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ニットでつながる、みんなのスペース。五泉の「LOOP&LOOP」。

五泉市にある「LOOP&LOOP(ループ アンド ループ)」は、『Gosen Knit』のセレクトショップ、カフェ、コワーキングスペース、イベントスペースからなる複合施設です。そして「五泉ニット工業協同組合」の事務局がある場所でもあります。全国有数のニットの生産地である五泉市に新たな複合施設が誕生したきっかけやこれまでの歩みなど、事務局の髙橋さんと鈴木さんにお話を聞いてきました。

 

五泉ニット工業協同組合

髙橋 正春 Masaharu Takahashi

1969年阿賀野市生まれ。1995年に五泉ニット工業協同組合の事務局に入局。同組合と新潟県ニット工業組合の事務局長を務める。他に五泉市行政改革推進委員、五泉市総合計画まちづくり会議委員としても五泉ニットを伝える活動を行っている。

 

五泉ニット工業協同組合

鈴木 博江 Hiroe Suzuki

1970年加茂市育ち。2014年に五泉ニット工業協同組合の事務局に入局。髙橋局長とともに組合の運営全般を担う。

 

五泉ニットを蘇らせる。ブランド化事業から具体的になった、いまどきのスポット。

——まずは「LOOP&LOOP」がどんなところか教えてください。

髙橋さん:組合企業の皆さんと一緒に考えた「ニットでつながる、みんなのスペース。」をコンセプトにした複合施設です。「着る・寛ぐ・楽しむ・集う・働く」という5つの要素がある自由な交流スペースで、『Gosen Knit』のアイテムを集めたセレクトショップ、カフェ、ワークショップスペース、コワーキングスペース 、イベントスペースを設けています。

 

鈴木さん:ニット業界の皆さんだけではなく、いろいろな方がこの建物を通じて出会える。そんなスペースになればいいなと、2021年にオープンしました。2年経って、私たちが思い描いていた場所に近づいていると感じています。

 

——どんなきっかけで誕生したんでしょう?

鈴木さん:「五泉ニット工業協同組合」として、2015年から「五泉ニット地域ブランド化事業」を推し進めてきました。その活動の一環として、いろいろなタイミングが重なって「LOOP&LOOP」が誕生する機運が高まったんですね。

 

 

——そのブランド化事業についても詳しく教えてください。

髙橋さん:五泉にはこの地域しかない特色がいくつもあります。そのひとつが、ニットの生産だけではなく、染色、刺繍、プレス、二次加工の技術がこの地域内にあること。これは全国的にも珍しいです。そして未来を担う後継者にも恵まれています。それらを踏まえてブランド化推進に向けた事業ミッションを策定し、「五泉といえばニット、ニットといえば日本の五泉」を目指し、次世代に継承することを目標にしています。

 

鈴木さん:「今治といえばタオル」「鯖江といえばめがね」など、一般の皆さんでもピンとくる名産地がありますよね。そんなイメージで「五泉といえばニット」とすぐに思い浮かぶように取り組んでいます。

 

髙橋さん:2015年から「五泉ニット地域ブランド化」を進める上で、「人材育成」「広報・PR」「地域活性化」「販路市場開拓」という課題に取り組んできました。その中でかたちになったもののひとつが「LOOP&LOOP」です。五泉ニットを中心としたコミュニティスペースを新しく作り出そうという思いからはじまりました。

 

 

——事務局のおふたり、そして組合の皆さんの熱意が伝わってきます。

鈴木さん:「LOOP&LOOP」はもともと五泉ニット工業協同組合の事務局があった建物です。「この場所でいろいろな人が交流できたらいいよね」って、皆さんとお話する中で生まれたアイディアなんですよ。「曲線のあるガラス窓が素敵だからカフェにしたらどうかな」「五泉のニット製品を買えるセレクトショップがあったらいいよね」というお声から、建物を生まれ変わらせるまでに至りました。

 

髙橋さん:ぼやっとでしたけどけっこう前からアイディアはありました。それが2015年からのブランド化に向けた計画で、具体的になったんですね。

 

——以前はどんな建物だったんですか?

