今年の2月、旧亀田町の商店街にオープンした「かめだ町中華つのだ」。「赤坂四川飯店」などで本格中華を学んだご主人がはじめたお店です。もともとこの場所では、ご主人のお父さんが「食事ハウス つのだ」を営んでいました。今回は店主の角田さんにメニューのこだわりやお父さんとのエピソードなど、いろいろとお話を聞いてきました。
かめだ町中華つのだ
角田 陽一 Yoichi Tsunoda
1978年新潟市(旧亀田町)生まれ。調理の専門学校を卒業後、東京の洋食店で3年間勤める。中華料理の道へ進み「赤坂四川飯店」で2年、同系列の名古屋店で6年、浜松にある中華料理店で8年経験を積む。38歳のときに新潟に戻り、「上海食堂Le CHINOIS」「BIRI BIRI BAR CHINOIS」で5年間働く。2023年2月に「かめだ町中華つのだ」をオープン。
——こちらのお店は以前、角田さんのお父さんが営む「食事ハウス つのだ」だったそうですね。
角田さん:祖父が洋食屋をはじめて、父の代では洋食に加えてカツ丼やラーメン、カレーもある食堂のようなお店でした。今でも昔からのお客さまに「オムライスはないのか」「カツ丼はないのか」って毎日のように言われます(笑)
——もともとお店を継ぐつもりだったんですか?
角田さん:いえいえ、まったくその気はなかったんです。でも去年の3月、父が「食事ハウス つのだ」を閉めたことで気持ちが変わりました。ずっとここで育ってきたし、亀田の人たちから愛されていたお店だったので、寂しくなっちゃって。
——お父さんから「お店を閉める」ってご相談はありました?
角田さん:ありましたよ。でも「忙しくなるのは嫌だから、誰にも言うな」と言われていたんです(笑)。最後の3日間は僕も手伝ったんですけど、告知をしていなかったのに大忙しでした。
——角田さんの料理人としてのキャリアについても伺いたいです。
角田さん:小さい頃から料理に触れて育ってきたので、新潟の調理の専門学校へ進学して、卒業後は東京の洋食店に3年間勤めました。最初から中華の道へ進めばよかったんですけど、父親に反発して洋食をやったんですね。でも夏休みに実家に帰省したときに、父親がチャーハンを作っている姿を見て「かっこいい」と思いまして。それで中華をやることにしたんです。洋食屋を辞めて、知人の紹介で「赤坂四川飯店」で2年間働き、それから名古屋店を立ち上げるというのでオープン時から6年間勤めました。その後は、浜松にある「四川飯店」の同期のお店で8年間経験を積んだんです。
——「四川飯店」って、有名な中華のお店ですよね。
角田さん:陳健民さんがはじめた本格中華のお店です。洋食は経験していましたけど、中華はまったくの素人だったので、最初はいちばんの下っ端として鍋洗いからはじめました。鍋洗い、野菜切り、前菜作り、メイン料理作りって段階があるんですよ。名古屋店で働いていたとき、やっと鍋振りまでできるようになりました。昔ながらの厳しい世界で、2回くらい逃げたことがあったかな(笑)
——大変な世界ですもんね。でも、その料理の腕は新潟で生きたのでは?
角田さん:ありがたいことにそうでしたね。新潟では、鳥屋野潟沿いにあった「上海食堂Le CHINOIS」で働いていたんです。駅前に移転してからの「BIRI BIRI BAR CHINOIS」にもいたので、5年間勤めたことになりますね。
——そんな経験のある方が作る中華料理が亀田でいただけるのは嬉しいですね。「かめだ町中華つのだ」ではどんなメニューが楽しめるんでしょう?
角田さん:ランチは麻婆豆腐セットや日替わりランチ、麺メニュー、チャーハンなどをご用意しています。夜はちょっと志向を変えて、本格的な中華料理のコースをリーズナブルに楽しんでいただきます。(※コース料理は2日前までの予約制)
——コースのお料理について、もう少し詳しく教えてください。
角田さん:夜のコースメニューは、みなさんがあまり食べたことがないようなものをお出ししたいと思っています。例えば、エビチリは日本人に馴染みのあるケチャップで味付けしたものではなく、中国版の「成都式エビチリ」です。フカヒレスープなどもありますよ。ゆっくり過ごしていただけるように、1組か2組だけのご案内にするつもりです。奥に座敷席もあるので、ご家族で集まるときやお祝いごと、デートなどにも使っていただきたいと思っています。
——ところで、新潟に戻って来られたのはどうして?
角田さん:親が高齢になり、心配になって帰ってきたんです。それに、県外にいるときは気がつきませんでしたけど、新潟は食材がとても美味しくて豊かですよね。お米はもちろん、海のもの、山のもの、野菜、ぜんぶが美味しい。食材の旬もはっきりしていて、料理人としては楽しいですね。ランチのメニューはそれほど変えられないけど、コース料理は季節に合わせて素材やメニューを変えたいと思っています。今だったら、前菜に山菜を使うのもいいですね。
——ご自身でお店を切り盛りする立場になられて、今はどんな思いですか?
角田さん:大変だし責任も重大ですが、その反面すごく楽しいです。好き放題できるのがいいですね。オープン当初は、夜は単品メニューで営業していたんです。でも仕込みは追いつかないし、時間がかかりすぎるので予約制に変更しました。そんなふうに対応できることやメニューを自分で考えられるのが楽しくてたまりません。家賃がない分、できるだけお客さまにいい料理をお出ししたいですね。
——ちなみに、角田さんがお店を開くことについてお父さんはどんな反応でした?
角田さん:心配していましたけど、喜んでくれました。親父、すごく元気になりましたね。店を閉めてからは家でじっとしていましたけど、明るくなっちゃって。それが「かめだ町中華つのだ」をはじめて、いちばんよかったことですね。
——それは親孝行しましたね。
角田さん:親孝行しているつもりはないんですけどね(笑)。父は昔から職人気質で「いらっしゃいませ」も言わないし、混んでいてもレジはしない、料理も運ばない。とにかく厨房から出てこなかったんです。お客さまに「母ちゃんひとりでやってるんか」って言われるくらい影が薄くて。それが今ではお客さまに顔を見せて「元気だかいね?」なんて言うんですよ。嬉しい誤算でした。
——さて、最後にこれからの目標があれば教えてください。
角田さん:父がやっていた「食事ハウス つのだ」の名残もあり、今は地元の方がたくさん来てくださいます。でもこれからは、亀田以外の皆さんも評判を聞きつけて来てくれるようなお店にしたいですね。うちの中華は、何万円もするコース料理に負けないと思っています。「『つのだ』が美味しいんだよ」って、ここにたくさん人が来て、亀田の商店街が昔のように賑やかになったらいいなと思っています。
かめだ町中華つのだ
新潟市江南区亀田本町3-1-22
090-4714-9992