空色のジジチャリからはじまった、賑やかで楽しい「JiJI’s bike cafe」。
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2021.04.20
新発田バイパスから藤塚浜へと向かう道の途中、空色と白の、気になるお店が目にとまります。「JiJI’s bike cafe」と書いて「じじちゃりカフェ」。いったいどんなカフェなんでしょうか。元気で明るいオーナーの佐藤さんにお話を聞いてきました。


JiJI’s bike cafe
佐藤 摩実 Mami Sato
1979年新発田市生まれ。東京にある放送系専門学校を卒業後、テレビ番組の制作会社でアシスタントディレクター、カメラアシスタントを務める。足を怪我したことから飲食業に転身。27歳のときに新発田に戻り、自転車を使った移動販売「JiJI’s bike」をスタート。2012年、店舗営業の「JiJI’s bike cafe」をオープン。気に入ったものは集めたくなってしまうコレクション癖の持ち主。
テレビ番組のアシスタントディレクターから、移動販売のケーキ屋を始めるまで。
——お店の前に空色の自転車が置いてありますね。あの自転車はディスプレイなんですか?
佐藤さん:今は乗ってないからパンクしたままで、カゴもすっかり錆びちゃってますね。このカフェのルーツみたいなものだからお店の前に飾ってあるんですよ。
——ルーツっていうのは、どういうことなんですか?
佐藤さん:カフェをやる前は、あの自転車を使ってケーキの移動販売をやっていたんです。
——へー、キッチンカーじゃなくて、自転車で? ではまずその話を詳しく教えてください。
佐藤さん:私は元々テレビの裏方をやりたかったので、東京にある放送系の専門学校に入ったんです。学校に通いながら、テレビショッピングの番組を作っている制作会社でアシスタントディレクターをやっていました。その後、念願だった「ミュージックステーション」の技術会社に就職してカメラアシスタントとして働いていたんですけど、収録中に脚を怪我してしまって。それでもうカメアシができなくなったので、テレビ業界から飲食業界に路線変更したんです。
——それは大変でしたね。でも、どうして飲食業を?
佐藤さん:アルバイトしていた居酒屋の仕事が楽しかったんです。お客様から「ありがとう」っていわれるのが嬉しかったんですよね。いつかは自分でカフェをやりたいという夢もできたので、派遣会社に登録していろいろな飲食店で経験を積みました。調理からホールまでなんでもやりましたね。それで27歳のとき、東京から新潟に戻ってきたんです。
——新潟に戻ってきたのはどうしてなんですか?
佐藤さん:その頃、おばあちゃんが亡くなって、母がひとり暮らしになってしまったんです。それまでは母のおかげで好きなことをさせてもらっていたので、これからは恩返しをしようと思って新発田の実家に戻ってきたんです。飲食の仕事は新発田でもできるから、東京にいる意味もなくなったんですよね。それで新発田に戻って少し経った頃に、自転車を使った移動販売を始めました。

自転車を使った移動販売「JiJI’s bike」スタート。
——自転車を選んだのは何か特別な理由があったんですか?
佐藤さん:カフェをやりたいという夢はあったんですけど開店資金がないので、まずはそれを貯めなければならなかったんです。最初はキッチンカーを考えたんですけど、キッチンカーを買うお金もないし、ガソリン代も値上がりしていたので難しいと思いました。あきらめかけたときに横を見たら、亡きおじいちゃんが使っていた自転車があったんですよ。「これだ!」と思って、自転車を使った「JiJI’s bike(じじちゃり)」っていう名の移動販売を始めたんです。
——たしかに自転車を使えばお金はかかりませんけど……どんなふうに営業していたんですか?
佐藤さん:まず青空をイメージして自転車を空色にカラーリングしました。それから後ろの荷台にクーラーボックスをつけて、その中にシフォンケーキを積んで移動販売したんです。でもクーラーボックスだと容量が限られてくるので、リヤカーをつけてたくさん積めるように改良しました。移動販売といっても固定店舗みたいに営業したかったので、新発田の商業施設内にある公園スペースを市から年契約で借りて、毎日決まった場所で出店していました。その方がお客様も来やすいだろうと思ったんですよね。
——なるほど。でも自転車で販売するのって大変そう。
佐藤さん:屋根といったらパラソルしかないですからねぇ(笑)。嵐の日はパラソルが逆さまにひっくり返るし、雪が積もった日は雪かきしながら売っていました。紫外線で日焼けしてガングロになった挙句、冷房が寒く感じるようになってしまったんです。あったかい国の人と同じ体質になっちゃったんでしょうね。さすがに熱中症になったときは臨時休業しました。「今日は出店するんじゃなかった」って後悔することは何度もありましたけど、ケーキを作ってしまったら「行かなきゃ」って思うんですよね(笑)

