スーパーで見かけたら必ず買うようにしている「村恭」のクレープ。レトロなパッケージに包まれた四角いクレープは、家族の大好物です。ついついクレープが気になってしまうものの、「村恭」さんは焼き菓子やジェラートのファンも多いそう。今回は代表取締役の村山さんに、お店の歴史やコロナ禍での事業転換についてお話を聞いてきました。
村恭
村山 哲志 Tetsuyuki Murakami
1973年村上市生まれ、東京育ち。専門学校卒業後、会社員を経験。結婚を機に1999年に村上市へ移り、「村恭」に入る。5代目代表取締役。根っからの釣り好き。
——東京育ちの村山さんが村上に移ってこられたのはどうしてですか?
村山さん:私は婿として「村恭」に入ったんですよ。いとこの結婚式で「村恭」の娘さんと知り合って、結婚したというわけなんです。東京で暮らしていましたけど、母の実家が村上市なので、子どもの頃からたびたび遊びに来ていました。
——5代目の社長さんだとホームページで拝見しました。
村山さん:初代、2代目はお菓子や薬などを扱う「勉強堂」というお店を営んでいたそうです。薬を扱う関係で、当時は貴重だった砂糖が手に入ったものだから、お菓子も置くようになったみたいですね。1979年から洋菓子主体となりました。その年にクレープの発売がはじまりました。「村恭」のクレープは、今年で45周年を迎えます。
——ずっと気になっていたんですが、こちらの店舗は「神林店」ですよね。本店は別にあるんですか?
村山さん:本店は老朽化して、今はないんですよ。以前は岩船の町中にありました。明治27年だったかに建てた古い建造物だったので、さすがにいろいろなところが傷んでしまって。道路の拡張工事が計画されているっていう話もあったので、2008年に「神林店」を新たに構えたんです。結局、拡張工事はされませんでしたけども(笑)
——長年の謎が解けました。本店でも同じような商品を置かれていたんですか?
村山さん:クレープやケーキ、焼き菓子といったラインナップでした。でも焼き菓子は「神林店」ほど多くなかったかな。代わりに袋菓子みたいな、問屋さんから卸してもらった商品がありましたよ。いわゆる「町のお菓子屋」といった感じのお店でしたね。
——「村恭」さんといったら、やっぱりクレープだと思うんです。
村山さん:ありがとうございます(笑)。発売当初から種類は増えましたけど、45年ずっとこの形で販売しているんですよ。マロンと小倉のクレープは最初からあった商品で、今でも人気があります。
——ずっと愛されてきたんですね。
村山さん:当時はクレープがすごく珍しかったようで、地元の方に大変喜んでいただいたそうです。私が小学生だった頃も、祖父母の家に帰省したときの定番が「村恭のクレープ」でしたね。
——どうして四角い形をしているんでしょう?
村山さん:皆さんが頭に浮かべる三角形のクレープは、1982年頃に大ヒットしました。「村恭」でクレープの販売をはじめたのはそれより前なので、開発グループの誰も「クレープは三角形」とは思っていなかったんですね。「ケーキを手で持って食べられたらいいね」ってアイディアから、フランスにクレープという薄い生地があるから、それで包んでみようということになったみたい。ほら、ガレットってあるじゃないですか。あれを見本にして作ったから四角いクレープなんですよ。
——誰かに教えたくなるマル秘エピソードですね(笑)。ところで「村恭」さんのクレープは、ここ最近スーパーでも見かけるようになりましたよね。
村山さん:ずっと店舗外での販売にも力を入れていたんですよ。お店まできてくださる方も大勢いらっしゃるんですけど、それ以外の場所でも「村恭」を知っていただきたくて、イベントなどへの出店も積極的にしていたんですね。ところがコロナ禍となって、突然そういった場がなくなってしまって。そんなタイミングでスーパーさんとお話しして、当店のクレープを卸すことになったんです。
——そういう理由でしたか。買える機会が増えて、嬉しく思っていたんです。
村山さん:今年になってイベントが復活しつつありますから、現状の生産量だと間に合わないかもしれません。どうしても手作りというか、クレープの成型は機械ではできないのでね。
——「村恭」さんのクレープは、どんなところに独自性があると思われますか?
村山さん:小倉、チョコレート、ブルーベリーなどの定番7種と期間限定3種、合わせて10種類というメニューの豊富さでしょうか。限定の味は、月に1度入れ替わります。あとの細かいところは秘密です(笑)
——それは失礼しました(笑)。ついクレープに注目してしまうんですが、お店には焼き菓子もたくさん並んでいますよね。
村山さん:焼き菓子もけっこう人気があるんですよ。メレンゲは特に「美味しい」と評判をいただいています。他のお店さんよりもリーズナブルなんじゃないかと思います。新潟市からも焼き菓子目当てで来てくださるお客さまもいますしね。
——ジェラートも気になります。
村山さん:神林店をオープンした年からジェラートの販売をはじめました。今では店の主力商品です。「朝採りエチゴヒメ」に使う苺は、近くの農家さんから収穫したてのものを朝持ってきていただくんです。ジェラートで使う分は瞬間冷凍して、年間お出しできるようにしているんですけど、苺のクレープは3月〜5月だけの限定商品です。大粒の苺をクレープに包む春だけのメニューで、その時期の圧倒的な1番人気です。
——今後はイベント出店の機会も増えてくるでしょうし、ますます「村恭」さんの名前が広まるんだろうなって期待しています。
村山さん:私としては、広げていくっていうよりは長く続けていけたらいいなと思っているんですよ。これまで何十年も存続してきたわけですから、今年、来年でお店を閉めるなんてことのないようにしなくちゃ。ちゃんとこの先も「村恭」の看板を守り続けたいですね。
村恭
村上市牧目砂山1262
tel/0254-60-1122
営業時間/10:00〜18:00
定休日/水曜日(変更の場合あり)