与板にある老舗のお茶屋さんがはじめた蔵カフェ「茶々いま」。
食べる
2022.10.20
与板で江戸時代から続いてきた老舗のお茶屋さん「田中清助商店」では、日本茶の美味しさを多くの人に知ってもらいたいという思いで、日本茶カフェ「茶々いま」をオープンしました。8代目店主の田中さんを訪ねてカフェに向かったのですが、たどり着いた先は……。


有限会社カクタ田中清助商店
田中 洋介 Yousuke Tanaka
1980年長岡市生まれ。大学で気象について学び、東京でシステムエンジニアとして働く。新潟にUターンしてからはゼネコン企業に勤めた後、老舗の伝統を守るため家業の「田中清助商店」に就業し8代目店主となる。2022年に蔵カフェ「茶々いま」をオープン。日本茶インストラクターの資格を持ち、日本茶講座もおこなっている。読書や温泉が好き。
江戸時代から続く老舗のお茶屋さんを守る努力。
——あの〜、すみません……。こちらに「茶々いま」っていうカフェはありますか?
田中さん:いらっしゃいませ、お待ちしていました。「茶々いま」は商店の奥にあるんですよ。
——あ〜っ、そうだったんですね。入ってみたらカフェというより普通のお茶屋さんだったのでびっくりしました(笑)。こちらの「田中清助商店」さんが営業しているカフェなんですね。
田中さん:はい。うちの蔵を利用したカフェなんです。
——蔵があるってことは、大昔から続いているお店なんでしょうか?
田中さん:文政7年に創業して200年続いてきたお店なんです。ちなみに私で8代目になります。

——おお〜っ、江戸時代から続いているんですね!
田中さん:蔵のなかを整理してみると、以前は薬や保険もやっていたようなんですけど、今はお茶と海苔だけで商売しています。
——田中さんは昔からお茶屋さんを継ぐつもりだったんですか?
田中さん:若い頃は思っていなかったですね(笑)。昔から空を見ることが好きで気象に興味を持っていたので、関東の大学で気象の勉強をしました。その後は東京でシステムエンジニアをやっていたんですけど、生まれ育った地元に何か貢献できないかと考えて、長岡に帰ってきてゼネコン企業で働いていたんです。
——家業を継ぐことに決めたきっかけはなんだったんでしょうか。
田中さん:市民活動に参加しているうちに、長岡で頑張っている若い経営者の方々と交流するようになって刺激を受けたんです。せっかく江戸時代から200年近く続いてきた老舗を親の代でやめてしまうのはもったいないと思うようになったので、8代目として跡を継ぐ決心をしました。

——でも、この時代にお茶屋さんをやっていくのは大変そうですが……。
田中さん:確かにそうですね。ペットボトルのお茶が主流になっていて、急須で淹れたお茶を飲む機会は減る一方ですから。まして、うちのお店は自分のところで作ったお茶ではなく、静岡や京都から茶葉を仕入れて販売しているわけですから、なかなか付加価値をつけたり差別化したりするのが難しいんです。
——なるほど。
田中さん:そこで、まずはお茶のことをしっかり勉強しようと思いまして、静岡のお茶農家さんで研修を受けました。お茶摘みの手伝いから工場の掃除や出荷作業などをしながら、お店で販売させてもらっている日本茶が、どのような手間をかけて作られているのかを見てきたんです。そのなかで、農家さんの抱える問題や熱意も知ることができました。そうした生産者の思いを消費者に伝えていくことが、お茶屋としての使命だと感じましたね。
——体験することで感じられることって多いんですね。でも今の主流になっているペットボトルのお茶に対抗することは、かなり難しいように思われますが……。
田中さん:そうですね。ですから、うちにしかできないような製品を考えました。長岡には美味しい地場野菜がたくさんあるので、それを乾燥焙煎して作った「野菜茶シリーズ」や、お茶で作った「クラッカーシリーズ」などです。これらは百貨店の催事でも販売させていただきました。

