インパクト抜群の海鮮丼「ずど~ん」! 村上・坂町の「割烹食堂いそべ」
食べる
2021.05.15
県北・村上市の荒川地区、JR坂町駅前にある「割烹食堂いそべ」が考案した丼メニュー「ずど~ん」が、提供開始から10年近くを経た現在もなお根強い人気を博しています。本マグロの希少な頭の各部位のお刺身を具材にしたこの丼は、鮮魚メニューの豊富な本県内といえど他のお店ではなかなか食べられない逸品で、その美味しさだけでなく見た目やネーミングのインパクトも相まって、「ぜひ食べたい!」と足を運ぶお客さんが絶えません。考案者でもある店主の磯部さんに、メニューのことからお店のことまで、いろいろとお話を伺ってきました。


割烹食堂いそべ
磯部 孝行 Takayuki Isobe
1972年、「割烹食堂いそべ」の次男として生まれる。高校卒業後、新潟市内の寿司・懐石料理店にて住み込みで5年間修業し、妻を伴って帰郷し家業に入る。現在は地元の村上市観光協会や荒川漁協、荒川商工会などでも要職を担う。趣味は実益を兼ねた釣りで、お店は情報交換の場にも。このコロナ禍では、飲食店主としてだけでなく、進学で上京したひとり娘が帰省できなくなるという父としてのダメージも。
国産本マグロの希少な部位を贅沢に使用。食感や味わいの違いも楽しめる。
――「ずど~ん」、すごいインパクトですね。どんな丼なのか、改めて説明をお願いできれば。
磯部さん:国産本マグロの希少な頭の部位のお刺身を具材に用いた丼です。「頭(ず)丼」ってことですね。具材は大きく分けて頬肉、顎肉、脳天の3種類で、それぞれの食感や味わいの違いも楽しんでいただけます。
――その違いとは、具体的に?
磯部さん:頬肉はエラに近く比較的筋肉質で、ほど良い歯ごたえと脂の旨みが楽しめます。顎肉はカマ、カマトロの先の方にあたり、絶妙な食感が特徴です。脳天は口の中でトロリとほどけるような柔らかさで、それぞれの違いも楽しみながら味わってもらえればと思いますね。

――希少部位ってことで数が少なく、かなり人気なんですよね?
磯部さん:頭ばっかりはどうしたってマグロ1匹にひとつしかないものですから(笑)、1日約10食限定で、事前予約制でお願いしています。毎営業日の朝9時から予約を受け付けているのですが、ありがたいことに、週末なんかはすぐに売り切れとなってしまうくらい好評をいただいています。常連さんからは「人気グループのコンサートチケット取るより難しい」と言われたこともあります(笑)
――プロの方にこう言うのも恐縮ですが、これで1,000円でおつりがくるって、ちょっと安過ぎないですか? もっと値上げしてもいいのでは?
磯部さん:確かに利益度外視のメニューで、儲けはほぼありません(苦笑)。でもいいんです。うちの名前を知ってもらい、足を運んでもらうきっかけになればと思って始めたものですし。実際、これを食べに来たのをきっかけに常連さんになってくれた方もいるし、わざわざ遠方から足を運んでくれる方もいるし、そういった方がまた別の方を連れてきてくれたり……。こうやって取材に来てくれたりもするわけですから、自分としては大当たりだと思っています。それと、考案当初は想定していなかったことですが、見た目が「映える」っていうんでしょうかね、ここ数年は多くの方が召し上がる前にパシャッと丼を撮影し、SNSに上げてくれることによる宣伝効果もけっこう大きいなぁと感じています。

料理人として、食べた人が笑顔になるメニューを。培った食材の目利きもそのために。
――そもそもメニュー化したのはいつごろ、何がきっかけだったのでしょう?
磯部さん:もう10年くらい前になるでしょうか、現在も続いている「村上どんぶり合戦」という人気企画にうちも参加することになって、考案したのが最初です。せっかくなのでインパクトのあるものを、と考えているうちに、ネーミングも含めパっと閃いた感じです。もともと本マグロの頭の部位のお刺身は出していたので、それを丼にしたら面白いかな、と。そしたら県都の大手雑誌とかも取材に来て、写真を表紙に使ってくれたりして、あれよあれよという間にうちの看板メニューになっちゃいました。
――お店の歴史を教えてください。孝行さんで何代目になるのですか?
磯部さん:父が創業し、私で2代目です。実は昨年2020年は創業50周年だったんですけど、コロナ禍のおかげで特に何も企画できずに終わってしまいました(苦笑)。坂町ってもともとは機関区があった交通の要所で、かつては人でごった返していたくらいなんですよ。父の頃は毎日、お昼休みの時間になると前もって全部の席に箸を並べておいたくらいだったそうです。

――満席が前提だったんですね。孝行さんもお店を継ぐことに躊躇はなかった?
磯部さん:そうですね、学校から帰ってきたら、食事も勉強もお店のテーブルでしてましたから(笑)。親の働く姿を毎日間近で見て育ったのは大きかったのかもしれません。高校を卒業すると、新潟の方のお店へ修業に出ました。修業先は寿司と懐石料理のお店で、魚をはじめとする食材の目利きは特に学ばせてもらったので、帰ってきてからはそのエッセンスもお店に採り入れました。
――料理人としてのこだわりは?
磯部さん:すべて当たり前のことかもしれませんが、食材は直に自分の目で見て選ぶこと、調味料を含め地産地消で安心安全な食材を使うこと、季節に応じた旬のものを提供すること、ですかね。毎朝市場に出向いて、魚のセリにも参加して。食べる方に喜んでもらうのが結局は一番です。「ずど~ん」もそうですけど、一口食べたら思わずニコッとなる、それがたまらないというか、そのためにやっていると言ってもいいかもしれません。また、「割烹食堂」と銘打ってはいますが、地酒のほかワインや焼酎などの品揃えもかなり充実させています。普段あまりお目にかかれない銘柄や年代のものも取り揃えていますよ。

コロナ禍で再認識した強みと弱み。新たな時代への対応を。
――拝見したところ、SNSでの情報発信もかなり積極的にやられていますね。
磯部さん:そうかもしれませんね。今はフェイスブックとインスタグラムが主ですが、以前はブログもずーっとやっていました。地元商工会に以前ネット関係に強い職員の方がいて、勉強会に参加したのがきっかけでした。やっているからといってすぐに誘客に結び付くものではありませんが、地道に続けているとそれなりに宣伝効果は高いですよ。
――新型コロナの影響はいかがですか。
磯部さん:かなりありますね。昨年の2月半ばくらいから、大きな団体さんの宴会はほぼなくなっちゃいました。うちはもともと個室・小部屋が多いので、それを活かして「密」にならない空間づくりに取り組んだりもしていますが……。1日も早く、以前のような気軽に食べに出歩ける雰囲気に戻ってほしいのが正直なところです。
――今後の展望を教えてください。
磯部さん:そうですね、今回のコロナ禍で、うちのお店としての強みと弱みを改めて認識できたのは良かったことなのかもしれません。「美味しい料理を提供してみなさんに喜んでもらう」という飲食店としての基本に立ち返りつつ、新しい時代にも対応していければな、と思っています。
――なるほど。本日はありがとうございました。


ずど~ん 900yen(1日限定約10食、要予約)
丼物各種 650yen~
定食各種 900yen~
刺身定食 1800yen
特上天ぷら定食 2000yen
麺類各種 550yen
刺身、焼き物、揚げ物、ホルモン、一品料理 各種
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