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隠れ家的な空間で創作料理が味わえる、村上の人気店「囲炉裏庵」。

飲食店の特徴を表すのに「隠れ家」という形容が用いられるようになって久しいですが、村上市の歓楽街・山居町のメイン通りから一本奥に入った閑静な住宅街にお店を構える「囲炉裏庵」さんも、まさにそういった「誰かに教えたくなる」隠れ家的な魅力を持ったお店のひとつです。今年でオープン17周年を迎えるという同店の店主・本間さんに、開店までの意外な経緯からこれまでの試行錯誤、コロナ禍を生き延びる術まで、いろいろとお話を伺ってきました。

 

 

 

囲炉裏庵

本間 一広 Kazuhiro Homma

1973年村上市生まれ。創作料理居酒屋「囲炉裏庵」店主。調理師の専門学校を卒業し和食の板前として新潟市内の料亭で修業、その後一旦は別の業種に従事するものの30代で飲食業に復帰し、2005年に同店をオープン。村上でも指折りの人気店に成長させた。漫画好きで、店内には関連グッズも。

 

10年のブランクから復帰。寝る間もなく開店へ。

――本日はよろしくお願いします。さっそくですが、囲炉裏庵さんってどんなお店なんですか?

本間さん:当店は創作料理を提供している居酒屋です。料理はもちろん、それを召し上がる空間づくりにもこだわり、個室をたくさん設え、リラックスして料理やお酒を楽しんでもらえるように努めています。

 

――創作料理とひとくちに言っても、鮮魚から中華、スイーツまで様々なメニューがありますね。どんなお店で修業されたんですか?

本間さん:私はもともと和食の板前として修業していたんですが、20代の半ばで一旦その道から出て、いろんな業種を経験したんです。10年くらいですかね。

 

――そうなんですか。そこからまた飲食業に戻られたのは?

本間さん:他の仕事をしている間も、いつかは独立して自分の店を持ちたい、であればやっぱり飲食店だよなぁ、とはずっと考えていました。お店を開いたのは、この物件が空いたのでやらないか、って話をもらったのがきっかけです。

 

――ブランクからの復帰にあたって不安になったりは?

本間さん:当時は運送業に従事していたんですが、開店するにあたって飲食の勘を取り戻そうと、人気のあった黒埼の居酒屋に飛び込みで「給料はいらないから、仕込みを手伝わせてくれないか」ってお願いしました。そしたら快くOKしてくれて、それでしばらくは、運送業を夜勤でやって、それが終わったらそのまま朝から村上で開店準備の作業をして、午後からは黒埼のお店に手伝いに行って、それからまた夜勤へ行って……っていうサイクルで生活してましたね。

 

――……いつ寝てたんですか?

本間さん:それが自分もあまり記憶がなくて(苦笑)。仕事と仕事の間にスキマを見つけては少し仮眠してたと思います。

 

――身体を壊さなくてよかったです。とはいえ、他ではなかなか聞かない独立の経緯ですね。

本間さん:そうかもしれません。ここだけの話、もし仮にダメだったとしても「死ぬまでには返せる額の借金で済むだろう」とは思ったんで、開き直って一生懸命やれたのはあるかもしれません(笑)。今から振り返れば、板前だけじゃなくて様々な業種を経験していたことがお店をやっていく上で活きましたね。接客から仕事の回し方、多少のことではへこたれない体力や精神力なんかも(笑)。

 

ニーズに応える居酒屋として、空間にもこだわり。

――それで無事(?)、開店に漕ぎつけたわけですね。オープン当初はいかがでしたか。

本間さん:自分が飲食を離れてしばらく経っていたこともあったので、開店当初は全く宣伝をせず、ひっそり、じっくりやっていました。来てみてお分かりの通り、ここは飲食店街といえる通りから一本入ったところにあり、食事したい人やお酒を飲みたい人が偶然通りかかるような場所じゃありません(笑)。それでも開店準備でお付き合いした業者の方がご友人を連れて来てくれたり、夜に看板を点けているとフラリと入って来てくれる方もいて、そこから徐々に口コミで広げていただきました。決して狙ったわけじゃないんですが、人に教えたくなる「隠れ家」的なお店として捉えてくれる方が多いのかもしれません。

 

――確かに初めてだとなかなか見つけづらい場所ですよね。で、それからは?

本間さん:開店からしばらくは12時以降の深夜営業もしていたんですが、この辺だとその時間帯までやっているお店が本当に限られるので、そういった「深夜でもちゃんと料理が食べられるお店」としてのニーズにも応えているうちに賑わうようになってきて、次第に早い時間帯の1次会のお店としても選んでくれるお客さんが増えてくるようになりました。ただその深夜営業、お客さんがいる限りは日が昇っても営業を続けたりしていたんですが、一度それで寝坊して早い時間帯のお客さんの予約をすっぽかしそうになっちゃって、何とか間に合わせましたけど「このままではダメになる」と思ったので、深夜営業は段階的にやめました。

 

――先ほど聞きそびれましたが、そもそもお店を創作料理の居酒屋にしたのはどんなお考えから?

