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山の幸の魅力を伝える農家カフェ「こくわ屋 藤兵衛」。

自然豊かな三条市の下田地区。五十嵐川の清流には鮎が泳ぎ、山のなかには特別天然記念物のハヤブサやカモシカも棲息しています。そんな豊かな自然の恵みを使って、カレーやスイーツを作っているのが「有限会社 藤兵衛工房」の山田さん。眺めのいい農家カフェ「こくわ屋 藤兵衛」にお邪魔して、山田さんからカフェや商品のお話を聞いてきました。

 

 

有限会社 藤兵衛工房

山田 宏高 Hirotaka Yamada

1956年三条市(旧下田村)生まれ。東京でインテリア関係の仕事を6年経験した後、下田に戻り店舗設計施工業をはじめ、飲食店の企画開発にも携わる。2008年より「こくわ」の実を使った「こくわカレー」「こくわソース」の製造販売をはじめ、2011年に「こくわ屋 藤兵衛」をオープン。

 

自然豊かな下田地区に佇む農家カフェ。

——山田さんはずっと下田で暮らしているんでしょうか?

山田さん:高校を出てから6年くらいは東京でインテリア関係の仕事をしていたけど、うちは兼業農家だったから跡を継ぐために帰ってきました。それからはずっと下田で暮らしています。

 

——こちらに帰ってきてからはどんなお仕事を?

山田さん:東京での経験を生かして、店舗の設計施工業をはじめました。東京の「茜屋珈琲店」を3軒ほど手がけたんですよ。「こくわ屋藤兵衛」の店舗も「茜屋珈琲店」から影響を受けている部分が大きいと思います。

 

——そういわれてみると雰囲気が似ていますね。

山田さん:そのうち店舗を作るだけじゃ物足りなくなってきて、自分で作った店舗の企画開発もやってみたくなってきたんです。それで三条市内の喫茶店やレストランに携わるようになって、飲食業も経験してきました。そのときのノウハウも「こくわ屋藤兵衛」に生かされているんじゃないかな。

 

ご当地グルメ「こくわカレー」誕生秘話。

——「こくわカレー」って、どんな商品なんですか?

山田さん:「こくわ」という果実をペーストにして作ったカレーなんです。「こくわ」というのは「サルナシ」とも呼ばれるマタタビ科の植物で、酸味と甘みの強いキウイフルーツに似た果実が特徴です。山登りする人のなかでも山菜や木の実に興味のある人しか知らない、どちらかといえばマイナーな果実じゃないかな。

 

——どうして「こくわ」を使ったカレーを作ろうと思ったんでしょう?

山田さん:うちは農家なんですけど、減反政策で田んぼが減ってしまったんです。そこで米の代わりに作る作物を探しているときに「こくわ」と出会いました。もともと「こくわ」は下田の里山に自生していた植物なんですよ。それで栽培をはじめ、果実を販売していたんです。

 

——最初は「こくわ」の実を売っていたんですね。

山田さん:「こくわ」は完熟すると糖度が25度もあると言われて、野生の果実のなかではいちばん甘いんですけど、未完熟のまま食べると喉がイガイガしてしまうんです。その上、熟期がまちまちで揃わないのが厄介なんですよ。泉田前知事に試食してもらったときも、思いきりむせさせてしまいました(笑)

 

 

——せっかく甘いのにタイミング悪かったですね……。

山田さん:加熱するといがらっぽさが解消するので、加工して販売することにしたんです。その頃に募集していた「農工商連携による地域資源開発事業」に「こくわ」を加工した商品の提案をしてみたら採用されて、「こくわカレー」と「こくわソース」を作ることができたんです。

 

——「こくわカレー」は観光施設でよく見かける商品ですよね。どんな味がするんですか?

山田さん:「こくわ」の甘酸っぱさが生かされた、フルーティーな味わいのカレーです。その味見をしてもらう意味で、12年前にアンテナショップとして「こくわ屋 藤兵衛」をオープンしたんです。

 

里山の幸を使ったメニューの数々。

——「こくわ屋 藤兵衛」をはじめるにあたって、こだわったことがあったら教えてください。

山田さん:流行に流されることなく、「下田」という地域に根ざした雰囲気を大切にしたかったんですよね。そう考えたときにぴったりハマったのが、以前手がけた「茜屋珈琲店」の雰囲気だったんです。

 

——「茜屋珈琲店」のどんなところを参考にしたんですか?

