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お香や線香が揃っている薫香の専門店「香り小町」。

人間が生活する上で欠かせない「五感」、みなさんすべて言えますか? 視覚、味覚、聴覚、触覚、そして嗅覚の5つです。嗅覚は、匂いや香りを楽しむための大切な感覚。今回は、お香や線香などを取り揃える薫香専門店「香り小町」にお邪魔して、店主の川崎さんに香りについてのお話をいろいろと聞いてきました。

 

 

香り小町

川崎 誠 Makoto Kawasaki

1956年新潟市中央区生まれ。明治2年から13代続く商家に生まれる。北里大学薬学部を卒業し、東京の大手メーカーや問屋での修業やアメリカ訪問を経て、家業の日用品雑貨卸問屋に就業。2000年に独立して「株式会社さんまた」を立ち上げ、薫香専門店「香り小町」を創業する。お店を経営する傍ら、音楽や芸術などに幅広く才能を発揮している。

 

薫香専門店の店主は、お線香が大嫌いだった?

——お店に足を踏み入れると、リラックスできるいい香りがしますね。

川崎さん:これは伽羅(きゃら)です。伽羅の香木を焚いているお店は、ほとんどないんじゃないかな。香木は栽培できるものじゃないから化石みたいなもので入手困難ですし、値段も高いですからね。

 

——そうなんですね。川崎さんは昔からお香に興味があったんですか?

川崎さん:いえ、以前はお線香の匂いが大嫌いだったんです(笑)。もともと鼻が良くって匂いに敏感だったから、昔のお線香のきつい匂いが苦手だったんですよ。だから家の仏間に入るのも嫌でしたね。

 

 

——そうだったんですか(笑)。それが、どうして薫香専門店をはじめることに?

川崎さん:話すといろいろ長いんですが……。

 

——よかったら教えてください。

川崎さん:私は明治2年から代々続いてきた商家の13代目として生まれたんです。「三條屋」とか「やままた」という屋号で婦人用の小間物を扱っている商家で、世間では創業者だった「三條屋」の川崎又吉を略して「さんまた」と呼ばれていました。

 

——明治2年から……とても歴史のあるお店なんですね。

川崎さん:その上、母方の家はとても教育熱心だったので、私は幼稚園の頃からピアノやバイオリン、小学1年生からは英会話を習っていました。小学校から高校卒業までは、ずっと家庭教師もついていたんです。高校生のときにはアメリカで短期留学もしてきました。

 

——お話を聞いていると、まさしくお坊ちゃん、って感じですね。

川崎さん:確かにそうかもしれませんね。でも、私は子どもの頃からお坊ちゃん扱いされるのが大嫌いだったんですよ。

 

——高校卒業後は、やはり大学に進学したんですか?

川崎さん:北里大学の薬学部に入学しました。弟が重度の障がいを持っていたので、自分が医者や研究員になって弟の病気を治してあげられたらと思ったんです。医学部は難しかったので薬学部に入ったんですけど、ただ、そのうち興味が医学や薬学から芸術の方に向いていってしまったんですよ。

 

——それじゃあ、大学卒業後は芸術の道に進んだんですか?

川崎さん:ところが父は家業を継がせたいわけです。それで、東京にある家庭用雑貨のメーカーや問屋で丁稚奉公をすることになったんです。でも仕事をしながら、これは自分には向かないと感じていましたね。

 

「お香の知識ゼロ」からのスタート。

——そこから、薫香専門店をはじめたのはどうしてなんですか?

川崎さん:私の姉が、薫香業界で長い間働いてきたスペシャリストだったんです。新潟三越のテナントで薫香販売をしていたときも、お客様からとても信頼されていました。その姉に「京都や倉敷で薫香専門店を開きたい」という夢があったので、姉の夢を実現するためにまずは新潟でこの「香り小町」をはじめたんです。

 

——そうだったんですね。じゃあ、最初はお姉さんがお店に立っていたんですか?

川崎さん:最初はその予定だったんですよ。ところが、あまりにお客様から人気があったので、新潟三越さんが姉を手放してくれなかったんです(笑)。そこでしかたなく、私がお店に立つことになりました。

 

——そういうイレギュラーな展開だったんですね。でも、線香嫌いなのに薫香専門店を営業するのって、かなり大変だったんじゃないですか?

