「カヌレ」というスイーツをご存じですか? 新潟県内にはまだ専門に販売するお店どころか、取り扱っているお店も少ないのだそうです。そんな中、今年5月、新潟駅前にオープンしたのが「canelé de CHIANTI(カヌレ・ド・キャンティ)」。今回はオーナーの川又さんに、カヌレとは何ぞやというところから、お店のこだわりまでいろいろお話を聞いてきました。
canelé de CHIANTI
川又 真 Makoto Kawamata
1986年長岡市生まれ。「にいがた食育・保育専門学校えぷろん」でお菓子作りを学び、「海の洋館 ネルソンの庭」にパティシエとして就職。デザート作りの傍らイタリア料理にも携わるようになり、その後メディアシップ内にあった「レストランパッショーネ」で2年間料理長を務める。2016年8月に「Atelier CHIANTI(アトリエ・キャンティ)」オープン。2020年5月からはカヌレ専門店「canelé de CHIANTI」をスタート。中学高校は野球部に所属し、毎日野球に明け暮れていた。
——今日はよろしくお願いします。まずはカヌレがどんなお菓子なのか教えてください。
川又さん:「カヌレ」は、ボルドーにある女子修道院で古くから作られていたフランスの伝統菓子で、正式には「カヌレ・ド・ボルドー」という名前なんです。カヌレ型っていう溝のついた小さな型に蜜蝋を入れて焼いたものを冷やして作ります。その他に縛りはなくてレシピは比較的自由なお菓子なんです。
——「canelé de CHIANTI」はいつオープンしたんですか?
川又さん:今年の5月から始めました。もともと4年前からイタリアンレストランとして「Atelier CHIANTI」をやってたんです。アラカルトメニューはなくってコース料理だけのお店です。そのお店のデザートでお出ししていたカヌレが好評で、テイクアウトを希望するお客様が多かったんですよ。
——それでカヌレ専門店を始めることになったんですか?
川又さん:新型ウイルス感染症の影響で店内での飲食サービスが難しい状況になってしまって、レストランを休業することになってしまって。その代わりとして、テイクアウトできる商品としてカヌレを思いついたんですよ。
——それでカヌレ専門店をはじめたんですね。いろんな種類があると聞きました。
川又さん:ほとんどのカヌレ専門店は種類がそんなに多くなくて、せいぜい8種類くらいしか置いてないんですよ。「canelé de CHIANTI」では、お客様に楽しんで選んでいただけるように、18種類のカヌレをご用意してます。
——並べ方がまた、楽しく選べそうなスタイルですよね。なんか、希少価値がありそうな…。
川又さん:そうですね。今までやってきたイタリアンレストランの「Atelier CHIANTI」は「アトリエ」という言葉を使うことで、料理を作る「工房」感を出していたんです。「canelé de CHIANTI」は美術館や博物館みたいなギャラリーを意識して、カヌレを作品として展示してみました。
——ギャラリー感がハンパない…。
川又さん:そのギャラリー感を演出するために、ディスプレイがそれらしく見えるように工夫してるんですよ。ポスターや照明にもこだわってます。商品の説明が書かれたプレートや「展示品に触れないようお願い申し上げます」っていう注意書きも、ギャラリーっぽいでしょ? あとカヌレの台は新潟漆器の女性作家さんの作品で、その作家さんしか出せない色や質感の、ひとつ2万円もするものなんですよ。200円で売っているカヌレが2万円の台に乗ってるんですよね(笑)
——ひとつひとつこだわりが違うんですか?
川又さん:18種類のカヌレを作っているんですけど、18種類すべて別々に生地を作ってます。トッピングはむしろ目印やアクセントのために乗っけてるって感じです。イタリアンレストランの時から、どんな料理も妥協しないで、きちんと手間ひまかけて作るようにしています。私たちの仕事って手間ひまを売るようなものだと思ってるので、そこを惜しんだらダメなんですよ。
——全部おすすめかもしれませんけど、あえて人気があるカヌレを聞いちゃってもいいですか?
川又さん:そうですねぇ。ダントツ人気は「塩キャラメル」ですね。ほろ苦さと甘さが特徴で、お客さんからの注文には必ず入っているくらい人気があります。あとは「西京味噌」ですかね。甘口の白味噌を生地に練りこんだカヌレで、甘じょっぱいみたらし団子みたいな味わいです。定番商品の他に季節限定のカヌレもあります。「いちご」や「はちみつレモン」のように季節ごとの旬の食材を使ったカヌレです。今の時期は「マンゴー」かな。マンゴーのピューレを生地に練り込んだ上から、さらにマンゴーをトッピングしてあるので、マンゴー感がハンパないカヌレですね。
——川又さんはお菓子作りをどこで勉強したんですか?
川又さん:私たちが就職する頃は「就職氷河期」だったんです。手に職をつけた方がいいといわれたので、新潟市にある「にいがた食育・保育専門学校えぷろん」でパティシエ目指してお菓子作りの勉強をしました。卒業してからは「海の洋館 ネルソンの庭」というイタリアンレストランにパティシエとして就職して、デザートの他にウエディングケーキを作ったりしてました。でもスタッフが少ないのでだんだん調理もするようになっていったんです。その後、メディアシップにあった「レストランパッショーネ」で2年ほど料理長をやってました。
——その後独立して「Atelier CHIANTI」をオープンしたんですか?
川又さん:30歳頃を目処に独立したいと考えていました。そのくらいの歳だったら失敗してもやり直しができるし、攻めの姿勢でいける気がしたんです。「Atelier CHIANTI」は料理は少なめにして種類を多く食べれるフルコースのイタリアンレストランとして始めたんですけど、新潟のお客様にはあまり馴染みのないスタイルのお店だったので、最初は受け入れてもらえませんでしたね。
——たしかに、あまりないスタイルのお店ですよね。
川又さん:いいものはいいと信じてやってきたので、お客様に料理の工程まで丁寧にご説明して、どれだけ手間ひまかけて作っているのかを伝えるようにしてきました。そういう成果があったのか、少しずつわかっていただけるようになっていきましたね。
——今後「Atelier CHIANTI」を再開する予定はあるんでしょうか?
川又さん:新型ウイルス感染症が落ち着いたら「Atelier CHIANTI」を再開したいと思っています。その時は「canelé de CHIANTI」を、今駐車場がある場所に移転してリニューアルオープンするつもりです。「Atelier CHIANTI」はフルコースだけのレストランですけど、いつかおまかせコースだけのレストランもやってみたいですね。
外側はカリッと香ばしく、中側はしっとりもちもちした食感のカヌレ。「canelé de CHIANTI」では18種類もの味が用意されているので、食べる楽しみだけじゃなく、選ぶ楽しみも味わえますよ。どれも美味しそうで目移りしますが…。
canelé de CHIANTI
〒950-0086 新潟県新潟市中央区花園1-5-9 ベロウ花園1F
025-288-5302
10:00-18:00
火曜休