女性客がひとりで飲みに行けるダイニングバー「小春日和」。
食べる
2021.01.13
以前、古町4番町にあった隠れ家みたいなダイニングバー「小春日和(こはるびより)」。女性に人気のお店ですが、少し前に移転して、今は白山神社に近い一番堀で営業をしています。移転前は「ダイニングバー」という雰囲気でしたが、今は「居酒屋」っぽい雰囲気に。イメージチェンジの理由、どうして移転することになったのか、そのあたりも含めて店主の多田さんにいろいろお話を聞いてきました。


小春日和
多田 恵子 Keiko Tada
魚沼市生まれ。新潟市の美容専門学校を卒業後、美容師として働く。その後飲食店でのアルバイト経験を積み、2011年3月に古町4番町で「小春日和」をオープン。2016年に一番堀通へ移転する。食べることが好きで、若い頃は古町でよく食べ歩きをしていて、その経験が今の仕事に生かされている。
移転に伴って、洋風から和風へイメージチェンジ。
——以前は古町4番町にありましたよね。移転したんですか?
多田さん: そうなの。もうだいぶ建物が古くなっていたからね。思い切って4年くらい前に移転しちゃったの。
——こちらの場所は以前は居酒屋があったんでしたっけ?
多田さん: そうそう。長い間の汚れがたまっていたから、お掃除が大変だったのよ。1週間くらいかけて壁や床を磨いて、なんとかここまで綺麗にしたんだよね。前の状態を知っている人からは「よくお店になったね」って感心されたわ。
——それは大変でしたね(笑)。でも前の「小春日和」と比べるとかなりイメージが変わりましたね。
多田さん: 掃除した以外はほとんど前の居酒屋そのままだからね。洋風から和風にガラッと雰囲気が変わっちゃったから戸惑うお客さんも多かったね。常連のお客さんの中には「こんなの小春日和じゃない」なんて言うお客さんもいたけど、反対に「小上がりがあって、おばあちゃんの家みたいでくつろげる」って言ってくれるお客さんもいたわ。

まわりに背中を押されるようにオープンした「小春日和」。
——多田さんは「小春日和」を始める前って、どんなことをされていたんですか?
多田さん: まず魚沼から新潟に出てきて美容学校に通ったの。卒業して美容室に勤めてたんだけど、腰を痛めちゃって、美容師の仕事が合わないと思っていたこともあって辞めることにしたのよ。私は食べ歩きが好きだったから、それからは居酒屋とかそば屋とかの飲食店でアルバイトを続けてきたんだよね。その中でもダイニングバーの「胡桃屋(くるみや)」は長い間働かせてもらって、いろいろ勉強になったね。
——「胡桃屋」さんではどんな仕事をしていたんですか?
多田さん: 調理補助……板前さんの手伝いだね。段取りが悪くて板前さんから怒られたこともあったけど、「下ごしらえをしっかりする」っていう料理に対してのこだわりを教わったわ。他の店ではそのまま出しているような食材でも、私は下ごしらえをすることが当たり前になってるもん。
——そのときの経験が大きく役立っているんですね。ところで「小春日和」はどういういきさつでオープンすることになったんですか?
多田さん: 私もだんだん体力がなくなってきていたし、パートはいつどうなるかわからないから、いつかは自分でお店をやらなきゃって思ってたんだよね。そんな話を職場の同僚に話したら「すぐにでもお店を始めるべきだ」って背中を押されてさ。私はまだ迷いもあったんだけど、まわりの人たちから押されるように開店することになったんだよね。

