以前ご紹介した阿賀野市のジェラートショップ「みるぱす」を取材したとき、その敷地内でピザのキッチンカーが営業をしていました。「猛牛PIZZA」という名前が気になって話しかけてみると、脱サラしたご夫婦でキッチンカーを始めたとのこと。興味がわいてきて、取材をさせてもらうことにしました。というわけで今回は、オープンまでの経緯やピザのこだわりについて、「猛牛PIZZA」をやっている齋藤さん夫婦にお話を聞いてきました。
猛牛PIZZA
齋藤 重和 Shigekazu Saitou
1983年阿賀野市生まれ。工科専門学校卒業後、建設会社に就職。その後はアパレルショップ店員、印刷会社の印刷工、大型扉を作る会社の製造工などいろいろな仕事を経験する。2020年9月にキッチンカー「猛牛PIZZA」をオープン。レザークラフトが趣味で革を使った財布やカバンを作ったりしていた。
猛牛PIZZA
齋藤 望 Nozomi Saitou
1985年五泉市生まれ。デザイン専門学校でインテリアデザインを勉強して、ハウスメーカーで外構の設計業務に就く。その後はアパレルショップで店員として働き、結婚と出産を機に退職。子育ての傍らニット会社や工務店で事務や製造の仕事をする。2020年に夫の重和さんと「猛牛PIZZA」を始める。三代目J SOUL BROTHERSとEXILEが好きでファンクラブにも入っている。
——今日はかなり寒いですね。こんな日に屋外で営業するのは大変じゃないですか?
重和さん:キッチンカーはどうしても天候に左右されるところが大きいですね。今日みたいに寒い日も大変ですし、嵐になると看板が飛ばされたりして大騒ぎです(笑)。
望さん:あと夏は夏で大変だよね。
重和さん:そうだね。夏は窯の熱でキッチンカーの中がサウナ状態になってしまって、汗だくになってしまいますね。
——キッチンカーならではの大変さですね。逆にキッチンカーならではのよさも教えてください。
重和さん:いろんな場所に出かけていけるから、行く先々でご縁がつながるのがありがたいですよね。出店先の方から別な出店先を紹介していただいたり、イベントに来たお客様から他のイベントに呼んでもらうことも多いんです。
望さん:お客様との会話がしやすいのもいいところです。ピザを買っていただくだけじゃなくて、会話を楽しんで帰ってほしいですね。「美味しかった」とか「また来るね」とかの言葉をかけていただけたときはうれしいです。
——たしかにいろんな場所でいろんなお客さんと会えますよね。主にどんなところで出店しているんですか?
重和さん:今日営業させていただいている「佐藤食肉ミートセンター」のほかに、加茂市の「古民家巣立ち」っていうコミュニティスペースで月1回営業してます。あとは阿賀野市の「みるぱす」っていうジェラートショップですね。その他にもイベント出店したりしています。出店場所はFacebookやInstagramで告知しているんですよ。
——キッチンカーを始める前はどこかのお店で働いていたんですか?
重和さん:僕は工科専門学校でインテリアの勉強をしてから、建設会社に就職して、それからいろいろな仕事を経験してきました。アパレルとか印刷とか。
望さん:私はデザイン専門学校でインテリアデザインを勉強して、ハウスメーカーやアパレルショップに勤めて、それから結婚と出産を機に退職して、その後はニット会社や工務店の仕事をしてきました。
——おふたりともインテリアの勉強してアパレルで働いてるんですね(笑)。どうしてキッチンカーでピザの販売を始めることになったんですか?
重和さん:僕の家は酪農家なんです。父親が自分のペースで仕事をしているのを見てきて、そういう仕事に憧れていました。いつかは父親とは違うかたちで「酪農」に関わった仕事をやりたいと思っていて、安田の乳製品を使って何かできないかと考えて、チーズを使ったピザを作ることを思いついたんです。
望さん:店舗で始めると開店資金が必要だから、やるんだったらキッチンカーかなって思ってたんですよね。
——でもキッチンカーだってお金かかりますよね?
