最近、若い女性や健康志向の人のあいだで大人気のベーグル。五泉市にも地元で評判のベーグル屋さんがあるのをご存じでしょうか。その名も「Re Ri Bagel」。武藤さんご夫婦がふたりで営む小さなお店です。今回は店長である奥様の杏里さんに、ベーグルのお店をはじめるまでの経緯やこだわりについて、いろいろと聞いてきました。
Re Ri Bagel
武藤 杏里 Anri Muto
1978年神奈川県生まれ。大学卒業後、東京で事務の仕事を経験し、10年前にご主人の地元である五泉市へ移住。友人からイベントへの出店を誘われたことをきっかけに、ベーグルの製造と販売をはじめる。8年前、現在の場所で「Re Ri Bagel」をオープン。趣味は裁縫で、お店で身に着けているエプロンも手作り。
――杏里さんは神奈川県のご出身だそうですね。五泉に来られたのはいつですか?
杏里さん: 10年前ですね。それまでは主人と一緒に東京で生活していたんですけど、主人が五泉の出身で、「地元に帰るけど」って話になったので、私もついて行くことにしました。
――はじめての地方での生活に不安はなかったですか?
杏里さん:うちの父が長野の出身なので、中学から高校までは私も長野で生活していたんです。でも本当は田舎生活が嫌で(笑)。だから大学では東京に出たんですけど、今度は逆に都会に疲れちゃって、田舎に行きたいなって思っていたところだったんです。
――嬉しいタイミングでの移住だったわけですね。パン作りをはじめたきっかけはなんだったんでしょうか?
杏里さん:東京では事務の仕事をしていたので、五泉に行く前に何か習い事をしたいなと思って、パン教室に通ったのがきっかけです。パンはもともと好きだったんですけど、自分の家でも作ってみたいなと思って。
――じゃあベーグル作りの知識はそこで学ばれたのですか?
杏里さん:授業の一環で「今日はベーグルを作ります」っていう日もあったんですけど、でもパン教室で習ったのはそれくらいで、あとは独学ですね。パン屋さんで働いた経験もないので、最初はぜんぜん数も種類も作れなくて。今やっと作れるようになったかな。ベーグルの中の具材も、見よう見まねで作っているんですけど、やってみてから「ああ、結構すごいことしてるんだな」と思いました(笑)
――「Re Ri Bagel」をはじめることになったのは?
杏里さん:五泉に来てから、カフェをやっている友達と知り合ったんです。そのカフェでイベントをやるから、出店してくれるパン屋さんを探しているって聞いて、私も漠然と「パン屋さん、やってみたいな」っていう気持ちがあったので、お店を出すことになりました。
――パン教室ではいろんなパンの作り方を勉強されたと思うんですけど、そのなかでベーグルのお店をはじめることにしたのは、やっぱりベーグルが好きだったからですか?
杏里さん: パン屋さんって、種類がたくさんあったほうがいいなとは思うんですけど、小さな設備で作るとなると、発酵とか焼く時間とかを考えると難しい。大きい食パンやバゲットも作れない……。けどベーグルなら、同じサイクルで作れるし、具材とか生地を変えればいろんな種類ができるしいいかなっていうので、やってみたんです。苦肉の策でやってみたらそれがちょっとずつ良くなったので、ちゃんと設備を置ける場所を探すことになりました。だから、ベーグルがすごい好きではじめたってわけではないんです(笑)
――そうして見つけたのがこの場所だったわけですね。
杏里さん:そうです。最初はイベント出店だけでやるつもりだったので、お店というよりも製造場所を探していました。そのときちょうど、整骨院の先生が「いい場所が空いてるよ」って教えてくれたんです。このお店の後ろに住宅があるんですけど、住宅とお店が隣あっていて、しかも前の家と家賃が一緒だったんですよね。「お店をやるつもりはないんだけどなあ」って思って見に来たんですけど、家賃も安いし、入ることにしました。実際にはじめてみたら、お客さんも来やすいし、いい場所にあるなって。ラッキーでした(笑)
――場所が決まって、それからご主人も一緒にお店をやるようになったんですか?
杏里さん:最初はお手伝いでやってもらっていたんですけど、しばらくしてから「忙しそうだから手伝うよ」って言ってくれて。今はもう全部作れるようになりましたね。
――素敵なご夫婦ですね。コロナが落ち着いたらまたイベントでの販売も再開するんですか?
