Things

温かい接客で迎えてくれる、旧小澤家前にオープンしたカフェ「Histoire 旬庭」

市指定文化財にもなっている、新潟市中央区上大川前通の「旧小澤家住宅」。その向かいの「小澤邸」に今年6月、カフェがオープンしました。「Histoire 旬庭」という名前のこちらのお店は、フレンチレストラン「みなと街フレンチ 旬庭」の2号店なんだとか。旬のフルーツをたっぷり使ったタルトやスイーツをお目当てに、連日たくさんのお客さんが足を運んでいます。今回は店長の伊藤さんに、「Histoire 旬庭」をはじめるまでの経緯やお店をやる上で大切にしていることなど、いろいろお話を聞いてきました。

 

 

 

Histoire 旬庭

伊藤 貴子 Takako Ito

1981年山梨県生まれ。生後すぐに新潟市へ引っ越す。短大の生活文化学科で食や生活について学んだのち、調理器具を販売する会社に入社し事務員として勤める。旦那さんの転勤で長野へ引っ越し、レストランでのアルバイトをきっかけに接客業の魅力にハマる。新潟に戻ってからもカフェやケーキ屋、イタリアンレストランなどで働き、今年の3月に「みなと街フレンチ 旬庭」へ。同年6月、2号店としてオープンした「Histoire 旬庭」の店長になる。

 

昔から憧れていた、接客のお仕事。

――伊藤さんは、いつもは「みなとまちフレンチ 旬庭」のほうで働いていらっしゃるんですよね?

伊藤さん:そうです。ここがお休みのときはレストランのほうで働いています。こっちのお店は、旧小澤家の持ち主である小澤さんのご都合と営業予定を合わせながら営業しています。

 

――そうだったんですね。ところで、伊藤さんは昔からお料理やお菓子作りが好きでこのお仕事に?

伊藤さん:昔から食に関するお仕事がしたいなと思っていたので、短大に入って食や生活に関わる全般を学びました。就職先を考えたときに、「サービス業がやりたい」と思ったんですけど、両親から「サービス業はちょっと……」って言われてしまったので、我慢して調理器具を売る会社の事務員になったんです。

 

――ふむふむ。

伊藤さん:それから結婚して、妊娠と同時に旦那さんの転勤が決まったので、長野に引っ越すことになりました。そこでお友達に連れて行ってもらったレストランがすごく素敵で、「私もこんなところで働いてみたいな」って思いました。両親からは厳しく言われていたけど、私も親になったし、もういいかなって(笑)。そこではじめて念願だったサービス業の仕事をはじめることになりました。

 

 

――念願だった接客のお仕事はどうでしたか?

伊藤さん:没頭しましたね。1日に100人以上のお客様がいらっしゃるレストランで、40人くらい入る広さのカフェブースも併設されていたんですけど、最終的にはそのカフェブースをひとりで回せるようにまでなりました(笑)

 

――おお、それだけがむしゃらに働かれていたわけですね(笑)

伊藤さん:そこでは3年くらい働いたんですけど、新潟に帰ることになってしまったんです。帰ってきてからはケーキ屋さんでアルバイトをはじめました。ケーキの販売をしたり製造を手伝ったりしていました。でも「もうちょっと接客がしたい」と思って、今度はラブラ万代の中のカフェで働くことにしました。

 

――カフェなら、ケーキ屋さんよりもお客さんとより深くコミュニケーションがとれそうですもんね。

伊藤さん:そこで「接客コンテストに出てみたら」って言われて、なんとなく出てみたら、ラブラ館内の代表に選ばれて。今度は万代シティの他の商業施設の代表とのコンテストになって、そこで2位をいただいたんです。

 

――すごい! 伊藤さんの接客が評価されたんですね。

伊藤さん:わけがわからないまま出たんですけど(笑)。その数か月後に働いていたお店が閉店になってしまったとき、「やっぱり私って接客に向いているんだ。もう一度レストランで働いてみたいな」と思って、次はイタリアンレストランでアルバイトをすることにしました。そうしたら、それから半年経った頃に「店長をやらないか」っていう話をされて……。

 

 

――すごい急なステップアップですね! それで、なんてお返事されたんですか?

伊藤さん:分からないことばかりでしたけど「やってみます」って言いました。だけどコロナ禍でお客様が激減して、数字的なこととか、考えることがいっぱいになっちゃって。家庭とのバランスが上手く取れなくなって、心のバランスも崩れてしまったんですね。「これじゃだめだ」と思って、去年の末に辞めました。だけど、そこで学んだことは今のカフェ運営に生かされていますし、そこで出会った方々がお店に遊びに来てくれたり果物を提供してくださったりすることもあって。応援してくださっていることに感謝しています。それからはちょっと家でお休みしていたんですけど、時間が経ったらまた働きたくなっちゃって(笑)

 

――「働きたい!」「接客がしたい!」っていう気持ちが本当に強いんですね。

伊藤さん:根を詰めずに楽しくお仕事ができたらいいな、と思っていたときに「みなと街フレンチ 旬庭」のことを知りました。「なんか素敵!」と思って面接に行って、そこでオーナーシェフの小出さんに出会って。小出さんは店長をやっていた経歴を気にしていた私に、「俺、過去は気にしないから」「ケーキ作れるんだね、じゃあ明日からおいで」って言ってくれたんです。それで働かせてもらうことになりました。それが今年の3月ですね。

 

「歴史を大事に」という意味を込めて、「Histoire 旬庭」。

――「Histoire 旬庭」をはじめることになったのはどんなきっかけが?

