「宮尾酒造」が創業200年を機に乗り出す、新ブランドと純米大吟醸。
ものづくり
2021.04.10
新潟県を代表する銘酒のひとつ『〆張鶴』の醸造元として知られる「宮尾酒造」が、このほど創業以来初めて『〆張鶴』以外の新たな銘柄を立ち上げたのをご存知でしょうか。同社のお膝元・村上のシンボルを名に冠した『お城山』というこの新銘柄は、村上市・岩船郡内のみの限定販売。昨年末の第一弾「本醸造生原酒」に続いて、この3月末、第二弾の「純米吟醸生原酒」が発売されたばかりです。またこの新ブランドの立ち上げのみならず、これまで村上ゆかりの皇后・雅子さまの慶事の年にしか発売してこなかった『〆張鶴』の純米大吟醸酒を、超高級ラインとして定期商品化するなど、一昨年に創業200年を迎えたの機に、次々と新たな取り組みに乗り出しています。お話を聞こうと訪ねると、宮尾社長ご本人が快く対応してくれました。

宮尾酒造
宮尾 佳明 Yoshiaki Miyao
1976年生まれ。宮尾酒造代表取締役社長。東京農業大学で醸造を修め、卒業後は3年間の百貨店勤務を経て家業に入る。2012年に11代目として社長に就任。コロナ以後はプライベートで在宅時間が増え、NetflixやAmazonプライムで海外ドラマの視聴にハマりつつある。
201年目の新ブランド。地元限定『お城山』の最良の飲み方とは。
――さっそくですが、まずは今回立ち上げた新ブランド『お城山』について教えてください。立ち上げの経緯や動機は?
宮尾さん:弊社が2019年に創業200年を迎えたのを機に、より地元にクローズアップした製品をつくろうと考えました。ここ村上は水はもちろん、酒米もとても良いものがあるので、原料米は地元産の五百万石にこだわり、その良さを最大限に活かしたお酒を造ることにしました。数量限定で、販売も村上・岩船地域の弊社商品取扱店のみなのですが、地元の方はもちろん、村上ご出身の方や、観光でこちらにこられた方も、こちらでの体験や風景などを思い出しながら飲んでいただければと思っています。……とはいえ新型コロナで、遠方にお住まいの方にはなかなかお買い求めづらいタイミングでの発売となってしまいましたが。
――そうですね……。味の特徴はいかがでしょう?『〆張鶴』との違いはどのへんに?
宮尾さん:様々な種類があり、造り方にもよるので一概には言えないのですが、しいて言えば味に膨らみのあるお酒に仕上がる山田錦に対し、五百万石は比較的スッキリした味わいのお酒になります。今回の『お城山』も、後味のきれいなタイプといえるかもしれません。弊社のラインナップとしては味の幅がさらに広がったと思っています。現在はちょうど山田錦を使用した『〆張鶴』と五百万石を使用した『お城山』で同じ「純米吟醸生原酒」が発売されていますので、両品の飲み比べをしていただくのも面白いかもしれませんね。
――おおっ、それは楽しそう。『お城山』は今後、どんなブランドに育てていきたいですか?
宮尾さん:そうですね、『〆張鶴』も含めすべての商品にいえることですが、お客様の反応・感触を見ながら、ということになるかと思います。蔵として長年大切にしていることは守りつつ、商品として少しでも質を高められるよう日々改善・アップデートしていくことはすべてに共通することです。この『お城山』も、地元産の原料にこだわりつつ、その時々で最良のお酒として提供していければと思っています。

自然に丁寧に厳密に。満を持して定期商品化した純米大吟醸。
――では、昨シーズンから定期商品化した『〆張鶴』の超高級ラインについても教えてください。『〆張鶴』の純米酒としては県内純米酒の先駆けといえるロングセラーの『純』が有名ですが、意外にも純米で大吟醸酒の定期商品化は初なんですね。
宮尾さん:そうですね。純米大吟醸酒自体は以前から蔵で技術研鑽のために試験的に造っていて、地元・村上ゆかりの雅子さまのご成婚や愛子さまのご生誕、皇后ご即位の各年に限定発売していました。この純米大吟醸酒も今回の創業200年を機に、「プラチナ」、「ブルー」、「レッド」の3ラベルで定期商品化しました。