重和さん:そうなんですよ。それでよくお世話になっている知り合いに相談したら、キッチンカーでピザを焼いて販売している方を紹介してくれたんです。「株式会社さいかい産業」という、ペレットストーブをはじめとしたペレット燃料や製品を扱っている会社の「開発隊長」という肩書の方でした。ペレットストーブの技術を応用したピザ釜を作って、ピザのキッチンカーでペレット燃料をPRしていたんです。
——ペレットって木材で作った燃料でしたっけ?
重和さん:はい。丸太とか樹皮とか製材時の端材とかを粉にした後、小粒の棒状に固めた固形燃料です。輸入しなければならない石油に頼らないで、国内でまかなえるエネルギーを使って地域を活性化したいっていう考え方に共感して、僕たちもペレット燃料を広めるお手伝いができればと思ったんです。たまたま、うちでもペレットストーブを使っていたんですよ。
——おお、じゃあただのキッチンカーじゃなかったんですね。
望さん:そうなんです。このキッチンカーは、ペレットに阿賀町の間伐材を使っていますし、ピザ生地も近隣の福祉作業所で作っています。福祉作業所に作業を依頼することで、障がいのある方の雇用拡大にもつなげたいということなんです。
——あの……キャリアやキッチンカーのお話を聞いていると、失礼ですけど、それまでピザを作ったことなかったんじゃないですか?
重和さん:はい。キッチンカーを受け継ぐときに隊長からピザ作りを教わりました。あとはイタリアンのシェフをやっている妹から教わったり、自分でも色々調べたりして、改良を重ねたんです。
——ピザ作りで気をつけないといけないことって、どんなことですか?
重和さん:生地の状態に気をつけるようにしていますね。そのときの気温や湿度で生地の状態って変わるんですよ。あと窯の温度にも気をつけています。温度が低いといい焼き目がつかないんですよね。窯の温度も気温に影響されやすいんです。
——そうか、屋外で作ることもあって気温や湿度が影響しやすいんですね。ではここでピザのおすすめを教えてください。
重和さん:はい。まずは看板メニューの「猛牛ピザ」です。チーズベースのピザで、ボローニャソーセージと黒オリーブを使って安田のシンボルのひとつ、牛の顔をデザインしてある限定ピザです。
——おお、店名が品名になってるんですね。ちなみに「猛牛PIZZA」っていう店名はどういう由来でつけたんですか?
重和さん:知り合いから提案していただいた店名なんです。安田の酪農にちなんだ「牛」という言葉を使って勢いやインパクトを出すために、ただの「牛」じゃなくて「猛牛」にしたらどうかって(笑)。僕たちも気に入ったので採用させてもらいました。
——な、なるほど……確かにフックの効いた店名ですね。もうひとつおすすめのピザを教えてください。
望さん:一番人気の「マルゲリータ」ですね。さっぱりしたトマトとモッツァレラチーズで作ったピザに、レモン風味のオリーブオイルをかけて仕上げます。食べやすさが人気の秘密かもしれませんね。
——最後に、これからやってみたいことを教えてください。
重和さん:僕たちは人とのご縁で救われてきたので、今度はそのご縁を、夢に向かって頑張っている人につないであげたいって思っています。キッチンカーだけじゃなく、いろんな分野の方々をつながっていきたいですね。
望さん:私たちは子育て世代の夫婦なんですけど、キッチンカーを使ったお店がやれています。同じようにキッチンカーをやってみたいと思っている人たちに向けての、モデルケースみたいになれたらいいなって思ってます。そのためにももっと頑張っていきたいですね。
普通にピザを販売しているキッチンカーだと勝手に思っていたら(……失礼!)、実は、エネルギーの国内調達や障がい者雇用の拡大といった深い思いの詰まったキッチンカーだったのでした。小雨が降ったり止んだりする寒い日でしたが、ピザを買いにくるお客さんとのご夫婦の会話はとてもあったかかったです。
猛牛PIZZA
080-5421-7475