新潟市山の下に昨年オープンした「Ethnic BAL Trish(エスニック・バル・トリッシュ)」。細い入口から中に入ってみると、こじんまりとしたカウンターにテーブル席、階段を上るとこちらも小さなスペースにテーブルが1席。まるで秘密基地のようなお店なんです。メニューには、アメリカの料理をはじめ、メキシコ、インドネシア、タイ、韓国といろいろな国の料理が並んでいます。いったいどんなお店なんでしょうか(そして、どこでこの料理をすべて覚えたのでしょうか!)。店主の佐藤さんにお話を聞いてきました。
Ethnic BAL Trish
佐藤 綾子 Ayako Sato
1965年新潟市中央区生まれ。アメリカのL.A.で1年間語学留学した後、日本で様々な仕事を経験。30歳のとき再度アメリカに渡り、シカゴ、マイアミ、L.A.で4年間暮らす。帰国して2年後に結婚し、納棺師、マッサージセラピストを経て2020年9月に「Ethnic BAL Trish」をオープンする。趣味はマクラメアクセサリー作り。
——メニューにはいろんな国の料理が並んでいますね。これ、どこで料理を覚えたんですか?
佐藤さん:ほとんどはアメリカで暮らしていたときに覚えた料理なんです。アメリカには20代のときに1年間、30代のときに4年間、合計で5年間暮らしていました。
——どんないきさつでアメリカに行ったのか教えてもらっていいですか?
佐藤さん:アメリカに憧れたのは、19歳のときに行った初めての海外旅行だったんです。友達とハワイに行って、日本ではそれまで感じたことのない解放感に感動したんですよ。そのときに「海外で暮らしてみたい」と思うようになったんです。それで帰国してからアメリカのL.A.へ語学留学に行って、1年間アルバイトしながらランゲージスクールに通っていました。
——アメリカでの生活はどうでしたか?
佐藤さん:言葉がわからないというのもあったし、生活はかなり不便でしたね。おかげで日本の安全さや便利さが身にしみてわかりました。でも滞在先の知人や友人、サポートしてくれた両親のおかげでどうにか生活することができたので、とても感謝しています。
——最初は語学留学だったんですね。次にアメリカへ行ったのはどうしてなんですか?
佐藤さん:帰国してからはOLをしたり、花屋、飲食店などで働いていたりしていたんですけど、どうしてもアメリカでやり残したことがあるような気がしたんです。それで30歳のときに永住するつもりで再びアメリカに行って、シカゴ、マイアミ、L.A.で4年間生活しました。飲食店で働いたり、住み込みのベビーシッターなんかをやって暮らしていたんです。
——住み込みのベビーシッターって、どんな仕事なんですか? アメリカのドラマに出てきそうですね。
佐藤さん:私が働いていたのはイスラエル人と日本人の夫婦の家で、小学校低学年の子どもの世話をしたり、掃除をしたり食事を作ったり、子どもに日本語を教える家庭教師みたいなことまでしていました。半分はメイドみたいな仕事でしたね。でもある晩に母親とケンカして、夜中なのに家を追い出されてしまいました(笑)
——それはそれは(笑)。料理はアメリカの飲食店で働いていたときに覚えたんですか?
佐藤さん:そうです。アメリカには世界の料理が集まっていますからね。アメリカはもちろん、ジャマイカ、メキシコ、タイ、韓国……いろいろな料理を食べたり、教わったりしました。それで、「いつか自分が出会った世界各国の料理を提供する店をやりたい」という夢を持つようになったんです。
——永住するつもりでアメリカに行ったのに、どうして日本に帰ることになったんですか?
佐藤さん:4年間生活してみて、自分がアメリカで生きていくのは無理があると感じたんです。日本で暮らしていく方が、自分は幸せになれるんじゃないかって気づいたんですよね。
——帰国してからはどんな生活を送っていたんですか?
佐藤さん:帰国して2年後に結婚して、その後も家事をしながら納棺師やマッサージセラピストの仕事をやってきました。
——ちょっと珍しい仕事をしていたんですね。そこから飲食店をオープンしたのは?
佐藤さん:新型コロナが拡大していって、自分の命がいつ危険に晒されるかわからない状況になって、人生を後悔したくないと思うようになったんです。そう考えたら、自分の夢をやり残していたと気づいたんですよ。それで去年の9月に「Ethnic BAL Trish」をオープンしました。知人や家族の協力のお陰で、特に夫にはいろいろと助けてもらって感謝しています。夫はメニューの名前を考えてくれたり、夜の営業を手伝ってくれるんですよ。
——メニューの名前といえば変わったものが多いですね。どの料理がおすすめなんですか?
佐藤さん:「マイアミで一番おいしかったジャークチキン」は、私がお店をやりたいと思うきっかけになった料理なんです。マイアミで友達に勧められて食べたのが初体験で、その美味しさに感動しましたね。
——じゃあこのお店の原点なんですね。他にもおすすめがあったら教えてください。
佐藤さん:「1ヶ月タイに住んでいた時に思いついた焼きそば」は「ひと口めでクセになる味」っていわれることが多い人気メニューです。タイで食べた味を再現するのにかなり試行錯誤して、やっとできた焼きそばなんですよ。ちなみに焼きそばは、インドネシア、ベトナムというように毎月味が変わるメニューです。他に人気があるのは「ガービンさんに教わったトリニダード・ドバゴライス」。新潟に住んでいるトリニダード・ドバゴ出身のガービンさんに教わったメニューなんです。あまり馴染みのない料理だから興味をかき立てるのかもしれませんね(笑)
——料理をする上でこだわっていることはありますか?
佐藤さん:ひと口めでガツンと来るように、スパイスを利かせてパンチのある味に仕上げています。食欲をそそるように香りも強くしてますね。だからご飯はもちろん、お酒にもよく合うんです。
——新型ウイルス感染症が拡大している中でお店をオープンするのって、勇気がいることですよね。
佐藤さん:まわりの人たちには反対されましたね。でも、こんなときだからこそやっておかなければって思ったので、半ば強引にオープンしたんです。あとで後悔したくはなかったんですよね。
——なるほど。また海外にも行きたいですよね?
佐藤さん:新型コロナが落ち着いたらアメリカ以外の国にも足を運んで、もっと美味しい料理に出会いたいですね。それを日本に持って帰って、お店でお客様にお出ししたいです。
アメリカで出会った世界各国の料理を、新潟の人たちにも食べてほしいという「Ethnic BAL Trish」の佐藤さん。メニューには馴染みのあるものから、ちょっと想像がつかないような料理まで、いろいろな国の料理が並んでいます。なかなか海外へ行くことができない状況下、「Ethnic BAL Trish」で海外の味を楽しんでみてはいかがでしょうか。
Ethnic BAL Trish
新潟県新潟市東区古川町2-10
080-5179-5487
11:30-21:00
木曜休