伊藤さん:「小澤邸でお店を出さないか」っていう話は以前からあったんですけど、メンバーも集まらず、何をするかも決まらないまま月日が経っていました。4月の末頃に、たまたま私がケーキとかお菓子を作って持って行ったら、小出さんが「美味しい。カフェやってみれば?」って言ってくださったんです。

 

――伊藤さんが何気なく作ったお菓子がはじまりだったわけですね。お店のコンセプトはどういうふうに考えていったんですか?

伊藤さん:歴史ある旧小澤家の目の前にあるから、「歴史を大事に」っていう意味を込めて店名に「Histoire」って付けました。「和室で和風の食事を出したら当たり前だから、フレンチとか、新潟にはあまりないようなものが食べられたほうがいい」とか、そういうヒントを小出さんからちょっとずつ貰いながら、私がそれを具現化していったというところです。

 

 

――イチオシのメニューはやっぱりタルトですか?

伊藤さん:タルトですね。私、甘すぎるものが苦手なんですよ。だから、甘さを控えめにして作っています。サイズは大きめなんですけど、ランチの後にも食べれちゃうと思いますよ。

 

――タルトの種類は季節によって変わるんですか?

伊藤さん:そうですね。毎日スーパーとか八百屋さんに買い付けに行っていて、そのときに旬のものをチェックして、使うフルーツを決めています。だから何を作るのか、前日になるまで自分でもわからないんです(笑)

 

――それはお客さん的にもワクワクしますね。他のメニューについても教えてください。

伊藤さん:カヌレはラム酒を入れるのがスタンダードなんですけど、夏だしブランデーを入れてみたりして、あまり型にこだわらずにやっています。プリンアラモードも、できれば全部のパーツを手作りでやりたかったので、フルーツは自分でコンポートして、サブレは自分で作って、白鳥をメレンゲで作って乗せています。これ(下写真)は、バタフライピーのハーブで作ったジュレにソーダと、バニラアイスを乗せた「青空ソーダ」です。

 

その日の来てくれたお客さんのことを思い返しながら眠るのが、いちばんの幸せ。

――きれい!夏にぴったりのメニューですね。そもそもなんですけど、伊藤さんは接客のお仕事のどんなところが好きなんですか?

伊藤さん:人が笑っている顔が好きなんです。小さい頃から、誰かを笑わせるとか、びっくりさせるとか、そういうことにすごく幸せを感じるんですよね。だから自然とそれを極めたいと思っていました。「これが食べたいからお店に行く」っていうのもすごくいいことなんですけど、最終的には「この人に会いたいから」とか「このお店のこの雰囲気で味わいたいから」と思って足を運んでもらえるようになってほしいです。

 

――じゃあ今のお仕事は本当に楽しいでしょうね。

伊藤さん:そうですね。「今日もお客さんいっぱい来てくれたな」とか、その日に出会ったお客さんのこと思い返しながら、噛みしめて眠るっていうのが、私の幸せなんです。そのために接客をやっていたので、またそこに戻って来られたっていうのが嬉しいし、楽しくてしょうがないです(笑)

 

 

――やっぱり「楽しい」って気持ちが一番のエネルギーなんですね。伊藤さんの次の目標はありますか?

伊藤さん:小出さんのバックアップがあったからこうやってお店ができているんですけど、いざ自分でいちから物件を探して料理を考えなきゃってなったら、まだまだ難しいなと思っていて。まずはここでいっぱいファンを作って、いつかまるっと移転できるのが理想かなっていう話は小出さんともしています。大きな大きな目標です。

 

――伊藤さんならあっという間に叶えちゃいそうな気もします。

伊藤さん:あとは、小出さんだけじゃ見られなかった場所に一緒に行きたいなと思っています。小出さんは「あなたに出会ってよかった」とか「すごいよ」って、毎日のように褒めてくれるんです。元気になるし、私でもこんなふうに働けるんだなって思えて。だから、また私みたいに夢を持った人がそばに来てくれて、その夢を実現させられる人が増えたらいいなっていうのも夢です。そうやってどんどんつながっていけたらいいですね。

 

 

 

Histoire 旬庭

新潟市中央区上大川前通12番町2708

025-223-7117

11:30-15:30

営業日はInstagramにてご確認ください

※掲載から期間が空いた店舗は移転、閉店している場合があります。ご了承ください。
  • 部屋と人
  • She
  • 僕らの工場
  • 僕らのソウルフード
  • Things×セキスイハイム 住宅のプロが教える、ゼロからはじめる家づくり。


TOP