Things

こだわりの自家製酵母パンを、自宅敷地内の工房で焼いている「f.」。

発酵食品作りにハマり自家製の酵母を使ったパンを焼いているのが、本日4周年を迎えた燕市のパン工房「f.(エフ ドット)」です。可愛らしいコンテナの工房にオーナーの桑原さんを訪ね、溢れんばかりの酵母愛やパンへのこだわりについて聞いてきました。

 

 

f.

桑原 千鶴子 Chizuko Kuwabara

1966年燕市(旧吉田町)生まれ。地元にある金属加工会社で事務職を経験後、1995年より新潟伊勢丹に勤め、婦人服の販売を担当。2020年より自宅敷地内に「f.」をオープンする。とにかく発酵食品を作ることが好き。

 

コンテナでパン工房をはじめた理由。

——本当にご自宅の敷地内にコンテナを設置してパンを製造しているんですね。「f.」をオープンしたのはいつなんですか?

桑原さん:じつは今年の8月15日でオープン4周年なんです。

 

——おおっ、それはおめでとうございます。桑原さんは自分でパン工房をはじめる前も、パンの製造に関わっていたんでしょうか?

桑原さん:新潟伊勢丹に勤めていて、「アルマーニ」をはじめとしたファッションブランドの婦人服販売に携わってきました。パンを焼くのは趣味で続けてきたんです。

 

 

——そうだったんですね。パン作りはいつ頃はじめたんですか?

桑原さん:23年くらい前からでしょうか。最初はインスタントドライイーストを使ってパンを作っていたんですけど、調べてみたら自分で酵母を作れることがわかったんです。それからは自家製酵母をはじめ、いろいろな発酵食品を作ることにハマっていきました。

 

——「発酵食品」というと、どんなものを作ってきたんですか?

桑原さん:酵母の他には、麹、味噌、酢、魚醤、豆板醤などを作ってきました。おかげで冷蔵庫のなかは発酵食品を入れた瓶だらけなんです(笑)。でも発酵食品をお料理に使うようになってからは、病気をしなくなりましたね。

 

 

——へぇ〜、やっぱり身体にいいんですね。

桑原さん:私たちは生活のなかで、知らず知らず食品添加物を摂取していると思うんですよ。市販品ならともかくせっかく自家製パンを作るんだったら、なるべく身体にいい原料を使って、さらに美味しいものにしたいと思っているんです。

 

——そんな自家製酵母パンのお店をはじめたのには、どんないきさつがあったんでしょうか?

桑原さん:伊勢丹時代の友人から頼まれてパンを焼いていたんですけど、もっと多くの人に自家製酵母のパンを味わってほしいと思うようになっていました。でも店舗を構えるには多くの開業資金がかかるし、なかなか条件に合った物件に出会えなかったので半ば諦めていたんです。

 

——それなのにオープンに踏み切ったのは、何かきっかけがあったんでですか?

桑原さん:コンテナを使って営業している店舗の前を通りかかったときに「これなら自分でもお店をはじめられるかもしれない」と閃いたんです。そこで自宅の敷地にコンテナを設置してパン工房をはじめました。

 

具材に頼らず、素材の味だけで勝負したい。

——「f.」という名前にはどんな意味があるんですか?

桑原さん:英語で「発酵」を意味する「fermentation(ファーメンテイション)」の頭文字なんです。パンの原料である「小麦粉」を意味する「flour(フラワー)」の頭文字も重ねています。

 

——そういう意味があったんですね。こちらで作っているパンの大きな特徴というと、やっぱり自家製の酵母を使っているということですよね。

桑原さん:そうですね。天然酵母のパン生地を発酵させるためには、冷蔵庫で24時間〜36時間ほど低温でゆっくり寝かせるので、できるまでにかなり時間がかかるんです。その代わりうま味が強くて美味しいパンが作れるんですよ。

 

 

——へぇ〜。パンに使う自家製酵母は、どんなふうに作っているんですか?

桑原さん:いろいろなフルーツを試して酵母を作ってみましたが、現在はグリーンカーテンを兼ねて育てているホップを使っています。

 

——天然酵母を作るのって大変なイメージがありますが……。

桑原さん:大変ですよ(笑)。酵母は生き物ですから、気温や環境によって元気があったりなかったりするんです。でも、それが可愛いんですよね。

 

——可愛い……。言葉の端々から酵母愛が感じられますね。

桑原さん:自家製酵母で作ったパンはデリケートな商品ですから、ちょっとした調理方法で味や食感が変わってくるんですよ。そのため保存方法から食べ方まで、すべてを自分の口で伝えたくて、販売も人まかせにできず自分でやっているんです(笑)

 

——徹底したこだわりを感じますね。おすすめは食パンなんでしょうか?

桑原さん:食パンも人気があるんですけど、個人的には「カンパーニュ」というハードパンを食べていただきたいんです。「スペルト小麦」という古代小麦をメインに使っているので、小麦の風味を強く感じることができるし、グルテンアレルギーが出にくいとも言われています。お米でいうところの玄米みたいなパンですね。

 

 

——身体にも良さそうですね。

桑原さん:そうなんですよ。ところが惣菜パンや菓子パンに比べると、ハードパンを手に取る人って少ないんですよね。具材が入れば美味しくなるのは当たり前なんですけど、私は素材の力だけで勝負したいんです。ハードパンは小麦と塩、水、酵母だけで作っているから、より小麦本来の香りを楽しむことができるんですよ。

 

——自家製酵母を使っているだけあって、パン生地の味や香りを楽しんでほしいわけですね。

桑原さん:そうなんです。でも自分がやりたいことだけでは商売が成り立たないと思うので、お客様のニーズに合わせながら自分なりにこだわったパンを作っていきたいです。

 

——なるほど。創業5年目に入って新しくやってみたいことはあるんでしょうか?

桑原さん:今まではご予約していただいたパンを、コンテナの入口でお渡しするスタイルだったんですよ。でもこれからは自宅を改装して、ちゃんとした店舗をオープンしたいんです。ゆくゆくはパンと一緒に、ワインやチーズも販売したいと思っています。まずは家族の協力を仰げれば……なんですけどね(笑)

 

 

 

f.

燕市吉田弥生町14-24

不定休

※掲載から期間が空いた店舗は移転、閉店している場合があります。ご了承ください。
  • 部屋と人
  • She
  • 僕らの工場
  • 僕らのソウルフード
  • Things×セキスイハイム 住宅のプロが教える、ゼロからはじめる家づくり。


TOP