新潟市東区にあるJR越後石山駅のそばに、「鶏そば」を看板に掲げた新しいラーメン店がオープンしました。店名にもうたわれている「鶏そば」ってどんなラーメンなんでしょうか。そして、新型ウイルス感染症で飲食店の休業や閉店が相次ぐ中、新店舗をオープンする思いとはどういうものなのでしょうか。「鶏そば 縁道(えんどう)」店主の遠藤さんにお話を聞いてきました。
鶏そば 縁道
遠藤 真哉 Shinya Endou
1997年新潟市東区生まれ。高校に通いながら引っ越し業者や飲食店などの仕事を経験した後、いろいろなラーメン店で修行を積む。2021年2月に新潟市東区で「鶏そば 縁道」をオープン。根っからのラーメン好きで、かつては県内外を含め年間200杯を食べ歩いていたほど。
——オープンおめでとうございます。ここは以前もラーメン店でしたよね?
遠藤さん:はい、前のラーメン店がずっと閉まったままだったので、事情を聞きたくてあちこち連絡して、なんとか大家さんを探し出したんです。そしたら「自分で片付けるようならこの店舗を使ってもいい」と言ってくれたので、ここでお店をやることに決めました。
——ん、そのときは店の中は前の店舗のままだったんですか?
遠藤さん:そうなんですよ。僕が最初に店の中に足を踏み入れたのは12月の頭で、それはもう壮絶な状況でしたね。寸胴の中にはスープがそのまま残されていたし、電気の止まった冷蔵庫や冷凍庫にもかなりの量の食材が残されていました。もちろん腐ってしまってすごい悪臭を放っていたので、機材ごとすべて処分したんですよ。新しい機材に入れ替えて、ようやく営業できる状態になったんです。
——そこまでしてこの場所にこだわったのはどうしてなんですか?
遠藤さん:僕の地元だから土地勘があったし、新潟駅をはじめ、いろいろな場所からそんなに離れていなくて、立地がいいと思ったんです。それに駐車場のある場所っていうのが絶対条件でしたから。
——でも、このコロナ禍、閉店するお店も多い中で新店をオープンするのって勇気がいりますよね。
遠藤さん:確かに迷いはありました。ただ、待っていてもいつ新型ウイルスが収束するかわかりませんし、楽しみを奪われている人たちに、安心して安全に食事を楽しんでもらえる場所を提供したかったんです。美味しいものを食べることが、生活する上での楽しみとか、生きていく糧になってくれたらいいなって思いました。だから、できる限り徹底した感染症予防対策をしています。
——遠藤さんはいつ頃からラーメンを作る仕事をしてきたんですか?
遠藤さん:最初は通信高校に通いながら、いろんなアルバイトをしていたんですよ。その中にラーメン店があって、そこの先輩から「将来一緒にラーメン店をやろう」って言われていたんです。僕もラーメンが好きだったから、それからはラーメン一本に仕事を絞ったんですよ。
——ラーメン作りの修行をしてきたと。
遠藤さん:はい。何店舗もラーメン屋を経営しているグループ会社に入って、グループ内のいろいろなお店でラーメンの作り方を学ばせていただきました。それぞれのお店で作り方が違うので、とても勉強になりましたね。その後は古町の繁華街にあるラーメン店で働きました。夜19時から朝5時まで営業しているお店だったので、夜型の生活スタイルに慣れるまで大変でしたね。眠いんだけど眠れなくて、頑張って眠ってもすぐに目が覚めちゃうんですよ。その生活のせいか、4年間で40kgも太ってしまいました(笑)
——40kg……それは大変でしたね。夜型の生活になると太るんですね。
遠藤さん:僕はそうでしたね。で、そこの会社のラーメン部門で代表をやって、5店舗くらい新店の立ち上げに関わることができました。おかげで新店の立ち上げ方やお店の経営の仕方をがっつり勉強させてもらうことができました。
——「鶏そば 縁道」はどんなお店にしたいと思っていますか?
遠藤さん:女性ひとりでも気軽に入れるような、幅広い年齢層に受け入れてもらえるお店にしたいと思っています。だからメニューも、子どもからお年寄りまで誰もが食べられるような構成にしています。
——店名にも使われている「鶏そば」が看板メニューなんですよね。
遠藤さん:はい。今まで自分が新潟で出会ったことのないラーメンを作ろうと思ったんです。そこで関西では少しずつ流行し始めていたスタイルの「鶏そば」に目をつけて、大阪まで食べに行ってきたんですよ。2日間で7店舗を回って、毎食「鶏そば」を食べてましたね。食べながら頭の中に描いたイメージをもとにして、新潟に帰ってから何度も試作を重ねました。自信を持ってお客様に提供できるかたちになるまでには、かなりの時間がかかりましたね。
——そんな苦労の末に生まれた「鶏そば」って、どんなラーメンなんですか?
遠藤さん:新潟産の鶏ガラを100パーセント使った白湯スープを、ブレンダーで泡立てて作るラーメンなんです。油とスープを乳化することで、クリーミーで口当たりのいいスープになっています。トッピングには煮卵、カイワレ、紫タマネギを使って、見た目にも華やかになるよう気を使っています。
——たしかに今まで味わったことのないスープですね。「和出汁中華そば」の方についても教えてください。
遠藤さん:カツオや昆布といった魚介や乾物のみで時間をかけてダシをとっています。昆布はぬめりが出ると臭みが出ちゃうので、弱火で90分かけて慎重にダシを取るんです。濾すときも混ざってしまうとカツオダシが濁ってしまうので、混ざらないよう慎重にやっています。
——お話を聞いていると、かなりの手間をかけて作っている感じがします。
遠藤さん:万が一失敗したとしても「ここまでやってもダメだったら仕方ない」って思えるくらいの手間をかけていると思います。チャーシュー1本作るのにも3日間かけていますからね。「あのときもっとやっておけばよかった」なんて後悔だけはしたくないんですよ。
——これからどんなふうにお店をやっていきたいですか?
遠藤さん:とにかく新型ウイルスの予防対策をしっかりとやって、お客様に安心して食事を楽しんでいただけるようにしたいですね。その上で、活気があって、地域の皆様から愛されるお店になってくれたらうれしいです。
鶏そば 縁道
〒950-0852 新潟県新潟市東区石山5-1-25
025-385-6263