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小清水集落にとことんこだわる、お洒落な「EALY CAFE」。

飲食店を取材していると「なぜこんなところに?」と思うようなところにお店が建っていることがあります。今回取材に伺ったのも、そんな場所にある「EALY CAFE」という名のカフェでした。雪の多い地域によく見られるドーム型の車庫や入口が2階にある住宅をくぐり抜け、たどり着いたのは集落のさらに奥にあるお洒落な建物。どうして、こんなところにカフェを開いたのでしょうか。オーナーの矢島さんにお話を聞いてきました。

 

 

NPO法人 スピン ア テイル

矢島 衛 Mamoru Yajima

1984年東京都生まれ。東洋大学文学部卒業とほぼ同時に、柏崎市小清水集落に移住。居酒屋、博物館など様々な仕事を経て2016年より「EALY CAFE」をオープン。米農家や鯖石神社の神職を勤める他、「地域おこし協力隊」のサポートもおこなっている。学生時代はスキンヘッドのバンドを組んでヴォーカルを担当していた。

 

地元の人たちの思いに触れ、移住を決意した大学生。

——いやぁ……いろいろ想像していた以上でした。ひとつはお店の場所が、こんなに奥の方にあるとは思ってもいなかったです(笑)

矢島さん:ここにはかつて柏崎と十日町をつなぐ街道があって、国道ができるまではメインストリートだったんですよ。当時は旅人が休んでいく茶屋なんかもあったようです。この建物はずっと物置になっていたので、いつかここを使って何かをやりたいと考えていました。

 

——そうだったんですね。矢島さんは小清水集落で生まれ育ったんですか?

矢島さん:いいえ。僕は東京生まれなんです。でも母の実家が小清水にある「鯖石神社(さばいしじんじゃ)」で神職をしていたので、子どもの頃はお祭りに合わせて里帰りするのが、年に一度の恒例行事になっていました。

 

 

——じゃあ、子どもの頃は毎年この集落を訪れていたんですね。でも、どうして移住することに?

矢島さん:僕は東洋大学文学部の日本文化学科で民俗学を学んでいたんです。それというのも、高校時代に「古事記」と出会って、日本神話の世界に強く心を惹かれたんですよ。そのゼミの卒論を書くために、春祭りにあわせて鯖石神社へ調査に来たんです。久しぶりに来てみたら、小清水集落は人が減ってすっかり寂しくなっていました。

 

——過疎化が進んでいたわけですね。

矢島さん:そうなんです。その春祭りで集落の方々からお酒を振る舞っていただいたとき、お酌をしてもらいながら「このままでは小清水の集落が無くなってしまう」「何とかして集落に活気を取り戻したい」という熱い思いに触れ、涙が止まらなくなりました。そんなことははじめての経験でしたね。

 

 

——それで移住を決心したんですか?

矢島さん:はい。最初は「誰かが何とかしてくれないかな」と考えていましたが、やがて「人を頼らずに自分がやらなければ」と思うようになり、卒業してからすぐに移り住みました。何かに呼ばれているような、不思議な感覚もあったんですよ。

 

——移住後はどんなことをやっていたんですか?

矢島さん:居酒屋のアルバイトや博物館の臨時職員をやった後、柏崎市内にある企業でサラリーマンをしていました。でも、自分が小清水に移住して来たのはサラリーマンになるためじゃないと気づいて、何か集落の役に立てることはないかと考えたんです。集落では高齢化のために米作りができない農家も増えていたので、自分が米農家をやろうと決心しました。そこでいろんな農園や農家で修業を積み、今では田んぼを借りながら米作りをやっているんです。

 

小清水集落への愛が詰まった素敵なカフェ。

——お店が想像以上にお洒落なのにも驚きました。街にあってもおかしくないようなお店ですよね。

矢島さん:ありがとうございます。お店に関しては奥さんのセンスなんです。奥さんは東京でアパレル関係の仕事をしていたこともあって、インテリアや食器が好きなので、そのセンスをフルに生かした形だと思います。

 

 

——そもそも、どうしてカフェをはじめようと思ったんですか?

矢島さん:いろいろな人たちを小清水集落に呼びたいと思ったからです。知り合いなら自宅に呼べるけど、知らない人を呼ぶわけにはいかないじゃないですか(笑)。だから誰でも気軽に立ち寄れて、コーヒー一杯で休んでいけるカフェをはじめようと思ったんです。

 

 

——確かにカフェだったら誰もが入りやすいですよね。

矢島さん:昔あった峠の茶屋のように、旅する人がひと休みすることでエネルギーを補充できる場所や、人と人が出会える場所になってくれたらという思いもありました。また集落を盛り上げるイベントを開催する場所としても、利用したいと思っていたんです。

 

——メニューに目を通すと、ちょっと変わった名前のメニューもありますね。

矢島さん:フードやドリンクの名前を通じて、小清水を知ってもらえるきっかけになってくれたらと思いまして……。例えばコーヒーの「HIROSADA(ヒロサダ)」は、小清水を開拓した長野からの旅人「広定」の名から取ったものなんですよ。

 

 

——メニュー名にも小清水の歴史が込められているんですね。

矢島さん:名前だけじゃなく、食材にも地元で採れた野菜や山菜を使うようにしています。ちなみに、お米は私の田んぼで採れた自家栽培米です(笑)。安心して食べられて、元気が出るような料理を提供するように心掛けています。

 

 

——そういった食材が採れた土地を眺めながら味わう料理は格別ですね。

矢島さん:小清水の風景のなかにいると、この土地を開墾したご先祖様の頃から変わらない、同じ景色を見たり音を聞いたりできる気がします。それも昔のまま変わらず残っているものが多いからなんじゃないでしょうか。

 

——そんな小清水集落で、今後はどんなことをやってみたいと思っていますか?

矢島さん:地方はお金がないし、東京には歴史や自然が少ないので、そのふたつを結びつけることで何かムーブメントを起こせたらいいですね。その橋渡しをするのは、東京で生まれ育って、小清水で暮らしている自分の使命だと思っています。今後は東京から小清水に人を呼ぶため、農家民宿をやってみようと考えているところです。

 

——今日はあいにくの天気で残念でしたが、晴れていたら綺麗な景色が見られたんでしょうね。

矢島さん:これから田んぼに水が張られて稲が植えられ、あたりには草花が生い茂るので、そうなったらもっと素敵な景色を見ることができますよ。ぜひ多くの人に小清水の里山を楽しんでいただきたいですね。

 

 

 

EALY CAFE

柏崎市石曽根5295

0257-41-6300

11:30-15:00(土曜は16:00まで)

日月曜休

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