目的なんです。
——新潟県が一番最初なんですね!全国にどれくらい協会があるんですか?
パンチョ須田さん:40協会くらいありますね。「新潟バーベキュー協会」には上級インストラクターが15人もいて、地域協会の中でもトップクラスのレベルなんですよ(笑)
——それはすごい!須田さんはいつ頃から入会したんですか?
パンチョ須田さん:2012年に入会したんですが、それからすぐに会長になりました。最初は他の仕事と掛け持ちしてたんですが、だんだんバーベキュー協会の仕事が忙しくなってきて掛け持ちが難しくなったので、2017年頃からは「新潟バーベキュー協会」に絞って活動しています。
——「新潟バーベキュー協会」は、どのような活動をしているんですか?
パンチョ須田さん:新潟県内の各地で「バーベキュー検定」を年1〜2回開催しています。それから、イベントやパーティーなどへの出張バーベキューも行っています。2018年は85回もバーベキューをしました。埼玉県など、県外からも呼ばれることがあるんです。
——ちなみに出張バーベキューの費用はいくらくらいなんですか?
パンチョ須田さん: 1人3,500円(10人より受付)で出張します。もちろん、肉のグレードをもっと上げてほしいとか、ボリュームをもっと多くしたいなどの要望にも対応しますので、その場合は費用も変わります。食材、機材などは全て「新潟バーベキュー協会」で用意します。
——本格的なバーベキューについて教えてください。
パンチョ須田さん:日本でいうバーベキューっていうのが、本来のバーベキューとは違うことが多いんです。日本では、薄い肉や切った野菜をグリルで囲んで焼くのがバーベキューだとほぼ認識されています。あれは「焼肉パーティー」なんですよ。本来のバーベキューというのは、ホストが調理を担当し、グリルの上で大きな肉の塊を豪快に焼くんです。ゲストたちはテーブルで前菜やお酒を楽しみながら肉が焼けるのを待ち、その間、歓談を楽しみます。焼きあがった肉を、食べやすく切ってゲストにシェアしてみんなでいただくんです。
——あー!そんなシーンよく洋画で見ますね。
パンチョ須田さん:そうそう。しかも肉だけではなく、前菜からフルーツまで出てくるフルコースなんです。
——それはもう料理ですね!焼肉パーティーとは違うことがわかりました。
パンチョ須田さん:「日本バーベキュー協会」でも提唱している「スマートバーベキュー(登録5716521号 出願番号商願2014-054635)」というコンセプトも、バーベキューの焼肉パーティー的なイメージを払拭するために生まれた言葉なんです。この言葉は「日本バーベキュー協会」の登録商標になってます。
——「スマートバーベキュー」って言葉は初めて聞きました。
パンチョ須田さん:「smart(スマート)」っていうのは「賢い」っていう意味なんですが、バーベキュー文化が社会でもっと広く活用できるように、より賢くスマートなバーベキューを心がけようというものです。ルールやマナーを守ったり、ちょっとしたコツを使うことで、バーベキューがもっと楽しくなるっていうことですね。
——それではバーベキューのコツをお聞きします。誰もが苦労する炭おこしのコツってあるんでしょうか?
パンチョ須田さん:「日本バーベキュー協会」では「スマートバーベキュー」のための必須アイテム「3種の神器」を紹介しています。そのひとつが炭おこしの道具「チムニースターター」です。暖かい空気が上昇気流を起こす原理を利用して、扇がずに放っておくだけで炭がおこせる器具です。これを使えば誰でも30分くらいで簡単に火がつけられますよ。
——「3種の神器」!あと2種は何があるんですか?
パンチョ須田さん:肉の脂が炭に滴り落ちると、火柱が上がることがありますよね。そんなときに使うのが「水鉄砲」です。炭火に向けてピュッとひと吹きするだけ。100円均一ショップで買える子供のおもちゃで十分です。あとは、撤収のときに重宝な「火消し壷」。燃えた炭を中に入れて蓋をすると、壺内の酸素が断たれて消火されます。しかも燃え残った炭は再利用できるというエコな優れものなんです。
——勉強になります!バーベキューでやってはいけないことってありますか?
パンチョ須田さん:先ほどお話しした炭の処理ですが、土の中に埋めたりするのは危ないのでやめましょう。下手したら山火事の原因になりかねません。あと火を扱うのでヤケドには十分気をつけたいですね。化繊の軍手を使う人が多いんですが熱で溶けちゃうので、熱に強い革手袋をお勧めしています。最後は生焼けに注意してほしいですね。鶏肉、豚肉は中までしっかり火が通ったことを、温度計などで確認してから食べましょう。
——なるほど、気をつけたいですね。コツのまとめでバーベキューの極意ってなんでしょうか?
パンチョ須田さん:素材に合わせた焼き方をしてあげることですね。焼き方ひとつ変わるだけで、食材がこんなにおいしくなるのかと感動しますよ。野菜や果物も焼くことで、いつも食べてるものとは違うおいしさを発見できます。あと炭の配置や火力を加減して、熱をコントロールすることです。まさしく「炭を制するものは、バーベキューを制す」です。
——「新潟バーベキュー協会」で今後やりたいことはありますか?
パンチョ須田さん:バーベキューの楽しさや、正しいマナーやルールなどを、もっとたくさんの人に知ってもらうために、新潟県で誰でも気軽に食べに来れるような、大きなバーベキューイベントを開催したいですね。よく「パンチョさんのバーベキューはどこで食べれるの?って?」聞かれたりするので。
——最後にバーベキューの醍醐味ってなんでしょう?
パンチョ須田さん:家族や親しい友人たちと楽しい時間や、おいしいものを食べる喜びや驚きを共有することができるところです。あと、グリルの蓋を開けた瞬間のゲストのリアクションは最高です。あのリアクションのために、バーベキューをやっているような気もしますね。
「新潟バーベキュー協会」の会長・パンチョ須田さんにいろいろと教えていただき、いままで気軽に楽しんでいたバーベキューも、本来はもっと奥が深い料理だということを知りました。わいわい焼肉パーティーを楽しむのもいいけれど、本格的なバーベキューに興味がある方は「バーベキュー検定」にチャレンジしてみてはいかがでしょうか?
新潟バーベキュー協会
新潟県新潟市中央区弁天橋通1-20-6
090-2223-4004