僕らの工場。#33 旋盤技術で家具の脚を「有限会社倉茂木工所」。
ものづくり
2022.09.25
昭和13年の創業以来、木材の削り、磨き、塗装など、旋盤での丸棒加工を中心とした木工加工品を製造してきた「有限会社倉茂木工所」。農工具や大工道具をメインに加工していた創業時のことから、木材家具のパーツを製造するようになったきっかけや、モノづくりに対する想いなど、代表取締役の倉茂さんにお話を聞いてきました。

有限会社倉茂木工所
倉茂 大輔 Daisuke Kurashige
1972年三条市生まれ。有限会社倉茂木工所4代目代表取締役。昔は自宅が工場を兼ねていたため、幼い頃からモノづくりが身近にある環境で育つ。
大工道具・農工具のパーツ加工から、家具パーツ加工へのシフト。
――歴史ある木工所だそうですが、大輔さんで何代目になられるんですか?
倉茂さん:初代が私の祖父になるんですが、この祖父が短命で若くして亡くなったんです。そこから祖母が引き継いで、うちの父(現会長)が学校を卒業するまでは代表みたいな感じでつないでくれました。なので世代でいえば3代目になるのかもしれないですけど、代表の移り変わりでいくと4代目になります。
――創業当時から家具のお仕事をされていたんですか?
倉茂さん:創業当時は錐や鎌の柄だとか、大工道具や農工具のパーツを作ることが多かったです。父親が引き継ぐ頃には、加茂市にあるベッドメーカーの仕事を受けるようになっていて、これが徐々に家具業界と取引が増えていくきっかっけになっています。加茂市は桐箪笥が有名で、家具の産地でもあるのでね。

――大輔さんは幼い頃から家業を継ぐように言われていたんですか?
倉茂さん:継ぐつもりはまったくなかったですね。というのも私は五男なので、そういう教育やしつけもなかったですよ。昔は住宅兼工場というかたちで運営していて、工場と共に生活していたような感じでしたね。学校から家に帰ると必ず両親がいるっていう状態だったので、鍵っ子に憧れていました(笑)。「家に帰っても細かいことを言われずに自由に過ごせるのいいなぁ」って。
バイクカスタム、ミニバイクレースにハマった高校時代。
――倉茂さんにとって、モノづくりはとても身近なものだったんですね。
倉茂さん:昔からモノづくりに興味はありました。まぁこういう地域に生まれたのもあって、高校進学前くらいからは「いずれモノづくりの仕事に就くんだろうなぁ」とは思っていました。小さい頃から乗り物が大好きで、高校2年の終わり頃からミニバイクレースにどっぷりハマりました。その流れで高校卒業後はバイク関係の仕事をはじめました。

――そこからどのようにして木工とつながるんですか?
倉茂さん:就職してからもミニバイクレースは続けていたんですけど、イベントってだいたい土日にあるんです。でも勤めていたお店は土日営業だったのでなかなか休めなくて……。でも「家業である木工所に入社すれば、土日休みだからイベントには出られるな」って思ったんです。「土日にイベントのない週は平日に休んで練習して、その分は土日に働けば良いや」、みたいなとても安易な考えで入社しました(笑)
――実際に入社されてからはどうでしたか?
倉茂さん:もちろんそんな理想通りにはいかなかったです(笑)。「ぺーぺーがなにふざけたこと言ってんだ」って言われました(笑)。一応条件として伝えてはいたんですけど、やっぱり現場の人たちの雰囲気がそうはさせませんでしたね。
――バイクのお仕事から木材加工のお仕事に変わって、苦労もあったんじゃないですか?
倉茂さん:うちは旋盤加工が得意なんですけど、小さい頃から機械をよく見ていたのでやり方はだいたい分かっていました。なので加工自体は抵抗なくできるようになりました。ただやっぱり、新規の仕事は作り方を考えなければいけないんです。これにはなかなか苦労しました。一緒に働いていた叔父がとても器用な人だったので、いろいろと見ながら勉強させてもらいましたね。