杏里さん:コロナ禍になる前までは、日曜は必ずイベントに出ていました。だけどイベントがなくなって、日曜もお店を開けるようにしたら忙しくなったので、これからはお店を中心にまわしていこうかなって思っています。イベントはイベントで宣伝活動にもなったので、そういう意味でやっていてよかったとは思いますね。
――いろんな種類のベーグルがありますね。人気なのはどれですか?
杏里さん:「くるみあんこクリームチーズ」が定番で人気ですね。あと「スイートポテト」は今の季節の限定なのでおすすめです。
――「Re Ri Bagel」のベーグルは、どんなことにこだわって作っているんでしょうか。
杏里さん:五泉で農家さんの知り合いが増えてきたので、そこで作られたものを使うようにしています。「スイートポテト」にも、「農園八兵衛」さんっていう、自然栽培されている農家さんが作った芋を使っていますね。材料は、酵母は自家製のレーズン酵母なのと、小麦粉は国産のものを使っています。酵母や小麦粉ひとつでいろいろ変わっちゃうので、工夫しています。
――そもそもなんですけど、ベーグルと他のパンの違いってどんなところなんでしょうか?
杏里さん:普通のパンだと、発酵したらすぐオーブンに入れるんですけど、ベーグルは焼く前に、茹でる工程が入ります。そうすると、余計な粉が落ちてキュッと締まるし、もちもちになって1個でも満腹感が出ます。あと、粉、砂糖、塩、酵母、イーストが基本の材料なので、油とか卵が入ってないんですよ。だからヘルシーだとは言われますね。
――茹でているから、あんなにもちもちした食感になるんですね。
杏里さん:ただ、茹でる作業で忙しいので、「他のパンも作りたい」と思ってもなかなか作れないんですよ。この「おうちぱん」だけは生地を茹でずにそのまま焼いているんですけど、ベーグルとは違う温度で焼かないとだし、発酵時間もかかるので、木曜限定の販売にしちゃってます。
――ところでこの猫ちゃんの巾着、すごくかわいいですね!
杏里さん:店内で飾っている絵もそうなんですけど、この猫のイラストは夫が描いたものなんです。毎年デザインを変えて巾着とTシャツを作って、新潟動物ネットワークさんに売り上げの一部を寄付しています。
――おふたりとも動物が好きなんですか?
杏里さん:このあたりは一時期、野良猫が多くて、何回か保護をしていました。そういうのもあって、活動に貢献できればいいなと思ったんです。
――これまでお店をやってきて嬉しかったのはどんなことですか?
杏里さん:最近、いつも買いに来てくれていた近くの高校の子が、「卒業しちゃうから」って手紙を持って来てくれて。年に1回くらい、そういうことがあります。去年も、外国人の英語の先生が「転勤しちゃうから」って手紙をくれました。そこまで会話もしていないんですけど、なんか好きでいてくれたみたいで。お客さんと一対一で話す機会もあんまりないので、嬉しいですね。
――そうなんですね。お手紙は「このお店のファンです!」みたいな内容ですか?
杏里さん:そんな感じですね。イベント中心で動いていたときは、五泉では活動していなかったし、たまたまこの場所があったからはじめたことなので、「五泉にお店を構えている」って実感があんまりなかったんです。だけどお店をやっていると徐々に地域の人たちが来てくれるようになって、なんだか不思議だし、ありがたいです。
――最後に、今後の目標を教えてください。
杏里さん:場所は変わるかもしれないですけど、自分たちが作って直接売るっていう、今の状態を続けていきたいです。お店を大きくしたいっていう気持ちはあんまりなくて、常にお客さんと対話していけたらいいなって思います。あとは、季節や年によって、材料の出来具合も変わるので、そういうのは常に気にして、自分たちが美味しいと思えるものを作っていきたいです。
「Re Ri Bagel」のベーグルはそのまま食べるのはもちろん、好きな具材を挟んだり、トーストしたりしても美味しいんだとか。冷凍保存もできるそうなので、五泉に行った際にいろんな種類を買っておいて、毎日1個ずつ食べるというのもワクワクして楽しいかもしれませんね。
Re Ri Bagel
新潟県五泉市旭7-50
11:00-18:00(売り切れ次第終了)
月-水曜定休