鈴木さん:組合活動やブランド化事業に向けた会議、打ち合わせをする場所で、当然ですけど一般の方はいらっしゃらなかったですね。トトロに登場する「まっくろくろすけ」が出てきそうなお部屋もありました(笑)

 

髙橋さん:洗い場も流し場も昔ながらのタイルを使っていますし、宿直用のお風呂も懐かしい雰囲気がしますよ。ただ以前からあるものでも残せるものはそのままにして、いまどきに変えたというか、建物の機能を蘇らせてもらったんですね。昔の造りなので、しっかりした梁が使われていて。昔の人がそうやって作ってくれた建物を引き継げたことに重みを感じます。

 

——リノベーションにも地域の力が集結したそうですね。

鈴木さん:五泉市の「塚野建築設計事務所」さんが中心となって、この地域のプロフェッショナルとともに「Gosen boys」というリノベーションチームが結成されました。「Gosen boys」の皆さんの技術とアイディアで、昔のいいものを残しつつ新しい建物を作り上げてくださったんです。

 

『Gosen Knit』ブランドが揃うセレクトショップに、若者が集うカフェ。

——「LOOP&LOOP」がオープンして、どんな変化がありましたか?

髙橋さん:当初の狙い通り、いろいろな出会いがある場所になっていると思います。想定とは違う嬉しい展開もあって、市外から修学旅行に来てもらいました。そのときは残糸を使ったイヤリング作りを体験してもらったんですよ。

 

鈴木さん:若い方がカフェやセレクトショップを目的に来てくださいますし、大勢の方々にご来館いただいていると実感しています。

 

 

——セレクトショップには、キュートな小物類も充実していますね。

鈴木さん:「五泉のニット小物・刺繍小物」というテーマから誕生したオリジナルブランドの製品もたくさん置いていますし、組合各社さんのニットアイテムも揃っています。各社の製品を一度に楽しめるお店はここだけです。

 

髙橋さん:ブランド化事業の中で「自社商品に責任を持ちましょう」という意味合い、そして品質の証として『Gosen Knit』ブランドのロゴやタグを作成しました。セレクトショップで扱っているのは、外部の認証委員会から認証された『Gosen Knit』製品だけです。

 

——カフェはチャレンジショップとしての意味合いもあるそうですね。

髙橋さん:これからお店を持ちたい、新しいチャレンジをしたいという方にお貸ししています。今の「ensui」さんは2代目のお店。素敵なお店なので、僕たちとしては少しでも長くいてもらいたいと思っています。でも、初代は卒業されて新津に新しく店舗を設けられました。

 

五泉ニット各社を支え、地域活性のための拠点となる役割を果たす。

——おふたりは事務局として、五泉ニットのブランディングに力を注がれてきたんですね。

髙橋さん:「五泉ニット工業協同組合」はニットの会社さんで構成されています。多くの会社が元気になるためには何が必要か、持続可能なかたちで継続していけるようにサポートをするのが使命ですし、そうできるといいなと思っています。

 

——「LOOP&LOOP」が誕生してから、ニット業界はどんな様子でしょうか?

髙橋さん:繊維業界全般として右肩下がりではあります。僕たちの業界もブランド化に着手する前は現状維持が続く売上規模でした。コロナ禍となって百貨店や専門店の営業が休止となり、売上は低迷しましたが、見方を変えるとブランド化に向けてしっかりと活動していたから踏み止まれたところもあるように思います。実際、今年度の業績は上向きの見込みですよ。

 

 

——次世代を担う人材の参入という点ではどうでしょう?

髙橋さん:他の地場産業と比較すると、若手の後継者が多く2代目、3代目とバトンタッチできている会社も多いです。少しずつではありますが若い人材が五泉を選んでくれる傾向にあります。それがブランド化事業を進めるきっかけにもなりました。次の担い手のためにも、本格的に動き出すべきだという思いがあったんです。

 

——10年後、20年後、「LOOP&LOOP」がどうなっていると嬉しいですか?

鈴木さん:五泉発のブランドを世界に発信したりしてほしいな。最近では組合各社のショップがいくつもオープンしています。市内には人が集う場所が点在しているので、その点を線としてつなげて、五泉を発展するお手伝いができたらいいなと思います。

 

髙橋さん:僕も鈴木さんと同じ考えですね。「LOOP&LOOP」が誕生して、思い描いていたことが少しずつかたちになっているのは確かです。私たちが言うのもなんですけど、五泉に人を呼ぶきっかけだったり、来た人が回遊する拠点だったり、五泉の魅力を結ぶ役割ができていると思っています。

 

 

 

LOOP&LOOP

五泉市吉沢1-1-10

TEL: 0250-42-2156

火曜日定休、営業時間10:00〜16:00

※掲載から期間が空いた店舗は移転、閉店している場合があります。ご了承ください。
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