「安く」「早く」「性格に」のバランスのとり方が大切。
――図面をどう形にするかは、技術とは別の能力が必要そうですね。
倉茂さん:そうですね。例えば椅子にしてもいろんなデザインがあるので、図面を見ながらどうやったら図面通りのものが出来上がるのかっていうところを考える必要があります。図面はCADで描いたものもあれば、手描きのラフのスケッチだったり様々です。私が入社した頃は基本的に手描きの図面でしたね。
――モノづくりで大切にしていることはどんなところですか?
倉茂さん:うちは下請けなので、いかに「安く」「早く」「正確に」作るかっていうところを常に考えて、そのバランスを大切にしています。ただ早ければ良いというものでもないし、時間をかければ良いというものでもない。立ち位置を考えたときに、うちはコストをかけすぎずにいかに高品質に近づけるかっていうのが大事だと思っています。
――その考えは入社当時から持っていたんですか?
倉茂さん:入社してから5年目くらいの頃に、大手事務用品メーカーから家具作りの依頼をもらって、それが会社が大きく変わっていくきっかけになりました。納品にはかなり厳しい基準があって、それをクリアできたことで会社も私自身も自信がついて、ワンステップ上がったなっていう感じがありました。
――厳しい基準というと?
倉茂さん:まず寸法、品質、材料の選別ですかね。材料の選別に関しては「この色にしてください」っていう厳しい指定がありました。ただ当たり前ですけど、木は1本1本すべて違いますよね。伐採して製材して使用すると同じものはひとつもありません。それを極力統一してくれっていうことなので、仕入れ先もたくさん探して協力してもらいました。でもこういった実績が積み重なったおかげで、世界トップブランド家具メーカーの日本法人からもお仕事をさせてもらえるようになりました。

――安定して高品質な部品を作り続けるのはとても大変そうですね。
倉茂さん:会社ですから従業員もいるので、基本的にはひとりが複数の仕事をしています。工程が変われば他の人間に別の加工をお願いすることになります。なので、次に加工する人が作業をしやすいように受け渡すっていうことは意識していました。あとは最終的にこの家具を使うお客様の立場に立ってモノづくりをする姿勢は大切にしています。従業員には「作っている君にとっては1,000個のうちの1個かもしれないけれど、お客さんはその品物を1個しか買わないよね。そのときにこんな加工で良いの?」っていうようなことは常に伝えています。
自社商品を世に出していきたい。
――今後はどんなことに挑戦していきたいですか?
倉茂さん:なかなか着手できていない部分ではありますが、自社開発した商品を世に出したい思いは常に持っています。あのドム(ガンダム)を作った子は「木で何か作りたい」っていうとても強い思いがあってうちに入社しました。材料は豊富にあるので、「もし自分の作りたいものがあったら設備も自由に使って作っていいですよ」っていうのは全従業員に言ってあります。ひとりが面白いモノ作ると、他の社員も触発されて作ったり。モノづくりが好きな従業員が揃っているので、今後はそういったところを目標にしたいですね。


――モノづくりが好きな人には最高な環境ですね。
倉茂さん:あとはこの燕三条地域は金物で有名ですけど、ここにはもっといろんな職業があって、木工をやっている会社もたくさんあるんです。三条は刃物だけではないということを皆さんに知っていただきたいですね。木工部品は安価なものも多いので、裏方みたいな存在で扱われることが多いですが、もっと日の目を見ても良いんじゃないかって思っています。製造業は人手不足が深刻なので、木だけじゃなくて人も育てていかないと企業が成り立たなくなりますからね。今年は3年ぶりに「燕三条 工場の祭典」が10月7日から開催されます。普段は見られないようなところもお見せできるので、是非見に来ていただきたいですね。
有限会社 倉茂木工所
TEL : 0256-45-4963
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