美味しい日本茶の魅力を伝える蔵カフェをオープン。
——では、蔵カフェの「茶々いま」をはじめたいきさつを教えてください。
田中さん:実は以前にも隣にあったガレージを使って、日本茶カフェを営業していたことがあったんです。ところがお客様が入らなかったので、1年も経たずに閉めてしまったんですよ。与板でカフェをやるのは難しいと感じたので、今度は移動販売車で人の集まるイベントに行って日本茶の提供をはじめたんです。
——美味しい日本茶をたくさんの人に飲んでもらおうということですね。
田中さん:そうなんです。ところがコロナ禍でイベントが減ってしまい、百貨店でやらせていただいていた試飲販売もできなくなってしまいました。そこで反省したのは、よその力に頼り過ぎていたのではないかということです。今まではスーパーや百貨店、イベントに依存しながらやってきたけど、お店自体に集客力を持たせなければ、いつまでたっても自立できないんじゃないかって思ったんですよ。
——それでカフェを?
田中さん:はい。ふたつあった蔵を整理して、ひとつの蔵をカフェとして利用することにしました。大昔からの荷物が納められていたので整理は本当に大変で、丸々2年かかってしまいました(笑)。100年前に建てられた蔵だったので、長岡造形大学で古民家再生を専門にされている教授に相談して、耐震性を調べていただきました。学生さんたちからも協力していただいて、アドバイスを生かしながらリノベーションしていったんです。

——例えば、どんなところにアドバイスを生かしたんですか?
田中さん:せっかく古い蔵を使ってカフェをやるんだったら、使える部分はそのまま使おうということで、大きなリノベーションは吹き抜けにしたことくらいなんです。古い道具もたくさん残っていたので、見せられるものはインテリアとして使ってあります。
——いろいろ見ているだけでも面白いですね。田中さんは「茶々いま」をどんなカフェにしたいと考えられているんでしょうか。
田中さん:日本茶を楽しむためには、美味しいお茶の他に「お茶請け」と「空間」のふたつが大切だと思っているんです。そのすべてにこだわって、美味しい日本茶をゆったりと味わえるカフェにしたいですね。そして来てくれたお客様に日本茶の魅力を伝えたいと思っています。

——田中さんが考える日本茶の魅力ってどんなところですか?
田中さん:手軽に飲めるペットボトルと比べて、急須で淹れるお茶には手間がかかります。でも、そのひと手間におもてなしの心があると思いますし、淹れ方によってもいろいろな味わいが楽しめるんです。コーヒーは有料で日本茶は無料という飲食店も多いですけど、日本茶にだって生産者の手間や思いが込められているわけですから、もっと日本茶の価値感を高めていきたいと思うんです。

——最後に「茶々いま」という店名の由来を教えてください。
田中さん:「茶々いま」の「いま」には、ふたつの意味があるんです。ひとつは、お茶を飲みながら過去でも未来でもない今を感じてほしいという意味の「今」。もうひとつは、自分の家のようにゆっくり過ごしてほしいという意味の「居間」です。「茶々いま」というのは「ただいま」をもじったもので、自分の家に帰ってきたようにほっとできる場所でありたいという思いで名付けました。

茶々いま
長岡市与板町与板423
090-4725-4702
10:30-17:00
日月火曜休
Advertisement
関連記事
食べる
カオスな味に出会えるカレー店「Side by Side Spice Stand」
2022.03.23
食べる
誰もが気軽に立ち寄れて、ケーキやかき氷を楽しめる「café toujours」。
2023.08.23
食べる
ピンチを発想力で乗り越えてきた、地域密着のお店「ほうせい丸」。
2024.02.01
食べる
季節の美味しいものを、若い人にも。古町「割烹本陣」の4代目に聞く。
2020.10.14
食べる
ひとを笑顔にする焼きいも専門店、南区の「SHIRONE いもBugyo」。
2022.12.07
食べる
肉好きを感動させる「BURGER STAND TENDER」のハンバーガー。
2021.07.24
新しい記事
その他
子育てや地域、防災に幅広く取り組む
「蔵王のもり こども園」の園長。
2026.09.10
イエとヒト。リノベーション
イエとヒト。Renovation #2 実家の面影を残し、「裏路地の隠れ家」を内包した家。
PR | 2026.09.09
イエとヒト。リノベーション
「本当に望むこと」をかたちにする。
「高田建築事務所 リフォーム研究所」
PR | 2026.09.09
食べる
キューバサンド片手に散策を楽しむ、
瓢湖の「キッチンカー こばめしや。」
2026.09.08
きれい時間
私のきれい時間 #01
足裏から自分の身体を知る「Artemis」
PR | 2026.09.07
その他
庭と人生、20年の物語。
「Watanabe Garden蔵」
2026.09.06