女性客が快適に過ごせる、店のこだわりとは。
——「小春日和」はどんな店にしようと思って始めたんですか?
多田さん: まわりの人たちはスタッフを雇って小料理屋を始めると思っていたみたいだけど、私は最初からひとりでできる店を考えてた。母ちゃんが料理作って出すみたいな店。私も昔はいろんなお店を食べ飲み歩きしてたから、女性客がひとりで来ても安心して食べたり飲んだりできるお店にしたかったね。
——じゃあやっぱり女性客が多いんですか?
多田さん: そうね。40〜50代の女の人が多いかな。お店をやってる人なんかは、家に帰ってから自分で料理作るのが面倒だから、うちで食べてったりするんだよね。
——最初に考えていた通りのお店になっているんですね。
多田さん: そうだね。でも「女性客が快適に過ごせるお店」っていう自分の理想を通そうとすると、経営は大変になってくるところもあるよね。お店ってお客さんがあってこそだからさ。男性客をお断りしているわけじゃないし、お客さんを選んでいるわけじゃないんだけどね。
——なるほど。バランスを取るのは難しいかもしれないですね。
多田さん: そうなのよ。でもお客さんとお話するのは本当に面白いね。カウンターで話しているお客さんを見ていると、昔飲み歩きしてた頃の自分を思い出すわ(笑)

見た目や食材、下ごしらえにこだわった料理。
——多田さんが料理をするときにこだわっているのって、どんなところですか?
多田さん: 料理はすべてに渡ってこだわってる。まず少しでも美味しそうに盛り付けをきれいにするよう心掛けてるね。ひとつの料理に最低4種類以上の食材を使うようにして、色は3色以上になるように気をつけてるのよ。
——たしかに見た目も美味しそうですよね。
多田さん: ありがとう(笑)。あと料理の腕は大したことないから、食材はどこの料亭にも負けないようないいものを使ってるね。お米は岩船産コシヒカリを使ってる。私の実家は農家だから、お米を見る目には自信があるのよ。

——素材を生かせるのも腕があるからですよ。さっきお話のあった下ごしらえもこだわりのひとつですよね。
多田さん: そうそう。味噌汁も玉子焼きもそれぞれ全部出汁を取るところから作ってるし、野菜は砂が残っていないようにしっかり洗ってから使うようにしているのよ。私、食べたときに砂がじゃりっていうの大嫌いだから。
——かなりこだわって料理を作ってるんですね。夜の営業時には色々料理がありますけど、昼のランチは3種類なんですね。
多田さん: サラリーマンの人なんかだとランチタイムが60分しかないじゃない。会社との行き帰りを計算すると、店で食事できる時間なんて30分くらいしかないのよ。その30分の中でメニューを選ぶのに迷っている時間がもったいないでしょ。かといって1種類だけだとお客さんの好き嫌いもあるし。だから迷わなくていいように3種類にしぼって、10年間ずっと同じメニューを出してんの。まあ冬は限定メニューの「かきフライセット」があるから4種類になるけどね。

古町活性化のためにも、飲食店を増やしたい。
——新型ウィルス感染症の影響ってありますか?
多田さん: 白山神社の前だから、毎年お正月は初詣の参拝客のために店を開けてたんだけど、今年の正月の3が日はお店をお休みしたのよ。私が飲食店で働き始めてから、初めてお正月に休んだわ。
——初めての正月休みっていうのもすごいですね。では最後に今後やってみたいことってありますか。
多田さん: 古町を活性化するためには飲食店が増えないとダメだと思うんだよね。だからお店の数をもっと増やしたいんだけど、自分の体力と相談しながら実現していきたいね。私はこの仕事しかないから、できる限りお店を続けていけたらいいと思ってるわ。

とってもフレンドリーで、あっという間に打ち解けてしまう多田さんのキャラクターに、長年接客業を続けてきた経験を感じました。飲食業の接客は「決してマニュアル通りではなく、お客にきちんと向き合うことが大切」という多田さん。落ち着いて過ごしたい女性の皆さんはぜひ訪れてみてください。小春日和みたいに暖かい気持ちになれると思いますよ。
小春日和
〒951-8132 新潟県新潟市中央区一番堀通685-6
025-222-7474
11:50-14:00/17:30-22:00
火曜休
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