山田さん:例えば棚の高さを均等にしないところは、そのときに学んだことですね。均等にしちゃうと圧迫感が生まれて居心地が悪くなるんですよ。食器やカップも「茜屋珈琲店」の影響を受けて個人的にコレクションしていたんですけど、それをお店で使っています。

 

 

——いろいろな経験が生かされているんですね。「こくわカレー」以外には、どんなメニューを楽しめるんでしょうか。

山田さん:「あんにんごプリン」や「あたんざき大福」ですね。

 

——どちらも聞き慣れないワードですね。やっぱり里山の幸を使ったメニューなんでしょうか?

山田さん:「あんにんご」は「ウワズミザクラ」や「ナタツカ」とも呼ばれる植物です。木の実でリキュールを作り、アルコールを飛ばして作ったカラメルソースをプリンにかけています。「あんにんご」の木で柄や鞘を作ったナタも販売しているんですけど、コロナ禍のキャンプブームで年間200本も売れて驚いています(笑)

 

——食べる以外にも、いろいろな活用ができるんですね。

山田さん:そうなんですよ。「あたんざき」は「ナツハゼ」という植物で、ブルーベリーの亜種なんです。里山にはいっぱい生えているんですけど、食べられることを知らない人が多いんですよね。アントシアニンの含有量ではブルーベリーをしのぐと言われていて、視力回復に効果があるんです。今年は「あたんざき」で大福を作ってみたんですけど、プチヒットを飛ばしました(笑)

 

自然の恵みを使った商品やメニューの苦労。

——野生食材を使う上でのご苦労なんかもあるんじゃないですか?

山田さん:「こくわ」はそこそこ大きな実ですし、たくさん実るんですよ。でも「あんにんご」や「あたんざき」みたいに小さな実も多いので、ヤブ蚊に刺されながら収穫しても採れる量は少ないんです(笑)。だから冷凍保存しながら貯めたり、「あんにんごプリン」みたいに少量でもメニューに使える方法を考えるわけです。

 

——効率は決してよくないんですね。収穫するのはやはり秋なんでしょうか。

山田さん:ほとんどの果実は秋頃に実るので、春にも採れるものはないかと考えたら「わらび」を思いつきました。

 

——「わらび」がどんな商品になるんですか?

山田さん:ペースト状にしてそばやうどんのつなぎとして使い、「わらびそば」と「わらびうどん」を作りました。「わらび」のぬめりが生かされて、喉越しが良くなるんですよ。

 

 

——まるで「へぎそば」の海藻が「わらび」になったような感じですね。これはご当地グルメとして人気出るんじゃないでしょうか。

山田さん:ところが残念なのは、蕎麦が輸入物になってしまうことなんです。国産の蕎麦を使うと原料費がぐっと上がってしまうんですよ。そこで今まで続けてきた米づくりをやめて、今年から蕎麦づくりをはじめることにしたんです。そのためのクラウドファンディングを近日中に予定しているので、ご協力いただけると嬉しいですね。

 

——そうすると蕎麦も下田産になるわけですね。最後に、今後はどんなことに取り組んでいきたいと思っていますか?

山田さん:これからも里山の恵みを使った商品を作り続けて、いつかは下田を代表する名物を生み出したいです。その商品を通して、下田の魅力を多くの人に知ってもらえたら嬉しいですね。「こくわ屋 藤兵衛」はしばらく予約制にさせていただいてましたが、今年の4月から通常営業させてもらっていますので、ぜひ里山の恵みを使ったメニューを味わいにきていただきたいです。

 

 

 

こくわ屋 藤兵衛

三条市笹岡2235

0256-46-4931

8:00-18:00

不定休

※掲載から期間が空いた店舗は移転、閉店している場合があります。ご了承ください。

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