江戸時代から続く絹織物について「五泉織物工業協同組合」理事長に聞く。
その他
2023.11.05
燕三条の金属加工や加茂市の桐箪笥、日本酒製造など、新潟県には特色のある産業がいくつもあります。五泉市のニットと絹織物産業もそのひとつです。今回は「五泉織物工業協同組合」の理事長を務める横野さんに、五泉シルクの特色や現状の課題、今後取り組みたいことなどいろいろとお話を聞いてきました。まだ知らない地場産業があると再確認する取材となりました。

五泉織物工業協同組合
横野 恒明 Tsuneaki Yokono
1976年五泉市生まれ。東京理科大学を卒業後、長岡市の企業で設計職として働く。2004年に「株式会社横正機業場」に入り、2013年に代表取締役に就任。「五泉織物工業協同組合」の理事長を務める。

今から240年以上前、江戸時代の天明期にスタートした五泉の絹産業。
——「五泉織物工業協同組合」は何社で構成されているんですか?
横野さん:「株式会社横正機業場」「江口機業株式会社」「吉長絹織有限会社」の3社です。私たちが製造を担って、そこに織り上げた生地を加工する会社さんや買い継ぎ商さんの協力があって、五泉のシルクが流通するわけです。
——どれくらい前からある産業なんでしょう?
横野さん:五泉の織物は、元号が天明の頃からはじまったとされます。今から240年以上前からこの地で脈々と続いてきた産業ですよ。
——そんなに前からですか。でもどうして五泉だったんですか?
横野さん:いろいろ調べましたが、明確にはお答えできないんですよね。でも織物の産地は冬でも湿度が高いところが多いんです。滋賀県長浜市は琵琶湖のほとりですし、京都府の丹波地方も海っぺたです。北陸では他に福井県が「羽二重」で知られていますから、きっと地理的な優位性があったのだろうと思いますよ。
——昔は、五泉市内にいくつも織物屋さんがあったんでしょうね。
横野さん:全盛期は30〜40社ほどの機屋(はたや)さんがあって、1社あたりの規模も大きかったんですよね。そうすると子どもたちは「五泉に織物産業がある」と自然と分かるんでしょうけど、今は組合3社で、この仕事に従事する人は50名もいません。五泉にこの産業があると知らない子どもが多いんです。

——立派な地場産業ですよね。
横野さん:私たちが生産しているのは、あくまで素材。例えるなら画用紙の素材を作っているようなもので、完成した絵画を売っているわけじゃないから伝わりにくいんでしょうね。五泉の生地を地元の方が見ることもほとんどないですから。
——流通先としてはどこがメインなんですか?
横野さん:9割が京都府、1割が東京都といわれています。主に法衣業界、要はお坊さんの衣ですね。そういったものや紋付などに使われています。
——良質な生地だと思いますが、どういった特色があるんでしょう?
横野さん:「羽二重」と夏場に着るような透き間の空いた「絽」、さらにもっと薄手の「紗」が五泉のメインとなる織物です。撚糸を使っていないので光沢があるのが特徴です。撚糸を使うと光沢感が失われてしまうんですね。

子どもたちの頭の片隅に「五泉のシルク」を。楽しい工夫が盛りだくさん。
——組合としてはどんなご活動をされているんですか?
横野さん:五泉の織物を知っていただくためにホームページを制作したり、羽二重で羽織を作ってイベントの際などに市長に着てもらったりしています。ちょっとでも露出を増やす、実際に生地に触れてもらう機会を作ろうと模索中です。
——地元の皆さんに知ってもらうって、大切な取り組みですよね。
横野さん:「ラポルテ五泉」のエントランスには、五泉シルクと五泉ニットで作られたタペストリーが飾ってありますよ。仕切り用のカーテンや館内の装飾にも五泉シルクが使われています。それから今年の市政功労受賞者に渡る表彰状も五泉シルクで作られる予定です。


——ホームページを拝見したら、すごくキュートなデザインでしたね。
横野さん:子どもたちにちょっとでも興味を持ってもらえたらいいなと思って。頭の片隅にでも「五泉のシルク」と覚えてくれていたら、大人になったときに働き口としてこの業界が思い浮かぶかもしれません。そうなったら嬉しいですよね。ちなみに組合のパンフレットを開くと、子どもたちが遊べるようにすごろくができる仕様になっているんですよ。

前代未聞の原料高を乗り切り、五泉シルクを広めていく。
——組合で作られているのはぜんぶシルクですか? だとするとかなり高価なんでしょうね……。
横野さん:私たちが生産しているのは、すべてシルクです。実は私が入社してから、今がいちばん原料が高騰しているんです。中国でのシルク需要の高まりや戦争などが影響していて、コロナ禍前の1.7倍ほどの高値になっています。日本でシルクが作られていた時代もあるからか「国産の原料が使われている」と思われがちですが、国産の原料は全体の1%か2%ほどだそうです。高くてまとまった量が手に入らないので、現実的には国産の原料はないに等しく、輸入に頼らなければならなりません。だからどうしても売値も高くなってしまうんです。

——それは大きな問題ですよね……。
横野さん:この難局を乗り切って、五泉のシルクを多くの人に知ってもらう、身近で使えるものを作り出すことができたらいいなと思っています。

五泉織物工業協同組合
五泉市横町3-2-20
tel 0250-43-2128
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