「JiJI’s bike」から「JiJI’s bike cafe」へ。
——「JiJI’s bike cafe」をオープンしたいきさつを教えてください。
佐藤さん:自転車を使った移動販売を何年かやってみて出した結論が、「新潟で自転車での移動販売は無理」ということでした。体力的にもメンタル的にも限界に達していたので、まだお金は貯まっていなかったけど、屋根のあるところでお店を始めることにしたんです。お店を建てた場所は、昔おじいちゃんと一緒に暮らしていた場所なんですよ。
——お店の中を見ていると佐藤さんらしさがうかがえる気がしますね。
佐藤さん:そうですか? うるさいお店でしょ?
——(笑)。賑やかで楽しいお店だと思います。
佐藤さん:いつかはカフェをやろうと思っていたから、照明や小物をコツコツ買い集めていたんです。まとめて揃えたわけじゃないから、なんだかバラバラになっちゃったんですよ。お金もないから、自分でできることは全部自分でやりました。駐車場のライン引きから、店舗営業するために必要な手続きまで(笑)

——それでところどころ手作り感があって温かみが感じられるんですね。カフェとして店舗営業を始めていかがでしたか?
佐藤さん:自転車販売していたときと違って人が集まる場所じゃないから、お客様が来てくれるかどうか心配だったんです。でも自転車販売のときのお客様が来てくれたので、あの苦労の日々は無駄にならなかったと思いました。何よりも屋根があるから雨風から守られて、安全に営業できるのがありがたいですね(笑)

お腹いっぱい食べられて、ちょっと変わったメニュー。
——メニューにはどんなこだわりがあるんですか?
佐藤さん:カフェのメニューって量が少ないことが多いんですけど、私はそれが嫌だから、お腹いっぱい食べてもらえるようにどのメニューもボリュームがあるんです。それからお客様にちょっとだけびっくりしてほしくて、少し変わったメニューも心がけています。野菜を丸ごと入れちゃったりとか。料理は私の経験がすべて生かされているので、和洋中が入り混じったオリジナル料理になっています(笑)
——なんかメニューまで楽しそうですね。おすすめはどんなメニューですか?
佐藤さん:まず「ふわしゅわシフォンケーキ」です。卵をたっぷりと使って、水分も多いのでしっとりふわっとした食感に仕上がっています。パサパサしないよう気をつけて作っていますね。ランチメニューは毎月変わるので、季節ごとに旬の食材を使ったメニューがお楽しみいただけます。毎年5月には、新発田の名産品アスパラを使った限定メニューを提供しています。

——自転車での営業のときと比べて、お客さんは増えましたか?
佐藤さん:お店を始めてしばらくは、新しいお客様がどんどん増えたらいいなって思っていたんです。でも最近は、自転車販売のときの気持ちを思い出して、来てくれるお客様を大切にしていきたいって思うようになったんですよね。お客様が増えて忙しくなってくると、どうしても余裕がなくなってしまって、無意識にきちんと対応できなくなっていたんじゃないかって思うんですよ。だから思いきってメニューを減らして、少しでも余裕を持って接客できるようにしました。これからもお客様が笑顔になってくれるように、初心を忘れずお客様ひとりひとりの顔を見ながら営業していきたいですね。

新潟では珍しい自転車を使った移動販売をやってきて、念願だったカフェをオープンした佐藤さん。店内もメニューも佐藤さんの人柄を表すような、賑やかで楽しいものばかり。新発田を訪れたらぜひ立ち寄ってみてください。空色の「じじちゃり」がお出迎えしてくれます。
JiJI’s bike cafe
新潟県新発田市中谷内甲47-23
0254-28-8708
11:00-17:00(16:00L.O.)
木曜・第1金曜休
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