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自然を生かした心地よい空間を作る 「Design Room Amano」。

人間が自然を求める心理ってなんだろう。

最近、山や川など自然の中に出かける人がこれまで以上に増えているそうです。新型ウイルス感染症が猛威を奮い始めてからの「STAY HOME」の反動か、また密を避けるために開放的な場所に出かけるという理由もあると思いますが、それ以外にも、人間の「自然を求める心理」のようなものを感じることがあります。ということで今回お邪魔したのは、新潟市西蒲区にある「Design Room Amano(デザインルーム アマノ)」。自然をそのまま生かしながら建築や景観をデザインしている天野さんと髙木さんのお二人から、いろいろお話を聞いてきました。

 

 

Design Room Amano

天野 一博 Kazuhiro Amano

1950年新潟市西蒲区生まれ。農家の長男として生まれ、農業をやりながら自動車修理工場に勤める。その後東京のデザイン学校で建築デザインを学び、新潟に戻って店舗設計事務所で働く。1980年新潟市西蒲区で「Design Room Amano」を開業。プライベートでもバードウォッチング、植物採集など自然と触れ合うのが趣味。アクアリストで写真家の天野尚(あまのたかし)は実弟。

 

Design Room Amano

髙木 英寿 Hidehisa Takagi

1972年新潟市西区生まれ。大学で建築を学び、ハウスメーカーに就職。当時見かけた建物が気に入って、デザインを手掛けた「Design Room Amano」を訪れたことがきっかけで足しげく通うようになる。そのうち仕事を手伝うようになり、そのまま就職。学生時代から幅広いジャンルの音楽を聴くことが趣味。プライベートでも庭づくりを楽しんでいる。

 

自然を自然のまま生かした、心地よい空間をデザイン。

——緑が多くて落ち着く事務所ですね。こちらはどんなことをしている事務所なんですか?

天野さん:建築の設計や監理、宅地造成、景観デザインをやっている建築デザイン事務所です。

 

——事務所は天野さんと髙木さんのお二人でやられてるんですか?

天野さん:もうひとり、私の息子を入れて3人でやってます。うちは個々のデザイナーのカラーを大事にしたいから、仕事をそれぞれで分けています。

 

——なるほど。事務所の共通したコンセプトみたいなものはあるんでしょうか?

天野さん:いい景観があればできるだけ現地の環境をそのまま利用して、建築と調和するようにデザインをしています。いい景観がない場合はお客様と相談した上で植物を植えています。

 

髙木さん:建物の中だけじゃなくて外もリビングだと思って、心地よい空間になるようにデザインしています。

 

箱庭作りをしていた少年が、建築設計事務所を始めるまで。

——天野さんは昔から自然がお好きだったんですか?

天野さん:そうですね。木のみかん箱の中で土や草を使いながら箱庭みたいなものを作って、自然を再現して遊んでました。

 

——今の仕事にそのまま繋がってくるような遊びをしてたんですね。弟の天野尚さんのアクアリウムとも似てるような…。兄弟そろって自然が好きだったんでしょうか?

天野さん:そうかもしれませんね。中学時代に私も弟も生物部だったんです。二人ともそのときの顧問の先生の影響を強く受けてると思います。私は中学3年生のときにイラガの研究で全国最優秀賞をいただいて、昭和天皇に拝謁したこともあるんですよ。

 

——ええっ、中学生で天皇に拝謁ってすごいですね!それじゃあ、その後も自然に関わる仕事を目指してきたんですか?

天野さん:いえ、私は農家の長男でしたから、家を継がなければならないと思ってました。農業をやるかたわら自動車修理工場にも勤めていたんですけど、どうしても建築デザインの仕事がやりたかったので、東京のデザイン専門学校に入学して建築デザインを学びました。新潟に帰ってからは店舗設計事務所に勤めて、ビルの内装や店舗改装の仕事をしてたんです。

 

——じゃあ、いつから自然を生かした景観や建築のデザインを始めるようになったんですか?

天野さん:独立して「Design Room Amano」を始めてからですね。最初は設計の仕事をしている仲間たちから、自然を生かしたデザインについていろいろ反対の声がありました。建築デザイナーは建築だけで表現するものだから、自然の力を借りて表現することは「逃げ」だって言われたりして。でも私は自然と融合した建築や街が美しいと思っていたので、そのコンセプトを貫いたんです。

 

——なるほど。そもそもどうして自然を生かした建築や環境のデザインをしようと思ったんですか?

