長岡市にある「プライオリティ・オプティシャンズ」は、お客さんひとりひとりとじっくりと向き合うために予約制をとっているという、ちょっと珍しいメガネ屋さん。メガネを通じて単に視力を上げるだけでなく、ものの見え方に関するいろんな問題を解決するサポートをしてくれるそうです。今回は店長の長谷川さんに、お店をはじめるまでの経緯や、「プライオリティ・オプティシャンズ」でメガネを作るまでの流れについて、いろいろとお話を聞いてきました。
プライオリティ・オプティシャンズ
長谷川 毅 Takeshi Hasegawa
1974年長岡市生まれ。24歳のときにメガネ屋の求人広告を見て興味を持ち、メガネの世界に入る。6年働いたのち新潟市にある老舗のメガネ屋へ移り、11年勤める。2018年に独立し、「プライオリティ・オプティシャンズ」をオープン。趣味は美味しいプリンのお店探し。
――長谷川さんは小さい頃からメガネをかけられていたんですか?
長谷川さん:僕ね、視力良いんですよ。メガネ店で働くようになってからメガネはかけていたんですけど。老眼の影響で、最近になってやっとメガネがなくてはならない実感がわくようになりました。
――じゃあ何をきっかけにメガネに興味を持つようになったんですか?
長谷川さん:もともと実家が設備屋をやっていたので、昔から「いつかは跡を継がなきゃなのかな」って漠然と思っていました。だけど実家のお店は畳むことになって、何をしたらいいか分からなくなったんですよ。いろいろな仕事をやってみて、接客にも興味はありましたし、何かお店をやってみるのも面白いかなって思ったんです。
――ふむふむ。
長谷川さん:あと自分、手先が器用で細かい作業とか得意なんですよね。それと、何かしら勉強がしたくって。そういう要素を組み合わせたときに、メガネ屋の求人広告を見て、「この仕事だったら全部が叶うんじゃないか」「面白そうだな」って思ったのが最初のきっかけですね。
――たまたまいろんな条件が合ったのが、メガネの仕事だったわけですね。
長谷川さん:そうですね。自分の中でつながったものがあったんです。
――メガネ屋さんで働くようになってみてどうでしたか?
長谷川さん:僕はメガネをかけたことがなかったので、メガネをかけている人の気持ちがわからなかったんです。それではどんなにメガネを提案したって相手には伝わらないわけですよ。その溝を埋めるために、一生懸命勉強しました。メガネがどんなものなのかも分からない状態だったから、必死でしたね。そうしているうちに、社会に求められているこの仕事の責任とか重大さに気づいて、使命感が生まれるようになりました。
――メガネ屋さんの使命って……?
長谷川さん:メガネ屋って「商売」じゃなくて、「人の生活を支える役割」を担っていると思っています。メガネをかけてもらうことで見えないものが見えるようになったり、ものを見る上でその人が抱えている問題が改善されたりすれば、生活がハッピーになるんですよ。
――確かにそうですね。
長谷川さん:逆に言えば、もし変なメガネを使ってしまったら、「もともと良いパフォーマンスを持っているのに発揮されない」ってことにもなりかねない。だから、「僕たちが提供するメガネひとつで、その人の人生が変わってしまうかもしれない」と思ったら責任重大ですよ。そうするとメガネを「売る」ってことにすごく違和感があったんです。
――メガネ屋さんで長年働いていたからこそ、そう感じるようになったんでしょうか。
長谷川さん:そうですね。最初に働いたお店は量販店だったんですけど、そこで求められるのは売上の数字ですよね。いっぱい売った方が偉いし、お客さんにいいものを買わせるために説得するテクニックが褒められるわけです。その次に働いた老舗のメガネ屋さんは忙しいお店だったので、とにかく回すことが大事でした。だけど個人の困りごとに合わせてメガネを提案していかなければいけないとしたら、「販売」っていうスタイルであるべきじゃないんだろうなって感じました。新しく自分が思い描くお店をはじめるしかないって思ったんです。
――「プライオリティ・オプティシャンズ」でメガネを注文するときの一連の流れを教えてもらえますか?
長谷川さん:まずはお客さんがどういう生活をしているのか、どういうお仕事をしていてどういう作業をしているかとか、お話を聞かせてもらいます。それから目の特性を調べて問題点を洗い出して、実際にレンズを使ったりしながら細かい測定をします。どうすればその問題を改善できるのか考えた上で、仮のレンズで解決できるか確認してもらって、OKであればそれに適したレンズ選びをします。レンズもたくさん種類があって、うちでは500種類以上用意しています。
――レンズだけでそんなに種類があるんですね!
長谷川さん:全部は使っていないですけどね。人によって光に対する感受性だとかも違うので、光を強く感じる方にはそれを制御するためのレンズも組み合わせています。
――検査でそんなことも分かるんですか?
長谷川さん:県内に数台にしかないような最新の機械を導入しているんです。お客さんに納得していただきながらメガネ作りをするためにも、その人の目の特性をよく調べることが大切です。で、レンズを選んだあとはフレーム選びですね。
――なるほど。フレーム選びは最後なんですね。
長谷川さん:その人全体をキャンバスとして見たときに、いちばん素晴らしく映るフレームを探して、お客さんにかけてもらって、喜んでくれたらそれに決めるっていう流れです。その後はメガネが動かないように調整して、瞳の位置を取って、それに合わせてレンズを設計してメーカーに発注します。届いたレンズをフレームの中に設定してお渡しします。最後に、実際に見え方が想定通りになっているのかをチェックして終わりです。お渡しした後も「1カ月に1回くらいは顔を出してください」と言っています。毎日使っていれば何かしらありますからね。
――想像していた以上に、ひとりひとりのお客さんにじっくり向き合って対応されているんですね。来店されるのはどういった方が多いんですか?
長谷川さん:メガネをかけていて「見えているけどなんか疲れる」とか「距離感が掴めなくてクラクラする」とか。そういう「ものを見る」っていう、視覚の機能の中で不調を感じた方が「なんとかなりませんか」ってうちに相談に来られることが多いですね。
――お客さんと関わる中で嬉しかったことはありますか?
長谷川さん:「今までずっと悩んでいたものが解決した」とか言ってもらえたときに「メガネの力ってすごいな」って思うのと同時に、「その人の生活を良くすることができた」って感じられたのはすごく嬉しかったですね。
――最後に、長谷川さんの今後の目標を教えてください。
長谷川さん:今は予約優先で、空いていればふらっと来た方も対応しているんですけど、完全予約制にしたいなと思っています。評価をいただいてお客さんが増えていくようであれば、「一人ひとりに対してしっかりとメガネを提供していく」っていう芯がブレないように、制限する必要が出てくるかもしれないです。お店を大きくするつもりはないので、お客さんに対してできることを、もっともっと濃密にやっていきたい。とにかく最先端でいたいので、今後メガネに関する新しいトピックが出てくればすぐに対応しようと思っています。機械もノウハウも、常に新しいものを取り入れていきたいですね。
プライオリティ・オプティシャンズ
新潟県長岡市寺島町740
10:00-20:00
定休日:火曜(他不定休あり)