――なかなか手を出しにくいお値段ですが(苦笑)、どんな味なんでしょうか……?
宮尾さん:「純米酒」と「大吟醸酒」の両面で、これまで弊社で積み重ねてきた酒造りの粋を尽くしたお酒です。高品質の山田錦を原料に、「レッド」と「ブルー」は35%、「プラチナ」は30%まで自社工場で磨き上げて使用しています。繊細な高精白のため通常よりもずっと少ない単位で取り扱い、丁寧に厳密に仕込みます。「ブルー」と「プラチナ」については、醪からの搾りは無理な圧をかけず、袋に入れて自然にしたたり落ちてくるものだけを採っています。商品名にある「袋取り雫酒」とは、この工程のことですね。こうしてできたお酒は、必然的に量は限られますが、極限まで雑味のない、口当たりなめらかで繊細な味に仕上がります。
――んー、飲んでみたい……。素人質問で恐縮ですが、一般的に精米歩合が高ければ高いほど値段も高くなりますが、そのぶん美味しいということなんですよね?
宮尾さん:まず単純に、お米を磨けば磨くほど原材料としての分量は少なくなりますし、その分できるお酒の量も少なくなるので、必然的に価格は高くなりますね。酒質の面でいえば、一般的には精米歩合が高い方がより雑味がなく品質の高いお酒になります。また、繰り返しになりますが、高精白の原料を使っての酒造りはより繊細な取り扱いや厳密な管理で行います。自信を持ってお勧めできるお酒です。純米大吟醸や大吟醸の他にも弊社でも様々な種類を用意しておりますので、お気に入りの1本を見つけてもらえればと思います。

コロナから得たこと。手段や方法は増えても、商品の質を高めていくことが結局はいちばんの宣伝。
――2019年に200周年を迎えられたということは、創業は1819年、江戸時代から続いているということですね。なんでも、2代目の方が酒造りにまつわる秘伝の書を遺され、現在も受け継がれているとか。
宮尾さん:はい。技術的なことについては時代の変遷に伴う進化とともに更新されてきましたが、品質本位の姿勢をはじめ、酒造りに携わるものとしての心構え、精神的なことは現在でも弊社の指針となっています。
――その延長線上に純米大吟醸酒も『お城山』もある、ということですね。ちなみに、新型コロナの影響はいかがですか。
宮尾さん:打撃は正直あります。自宅での消費が増えているとはいえ、さすがに酒席や宴会など外での消費の減をカバーできるほどではありません。ただ、このコロナ禍だからこそ得られた今後につながる糧もありました。
――というと?
宮尾さん:このコロナ禍で逆に、消費者の方々と直につながれる機会が増えたことです。ご愛飲いただいている方々の生の声を聞く機会は、これまでは極端にいえば催事出店のときくらいでした。それが今回、「リモート飲み会」の企画に参加させてもらったり、SNSの運用を活発にしたりしたことで、遠方の消費者の方々ともやりとりできる機会がとても多くなりました。今さらかもしれませんが、これはとてもありがたいことです。今回増やすことができた手段・方法を活かして、今後も弊社の商品をPRしていくとともに、いただいた貴重なご意見や感想を酒造りにもフィードバックしていければと考えています。

――現在のSNSはバズりと炎上が表裏一体の世界といえますが、宮尾酒造さんでも今後なにか仕掛けを?
宮尾さん:いやいや(笑)。結局は、商品の質を常に高め、提供していくのがいちばんの宣伝だと思っています。
――なるほど。本日はありがとうございました。


■今回紹介したお酒
『お城山 純米吟醸生原酒』 720ml 1,900yen
『〆張鶴 純米大吟醸 PLATINUM LABEL 袋取り雫酒』
1.8L 50,600yen / 720ml 25,300yen
『〆張鶴 純米大吟醸 BLUE LABEL 袋取り雫酒』
1.8L 28,600yen / 720ml 14,300yen
『〆張鶴 純米大吟醸 RED LABEL』
1.8L 13,200yen / 720ml 6,600yen
(いずれも数量限定、PLATINUM、BLUEは蔵元直送で順次出荷予定)
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