天野さん:中学生のときによく昆虫採集に出かけていた越前浜の林があったんです。昆虫の宝庫だったんですけど、樹々が伐採されて林がどんどん削られていって、景観がすっかり変わってしまったんです。建築業が環境破壊の一端になってるかもしれないっていう思いから、懺悔の気持ちもあって、自然をできるだけ生かす仕事をしようと思い始めたんです。

 

電気工学科を目指していた浪人生が、建築学科に進路変更したわけ。

——髙木さんは最初から建築の仕事を目指してたんですか?

髙木さん:私は親の勧めで大学の電気工学科を目指してたんです。当時はパソコンが普及してきた頃だったので、パソコン関係の業界に進んだ方がいいと言われて、あまり深く考えないでその勧めに従っていました。

 

——それがどうして建築の道に?

髙木さん:浪人中に何気なく見ていたテレビ番組で、イタリアの建築家カルロ・スカルパの特集をやっていたんです。その番組の中でカルロ・スカルパが、お城を美術館に生まれ変わらせるという仕事を見て感動したんですよね。それで試験の直前に進路を建築学科に変更しました(笑)

 

——よほどの影響を受けたんですね。じゃあ卒業後も建築業界に。

髙木さん:ハウスメーカーに就職しました。その頃、街を歩いていて気に入った建物を見つけると写真を撮ったりしてたんです。その中に、敷地の奥の方に家が建っていて表から見えない見せ方をしている場所があって、その雰囲気を私はすごく気に入ってしまったんです。それを手掛けたのが天野だったんですよ。私はさっそく天野を訪ねていって、一緒に仕事がしたいとお願いしたんですが断られてしまいました。

 

天野さん:この仕事で食べていくのはなかなか大変なんですよ。だから人を雇うことなんてできないと思ったんです。ところが髙木は断ってもたびたび遊びにきて、事務所で本を読んだりしてたんですよ(笑)。そのうち私の仕事が忙しくなってきたので、手伝ってもらうことになったんです。

 

自然は生活の中に様々な変化を取り込んでくれる。

——自然を生かした空間のメリットってどんなことだと思いますか?

髙木さん:極端にいうと建築には変化がないんです。でも、自然っていうのは季節や事象によっていろいろな変化があるんですよね。たとえば休日になると山とか川とか自然の中に出かける人も多いじゃないですか。同じ環境の中でずっと過ごしていると、知らないうちに疲れてしまう。もし自然を近くに感じる建築を作ることができれば、暮らしは豊かになると思うんです。

 

天野さん:光を空間に取り入れることでも、いろいろな表情の変化がありますよね。西日っていうのは嫌われることが多いんだけど、私は結構好きなんですよ。陽の光が低い位置から樹々を通して差し込むと、とってもきれいなんですよね。光や風を取り入れた住まいはとても心地いいと思います。

 

——今まで手掛けてきたもので印象に残っている仕事はありますか?

天野さん:洋菓子店の「Patisserie remplir(パティスリー ランプリール)」さんは印象に残ってますね。土手沿いに並んでいた5本の木が立派だったので、そのうちの1本だけ切って通路を作りました。その上で新しく植栽を加えてお店を作ったんです。元からあった古い木はその土地の歴史を感じるものなので、できるだけ生かすように計画しました。

 

自然環境やその場所のよさを生かした仕事を心掛けていく。

——今後はどんなふうに建築や景観に取り組んでいきたいですか?

天野さん:捨てられているものにスポットを当てて、拾い上げていきたいと思ってます。たとえばコンクリートで舗装する代わりに石を敷くとか。手間は掛かりますが長期的に見れば耐久性がありますし、景観に馴染みますよね。これからも心地いい景観を作っていきたいですね。

 

髙木さん:有名な建築物でも移築してしまうと前のような魅力を感じられなくなることってよくあるんです。それは元々建っていた場所に馴染んだデザインだったからだと思うんですよね。だから、建物を建てる場所の良さをよく見て、周りの環境と環境が一体となるようにデザインを心掛けていきたいですね。

 

 

その場所にある自然をできるだけ残し、環境の良さを生かして建物や景観を作っている「Design Room Amano」の天野さんと髙木さん。お二人のお話を聞いて、自然と生活の関わりの大切さを知ったような気がしました。家で過ごす時間が増えたこの機会に、心地よい生活を送るためにも、家の周りの自然を見直してみるのもいいのではないでしょうか。

 

 

Design Room Amano

〒953-0054 新潟県新潟市西蒲区漆山8768

0256-76-2150

 

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