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木工オーダー家具とクラフト品のショップ、そして美容室もある「ke-shiki」。

旧豊栄市にある昔ながらの日本家屋を、木工製品のショップ兼ショールームと美容室に改装してスタートした「ke-shiki(けしき)」。取材に伺った日はあいにくの天候でしたが、天気がよければ新発田方面が一望できる素晴らしい景色も見られるのだとか。今回はお店のことやこの場所を選んだ理由など、坂爪さんご夫婦にいろいろと聞いてきました。

 

ke-shiki

坂爪 哲也 Tetsuya Sakatsume

1988年秋葉区生まれ。長岡造形大学を卒業後、家具職人を目指し3ヶ月ほど北海道へ。会社の事情もあり新潟に戻り、建具店や家具工房で10年間経験を積む。2021年に独立開業し、移動販売車とインターネットで木工製品を販売。2022年11月、新潟市北区に店舗兼ショールーム「ke-shiki」をオープン。

 

ke-shiki

坂爪 あかね Akane Sakatsume

1989年秋葉区生まれ。新潟理容美容専門学校を卒業後、東京で4年間美容師として働く。新潟に戻り登山用品店に2年間勤めた後、美容師に復職。2022年11月に独立し、ヘアサロン「ke-shiki」をはじめる。

 

工房を探して出会った昭和の一軒家が、夫婦で一緒に働く場に。

——まず「ke-shiki」さんがどんなお店なのか教えてください。

哲也さん:1階は木工のオリジナル家具とクラフト品のショップ兼ショールームで、2階は美容室という造りになっています。昭和に建てられた日本家屋を改装した建物なので「お店」っていうイメージの場所ではないですし、木工品のショップと美容室が一緒になっているから、ひとことで説明するのが難しいです(笑)

 

——建物が素晴らしいですよね。玄関から入った瞬間、「懐かしい」って思いました。

哲也さん:去年独立したときから物件を探していて、たまたまご紹介いただいたのがここでした。もとは農家をされていた方のお住まいで、納屋は工房としても使えそうだし、自宅部分はショールームにするのにぴったりで、すぐに気に入りました。店舗はおおよそ1年かけて自分で改装したんですよ。

 

——じゃあ、この建物との出会いが「ke-shiki」さんがスタートするきっかけだったんですね。

あかねさん:私は最初、開業するつもりではなかったんです。夫婦で独立するってリスクが高いじゃないですか。勤めていれば安定した収入が得られるけど、ふたりとも個人で商売をやるってどうなんだろう、って不安があって。でも夫の改装作業を手伝っているうちに、「やりたい!」って思うようになったんです。ここからの眺めに惹きつけられたんですよ。

 

 

——お店のことをもう少し詳しく教えてください。まずは「ke-shiki」の木工製品について。

哲也さん:テーブル、椅子、棚、お盆、食器など、木製であればなんでも作れるかな。小物類は開業してから作りはじめました。独立した当初は自分の作品をネットと移動販売で売ろうと考えていたんです。移動販売に大物家具は不向きだし、お客さまに手にとっていただきやすい小物類が適していると思ったんですよね。

 

 

——哲也さんは、もともと開業を意識されていたんでしょうか。

哲也さん:大学を卒業してからずっと家具職人を目指していて、職場でもいろいろな経験を積ませてもらいました。以前務めていた「ISANA」は特にいい職場で、中川社長にも大変お世話になりました。とても素晴らしい制作に関わることができていたので、開業するか迷ったこともあったんですけど、中川社長にも独立を応援してもらって自分の道をスタートすることにしたんです。

 

——あかねさんにも伺います。同じ美容師でも、今までとは違うところも多いのではないですか?

あかねさん:たくさんのスタッフで大勢のお客さまをお迎えするんじゃなくて、ひとりのお客さまをじっくり接客するところはこれまでの美容室とは違うかな。気に入っているのは、お店の佇まいと眺望。「ke-shiki」ならではの誇れるポイントです。

 

——どんな美容室にしたいと考えていますか?

あかねさん:夫が作った家具に座って、景色を見ながらゆっくりしていただく。そんなふうに過ごしてもらう時間もサービスのひとつになると思っています。コンセプトは「暮らしとつながる美容室」。家具から「暮らし」を表現したいと思っています。

 

サービスを提供する側、される側。双方が関わりひとつのものを。

——おふたりが「ke-shiki」として大切にされていることってなんでしょう?

哲也さん:オーダー家具の場合は、お客さまが理想とする暮らしと僕ができることをお互い話し合って「ひとつのかたち」を作ることを目指しています。「ke-shiki」の家具はお客さまの生活スタイルや要望に合わせたものなんだけど、その人が考えた家具でも、僕が考えた家具でもない。「ふたりのアイディアが詰まったもの」にすることが大事だと思っています。

 

あかね:美容室にも、お客さまに合わせた施術、サービスがあります。人と人がどう関わるのか。私たちはそれを大事にしているんですよね。

 

 

——お店をオープンしてからはどんな反応がありましたか?

哲也さん:店舗ができるまでの様子を知っている人からは「よく頑張ったね」って言われることが多いです。「ここでお店をやるの?」って心配してくださっていた方がたくさんいたんでしょうね。昭和の一軒家を改装した努力が報われたようで嬉しいです。

 

あかねさん:普通の美容室とは違う接客、空間づくりをしているので、お客様からはここで過ごすことを「いいね」と言ってもらえています。「リラックスできる場所にしたい」という気持ちがきちんと伝わっているのかな。

 

——今後については、ご夫婦でどんなお話をされているんでしょう?

哲也さん:店舗としては未完成の部分も多いので、まだまだブラッシュアップしていきたいですね。展示家具のラインナップを増やして、より暮らしをイメージしやすい環境に整えたいと思っています。「どんな暮らしをしたいのか」のヒントになるものを増やしていきたいので。

 

あかねさん:私は「人に貢献したい」「この地域の皆さんのお役に立ちたい」っていう気持ちがあるので、来年を目標に訪問美容にもチャレンジしたいと思っています。「ke-shiki」らしい訪問美容にしたいから、家具を持参したり、お花を飾ったり、アロマを用意したり、お店にいるような空間づくりをしたいですね。

 

 

——最後に「これは伝えたい」っていうことはありますか?

あかねさん:ご近所さん含め、この地域の皆さんと以前からのお客さまにめちゃくちゃ助けられているんです。お隣さんが草取りをしてくれたり、ご近所からお野菜をいただいたりもしました。主人が木を切っていたら、機材を持っている方が「それじゃダメだから、俺がやってやる」って助けてくれたこともありましたね。この地域の皆さんには感謝しかないので、まずそのお礼を伝えたいです。

 

哲也さん:皆さんの応援があって、やっとオープンできたと思っています。こんな謎の工房と美容室ができるとなったら、地元の皆さんが煙たがるんじゃないかと心配だったんです。僕たちがやろうとしていることをご近所さんたちに伝えて、もし「ダメだ」と言われたら他の場所を探そうとも思っていたんですけど、取り越し苦労でした。「ぜひやってよ」「頑張れ」なんて声をかけてもらって、とても支えられています。

 

 

 

ke-shiki

新潟市北区太田2960-1

※掲載から期間が空いた店舗は移転、閉店している場合があります。ご了承ください。
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