本間さん:開店準備と並行して手伝いに行っていたお店が創作料理をやっていたこともあるんですが、自分がやるなら居酒屋という間口の広さを活かしたお店にしたいと思ったんです。例えば、和食のお店でパスタ、イタリアンでお造りが出てきたら変ですが、居酒屋ならどっちもアリですよね。なので、創作料理を選んだのも必然といえるかもしれません。美味しいものであれば何を出しても不自然じゃなくて済むというか(笑)。また、現実的な戦略として、村上には既に当時から和食の人気店が数多く存在していたので、和食だけでは到底太刀打ちできないだろうという気持ちもありました。

 

 

――メニュー考案のヒントはどこから?

本間さん:例えばうちの看板メニューのひとつ「イカスミのエビチリ」は、先ほど述べた黒埼のお店にあったメニューをアレンジしたものです。アイデアはいろんなところから収集しますが、メインは料理本になるのかもしれません。毎月数冊は購入し参考にしています。自宅の本棚はそのへんの本屋の料理本コーナーよりもたくさん揃っていますよ、積ん読ももちろんありますが(笑)。以前は読んでいて気になったお店に行ったり、食材を見に行ったり気軽にしていたんですが、最近はコロナでなかなか遠出できないのが悩みどころです。

 

――唐突ですが、囲炉裏庵さんといえば今や村上屈指の人気店のひとつといっても差支えないとお伺いしていますが、その人気の秘訣は何ですか?

本間さん:ありがとうございます。……自分たちでは分かりませんが、冒頭に述べたように、料理はもちろん、空間にもこだわっているというのはあるかもしれませんね。予約でも意外と多いんですよ、個室が満杯だと「また次の機会にします」という方が。そういったプライベート感覚を大切にしたいというお客様は年々増えている印象で、それに応えて改装しているうちに、いつの間にか開店当初に比べ規模が倍になっちゃいましたし(苦笑)。

 

――それはすごい……

本間さん:開店から3年経って賃貸だったこの物件を購入したのを機に、いろいろいじるようになっちゃって。2階も最初は私の住居だったんですが、いつの間にか自分を追い出して改装し団体席にしたり(笑)。改装費はもちろん、規模を広げ個室化を進めることでスタッフの増員による人件費もかさんでくるので、そのぶん稼がなきゃいけなくて大変なんですけどね(苦笑)

 

――でもそれって今般のコロナ対策としても活きたのでは?

本間さん:結果的にはそうかもしれませんね。コロナ以後も、ランチを始めるにあたって内装を明るくしたり、天井を上げて開放的な雰囲気にしたりと、いろいろやっています。

 

「目一杯の努力」でコロナも克服へ。新たな武器も活かして。

――新型コロナの影響についてもう少し。「まん防」明けの客足の具合はいかがですか。

本間さん:率直に言うと、おかげさまで夜の営業でいえばコロナ禍以前の6-7割くらいまで回復してきました。コロナ禍を受けて始めたランチ営業とテイクアウトの分を足せば、売上としてはコロナ禍以前まで戻ってきています。ただその分コストもかけているので、利益の面から見ると以前のような状況に戻るのはまだ当分先でしょうね。原材料費も高騰していますし、お酒もあまり出なくなっちゃいましたし……。お客さんには申し訳ないんですが、当店も料理を少し値上げさせてもらうことになりました。

 

 

――飲食店は時短協力金など手厚い補償を受けて、かえって得しているんじゃないかと穿った見方をする向きも一部でありますが、実際はどうなんでしょう?

本間さん:いやぁ、支援は確かに助かりますけど、実際かなりキツいですよ(苦笑)。うちのように人を複数雇っている中規模のお店は特にそうかもしれません。極端にいえば、今まで培ってきたことがコロナですべて覆って、正解が分からなくなってしまった感覚もあります。でもコロナのおかげで、以前だったら手を出さなかったようなことにもチャレンジし、それなりにものにできたのはケガの功名といえるかもしれません。

 

――それは具体的には?

本間さん:先ほども述べたように、ランチ営業とテイクアウトを始めたのですが、おかげさまで今ではうちの大きな武器となっています。また、以前からあったスイーツもかなり強化し、季節のパフェなど来店動機につながるような目玉メニューをつくったりしているのですが、こちらも今ではランチに来られるお客さんのうち半分くらいの方が注文してくれるまでになり、新たな客層の開拓にもつながっています。

 

 

――なるほど。

本間さん:料理の食材についても、わざわざ高いガソリンを使って遠くまで買いに行くのではなく、近くでいいものをつくっている農家さんに目を向け、採り入れるようにもなっています。これは今後もどんどん活かしていきたいです。

 

――そのほか、今後の展望はいかがですか。

本間さん:いつも「1日が24時間じゃ足りないなぁ」なんて思いながら、これまで自分なりに目一杯やってきたつもりですし、それはコロナ以後も変わりません。ただ、自分ももうすぐ50歳で、やりたいことはまだまだたくさんありますが、やれたとしてもあと10年くらいかなぁとか、今までになく残り時間が気になるというか、どこで折り合いをつけるか意識するようになってきています。まぁこれからも何とかがんばって、村上で一番とは言わないまでも、来てくれた方に喜んでもらえるようなお店づくりを続けていきたいと思っています。

 

 

 

創作料理 囲炉裏庵

〒958-0853 村上市山居町1-1-11

TEL0254-52-7205

11:00-15:00(L.O.14:30)

17:00-24:00(L.O.23:30)

水曜定休

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