「石ころ」という言葉があるように「どこにでも転がっていて価値のないもの」として見られがちな「石」ですが、一方では宝石や金のように価値がつくものもあります。ブレスレットやネックレスなどのアクセサリーとして身につけたり、庭石として庭に置いたりして楽しんでいる方も多いですよね。そんな石の魅力を楽しめるお店が新潟市北区の「天然石工房cue(キュー)」です。今回はオーナーの得能さんにお会いして、石についていろいろと聞いてきました。
ミネラルマート株式会社
得能 達哉 Tatsuya Tokuno
1972年広島県生まれ。様々な仕事を経験し、2016年に新潟市北区で「天然石工房cue」をオープン。趣味は石探しを兼ねた旅行。
——ずいぶんいろいろな商品があるんですね。これは全部、天然石に関係した商品なんですか?
得能さん:そうです。鉱物標本やパワーストーンが人気ですね。ハンドメイドアクセサリーの材料に使う石なんかも扱っているんですよ。
——どうして天然石を扱うお店をはじめようと思ったんですか?
得能さん:海に落ちている綺麗な石を拾って、インターネット販売をしてみたら全部売れちゃったんですよ。そこで今度はただ売るんじゃなくて、加工したものを売ってみようと思いはじめたんです。でも石を加工するときは音が出るので、周りの迷惑にならないような場所に工房を作ることにして、どうせなら工房だけじゃなくてショップもオープンすることにしたんです。
——得能さんはもともと石に詳しかったんですか?
得能さん:専門的な知識はまったくなかったんです(笑)。だから最初は商品も少なくて、お客様も来なかったですね。でも集客やセールスは昔から得意だったので、次第にお客様が増えて商品も売れはじめました。それに伴って常連のお客様から石について教わることが増えて、どんどん知識もついていったんです。
——なるほど。ところで天然石って、どんなふうに仕入れるものなんですか?
得能さん:フランスやドイツ、アメリカなどで開催されている「ミネラルショー」という、世界中から700社の鉱物業者が集まる展示販売会があるんです。私は毎年ドイツの「ミネラルショー」に行って買い付けをしています。
——買い付けのために海外へ出かけるのは大変ですね。
得能さん:海外から石を仕入れるのは苦労も多いですね。買い付けた石を日本へ送るときに、記入した送り状と貨物の内容が少しでも違っていたら、石をドイツへ送り返されてしまうんです。例えば石のなかにライターが1個紛れ込んでいただけでもアウトなので、貨物のチェックは慎重に行っています。
——なかなか厳しいんですね。
得能さん:そうなってしまったら、またドイツに行かなければならないんですよ(笑)。あと荷物の扱いもひどくて、石が割れちゃうこともよくあるんです。だから壊されたくない石は、重いんだけど両手に持って飛行機に乗ることもあります。
——石を持って飛行機ですか(笑)
得能さん:自分で石を掘りに行くこともありますよ。タイとカンボジアの国境にある、地雷の埋まっている草原で、恐怖と戦いながら掘ったこともありました。
——鉱物標本はどんな人が探しにくるんでしょうか?
得能さん:形や色の美しさを求める人と、化学的にコレクションしている人に分かれますね。美しさを求める人には、水晶、フローライト、アメジストといった結晶鉱物が人気です。
——ずいぶんいろんな石がありますよね。
得能さん:他店には置いていないような珍しい石もたくさんありますよ。例えばバラの花のような形をした「デザートローズ」。叩くと澄んだ高い音がするので東京オリンピックの演奏でも使われた、讃岐地方で採れる「サヌカイト」。虫入りの琥珀や化石、隕石なんかもあります。
——「虫入りの琥珀」って聞くと「ジュラシックパーク」を思い出しますね(笑)。ところで、こちらでは天然石を使った体験ができるんですか?
得能さん:「ビスマス」という金属を高温で熱して結晶を作る体験や、天然石のアクセサリーを作る体験ができます。なかでもブレスレットの手作り体験はカップルをはじめとして人気がありますね。ご来店いただければいつでも体験できるんですけど、イベントに出かけている期間は受け付けできないこともあります。
——イベント出店をしていることもあるんですか?
得能さん:出店というよりも、うちが主催したイベントを県内外で開催しているんです。新潟産業振興センターやさいたまスーパーアリーナに会場を借りて、半分は「天然石工房cue」で天然石を販売して、もう半分は出店者を集めて「手しごとマーケット」を開催しています。
——「手仕事マーケット」って、どういうイベントなんですか?
得能さん:名前の通り「手しごと」を集めたマーケットです。商品をそのまま販売するのではなく、ハンドメイド作品だったり、リラクゼーションだったり、「手を使った仕事」を売るイベントになります。
——いろいろなことをされているんですね。
得能さん:「鉱物友の会」というNPO団体にも参加していますよ。全国各地にある団体で、私のまとめている新潟支部だけでも100人の会員がいるんです。登山した先で鉱物を観察して、ついでに環境保護のためのゴミ拾いをしてくる活動なんですよ。ビジネスとは関係なく、石の魅力を広めるために参加しています。
——最後に、将来の夢をお聞きしていいでしょうか。
得能さん:実現するかはわかりませんが、今のような小さな工房ではなくて、大きな石の加工工場を作りたいんです。そこで障がいを抱えた方々に働いてもらって、少しでも社会貢献できたらいいなと思っています。
天然石工房cue
新潟市北区樋ノ入503-7
025-369-4889
10:00-18:00
不定休