川崎さん:大変でしたね(笑)。何しろお香に対する知識なんてまったくなかったんだから。それから、接客や包装なんかもやったことがなかったんです。でも、持ち前の負けず嫌いを発揮して、薫香について猛勉強したりラッピングの練習をして、なんとか今までやってこれたんです。ただ接客だけは今でも苦手なんですけどね(笑)

 

——そうは見えませんけどね(笑)。でも香りって奥が深いだけに、覚えるのは大変そうですよね。ちなみに線香嫌いは克服したんですか?

川崎さん:伽羅の香りを知ってからはハマってしまい、それ以来、香りの世界が大好きになったんです。

 

 

——それはよかった(笑)。お店は最初からこの場所だったんですか?

川崎さん:最初は2000年に万代シティでオープンしたんです。でもカフェやギャラリーも併設したかったので、2006年に移転リニューアルをしました。でもスタッフ不足でカフェやギャラリーに人手を回せなくて、あきらめて古町に移転したんです。ところが今度は建物の老朽化で漏電が発生して、現在の場所にまた移転して営業することになりました。

 

——あちこち移転して、ようやく今の場所に落ち着いたんですね。

川崎さん:もともと物作りが好きだったので、知り合いに手伝ってもらいながらお店の内外装のほとんどを自分たちで手作りしました。電気工事も自分でやろうとしたんですが、うっかり腕時計をしたまま作業をしたら感電してしまったので、電気工事はあきらめてプロの業者にお願いしました(笑)

 

お香を使うことで、生活臭は快適に変わる。

——「香り小町」では、どんなものを取り扱っているんですか?

川崎さん:お仏壇に使う線香や焼香、お茶席に使う練香や香木、匂い袋、香炉など「香り」と名のつくものはほとんど扱っています。最初はアロマも扱っていたんですけど、薫香商品だけに絞ったんです。オリジナルブランドの「雪椿」を立ち上げて、お香はもちろん、香立てや切り絵などの「作品」も展開しています。

 

 

——へ〜、オリジナルブランドもあるんですね。ネットでの通販はやっているんですか?

川崎さん:いいえ。香りっていうのは言葉では伝えにくいものだから、通信販売はやっていないんです。その代わりホームページからお問い合わせいただければ、ご説明させていただきますし、お買い上げいただくこともできます。通販用のカートはありませんけど(笑)

 

 

——確かに通販で販売するのは難しいですよね。話は変わりますけど、お香ってどんなふうに使うのがおすすめですか。

川崎さん:お香っていうのは、空気を変える道具だと思うんです。特に生活臭を快適にするのに、とても有効だと思います。旅先から家に帰って玄関に入ると、ほっと落ち着いた気持ちになりますよね? あれって生活臭によって安心感を得ているんですよ。だから生活臭っていうのは、人が一番リラックスできる香りなんですよね。

 

——なるほど。お香を使うことで、生活臭がより快適になるんですね。

川崎さん:そういうことです。お線香の方は仏様に手向けるものですが、親御さんやお子さんを亡くしたご遺族にしてみれば、できるだけいい香りに包んで送ってあげたいと思うものです。そんなご遺族に対しては、寂しさを少しでも和らげてあげられる香りをおすすめしています。お店で涙を流されるお客様も多くて、私も思わずもらい泣きしてしまいますね。

 

 

——香りにもいろんなエピソードがあるんですね。今後は京都や倉敷への出店も考えているんですか?

川崎さん:最初はそういう考えもありましたけど、お店を始めてすぐに、専門店はチェーン展開をするべきじゃないと考えるようになりました。まして、京都や倉敷という観光地で営業するのはなんだか違うと思ったんです。これからは新潟の人たちがもっと香りを身近に楽しめるよう、この場所でいろんな方々のお手伝いをしていけたらいいなと思っています。

 

 

香り小町

新潟市中央区東堀前通6番町1059-4

025-226-7676

10:00-17:30

不定休

 

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