まるごとの佐渡と感謝を一皿に。
「La Plage」の須藤シェフ。
食べる
2026.07.12
2025年、若手料理人日本一を決めるコンペティション「RED U-35」でグランプリを受賞した須藤さん。家業である「Ryokan浦島」内のフレンチレストラン「La Plage(ラ・プラージュ)」でシェフを務めています。輝かしい実績を持ちながらも、物腰はとても穏やか。何度も口にしたのは、「感謝」という言葉でした。
須藤 良隆
Yoshitaka Sudo(La Plage)
1991年佐渡市生まれ。高校卒業後に大阪の辻調理師専門学校へ進学し、フランス校へ留学。リヨンの3つ星レストラン「ポール・ボキューズ」で本場のフランス料理を学ぶ。2012年に帰国し、「Ryokan浦島」のフレンチレストラン「La Plage」のシェフを務める。2025年、料理のコンペティション「RED U-35」でグランプリを受賞。休日も釣りやきのこ採りに出かけるなど、公私ともに「食」が生活の中心となっている。
有名レストランで、
日本人はたったひとり。
――須藤シェフのご実家が、佐渡の「Ryokan浦島」さんだそうですね。
須藤さん:私が小さい頃から親族で経営している旅館です。両親や伯父と一緒に市場へ行ったり、厨房で洗い物を手伝ったりして、食に触れる機会が多かったんですね。私も自然と料理人を目指すようになりました。
――須藤さんは大阪、フランスで経験を積まれています。それぞれの土地でどんな刺激を受けましたか?
須藤さん:大阪の専門学校へ進学して、食文化の違いを実感しました。でも、それ以上に大きな刺激を受けたのはフランスです。研修先の「ポール・ボキューズ」は、世界でいちばん長くミシュランの3つ星を獲得し続けた名店です。そこでフランスの文化や食材、調理技術を学び、衝撃を受けました。
――「ポール・ボキューズ」には、須藤シェフの他にも日本の人はいたんですか?
須藤さん:調理スタッフやサービススタッフを合わせると、50名ほどいるレストランで、日本人は僕ひとりだけでした。辛いことはたくさんありましたけど、やっぱり「楽しい」と思える毎日でしたね(笑)。「もっと早く、早く」といつも怒られていました。
――そもそも須藤シェフがフレンチを選んだ理由は?
須藤さん:「Ryokan浦島」には連泊されるお客さまが多くいらっしゃいます。和食ばかりが続いてお客さまが飽きないようにと、父や伯父、当時の料理人さんが洋食を出すことがありました。あの頃、佐渡市内にはフレンチのお店が少なかったですし、子ども心にフランス料理に惹かれるところがあったんですね。小学校の文集には、「将来フランス料理人になりたい」と書きました。

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特別生産のブランド豚に希少牛。
90%以上が佐渡のもの。
――フランスで1年間経験を積まれて、今度は「Ryokan浦島」に戻ってきました。
須藤さん:思っていたより早かったんですが、いずれは戻るつもりだったので、「Ryokan浦島」に入りました。ちょうど私が帰国する間際に、旅館でフランス料理を提供しようという話が進んでいて、隣にレストランを新設したんです。それが「La Plage」です。
――馴染みのお客さんは、フレンチが食べられることを喜んだのでは?
須藤さん: でも最初の頃は、「箸で食べたいのに」「一品ずつではなく、一度に全部出してほしい」といったお声もありました。それから10年以上が経っていますので、今では以前よりもフランス料理を身近に感じてくださる方が増えたかな、と思っています。地元では、おじいちゃんもおばあちゃんも「La Plage(ラ・プラージュ)」と店の名前をサラッと呼んでくださいます(笑)。オープンしたばかりの頃は「なんて読むの?」とよく聞かれていたので、その変化がとても嬉しくて。たくさんの方に利用していただいて、心から感謝しています。
――最近はインバウンドを含め、観光客を想定しているレストランも多いようですが、「La Plage」さんはどうですか?
須藤さん:地元の食材を生かした地産地消を大切にしています。和食とは違う、フレンチの技法で佐渡の食材を表現し、佐渡のみなさんに味わっていただきたい、という思いでいます。それと同じくらい、可能性に満ちた食材を島外の方にも知っていただきたい、とも思っています。「佐渡をまるごと味わっていただこう」という気持ちで料理をしているんです。
――ということはやはり食材は佐渡のものが中心?
須藤さん:90%以上、佐渡の食材です。お魚類はもちろん、月に1頭出荷されるかどうかという幻の牛「佐渡牛」、それから生産者さんにお願いをして自社で手掛けているブランド豚「佐渡島黒豚」など、他では食べられない一皿をご用意しています。



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グランプリの先に、
「感謝」という原点。
――2025年には、料理のコンペティション「RED U-35」でグランプリを受賞されました。
須藤さん:佐渡島内からたくさんのお祝いの声やお花をいただきました。それが受賞したこと以上に嬉しくて、ただただ感動しました。佐渡のみなさんには、感謝しかありません。
――佐渡島の金山が世界遺産に登録された翌年の受賞ということなんですよね。
須藤さん: 金山とはまた違う「食」という視点で、佐渡や新潟の食文化を世界へ届けたい思いがありました。2025年度の「RED U-35」のテーマがちょうど「日本から世界へ」だったので、その思いを評価していただけたことに感謝です。
――その結果を聞いたときは、どんな心境だったのでしょう。
須藤さん: 一緒に舞台に立った仲間たちは、とてもレベルが高くって。受賞の瞬間は「僕なんかで大丈夫なのか」という思いが頭をよぎりました。でも審査員の方には「味や料理の技術以外に、人間性も評価に値した」と言っていただいて。その言葉も大きな励みになっています。
――須藤シェフは、佐渡のどんなところを魅力に感じていますか?
須藤さん:やっぱり「人」を魅力的に感じます。みなさんがほんとうに優しくて、よくしてくださって。関わってくださる方々のおかげで、名誉ある賞を獲得できたのではないかな、と思っているんです。
――お客さんにはとても丁寧に接していらっしゃると思います。いつも意識されていることはありますか?
須藤さん:食材のよさと佐渡そのものを知ってもらいたい、と思っていますので、まずはそれをしっかりと伝えること。それからお客さまに笑顔で帰っていただけるように、決してがっかりされないように日々心がけています。僕の座右の銘は「感謝」。生産者さん、お客さま、関わってくださるみなさんに、感謝の気持ちを持って料理に向き合っています。


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