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人との繋がりを大切にしつつ、丁寧な仕事を心掛ける「四季彩食 こし路」。

新発田にある「四季彩食 こし路」は今年で15年目を迎えました。「危機を乗り越えながら店を続けてこられたのは、常連のお客様たちのおかげ」と、店主の土谷さんは仕込みをしながら語ってくれました。

 

四季彩食 こし路

土谷 智彦 Tomohiko Tsuchiya

1977年新発田市生まれ。東京や新潟で和食の修業を積み、2009年に新発田市で「四季彩食 こし路」をオープンする。勉強と趣味を兼ねていろいろな飲食店を飲み歩いている。

 

料理の原点は、母親が喜んでくれたミートソース。

——土谷さんが料理に興味を持ったきっかけはなんだったんですか?

土谷さん:小学生のときに家庭科の授業で教わったミートソースを家族に作ってあげたら、母親がとても喜んでくれたんです。それがすっごく嬉しくて、料理に興味を持つようになったんですよ。うちは両親が共働きだったので、半日授業の土曜には自分で昼食を作っていて、そうめんを茹でたり天ぷらを揚げたりしていました。

 

——人の喜ぶ姿が料理の原点になっているんですね。今までどんなところで料理の腕を磨いてこられたんでしょうか?

土谷さん:東京にある重工業メーカーの接待施設や、和食店、割烹で修業を重ねてきました。

 

——印象に残っている修業中のエピソードはありますか?

土谷さん:最後に働いていた代々木の割烹では、15人ほどの職人が働いていたんです。親方をはじめ、先輩達の教えてくれる料理方法がそれぞれ違うので、誰に従えばいいのか戸惑いました(笑)。結局、それぞれのいいとこ取りをすることで、料理の腕が成長したような気がします。

 

 

——それは大変でしたね(笑)

土谷さん:結果的にはいろいろな方法を勉強できたんですけどね(笑)。洗い場をやっているときにありがたかったのは、先輩が鍋の中身をちょっとだけ残したまま置いておいてくれるんです。それを洗う前に味見させてもらうことで店の味を覚えました。今でも自分の味の基準にしています。

 

——先輩の粋な計らいだったんですね。新潟に帰ってきたのは、どうしてなんですか?

土谷さん:以前から地元の新発田で自分の店をはじめたいと思っていたので、30歳を迎える前に帰ってきました。でも地元の飲食業界には馴染みがなかったので、勉強のために海鮮料理のお店でしばらく修業させてもらったんです。そこの社長にいろいろと助けていただいたこともあって、32歳で「四季彩食 こし路」を開業することができました。

 

いろいろなお客さんとの触れ合いを大切にする。

——「こし路」という店名には、どんな思いが込められているんですか?

土谷さん:東京の修業時代に「越路県人会」という、新潟出身の料理人による会に所属していたんです。その頃の気持ちを忘れないように、「越路」という名前を使わせてもらいました。ただ漢字だと固くて敷居の高さを感じてしまうので、ひらがなを使って柔らかいイメージの「こし路」にしたんです。

 

 

——ひらがなにしただけで、かなり印象も変わりますね。どんなお店として開業したんでしょうか?

土谷さん:最初は懐石料理のお店にしたかったんですけど、それだけでは難しいかなと思ったので、認知度を上げるために昼定食もやりました。今は居酒屋のような感じで夜だけ営業しています。

 

——はじめたばかりの頃はやはり大変でしたか?

土谷さん:店舗を建てた支払いもあるのに、まったくお客様が来なくて大変でしたね。でもお客様がお客様を呼んでくれて、3年目くらいからようやく軌道に乗ってきました。つくづくお客様に支えてもらいながら続けてこられたと思っています。

 

——お客さんにはどんな人が多いんですか?

土谷さん:さまざまな職業の方がいらっしゃいますよ。会社の社長もいれば、弁護士やお医者さんもいます。普通はなかなか聞くことができないお話を、カウンター越しに聞くことができて勉強になりますね。ちゃっかり法律や病気について、個人的な相談をしちゃうこともあります(笑)

 

 

——確かに飲食店はいろいろな業種の人が利用しますよね。

土谷さん:お客様のなかには妻の主治医の先生もいて、会計時に血圧を測ってくれたりします(笑)。大工のお客様は「お前の店は木が少ないから運気が上がらないんだ」といって、彫刻された飾り欄間を持ってきてくれました。

 

——お客さん達から応援されているのを感じます。

土谷さん:普段からお客様とのコミュニケーションを心掛けていますね。最近はセルフオーダーのタッチパネルを使うお店も多いですけど、うちはできるだけお客様と会話する機会を増やしたいと思っているんです。そのおかげもあって僕だけではなく、妻やスタッフもお客様から可愛がっていただいています。

 

カウンターに卓上調味料がない理由。

——やけにすっきりしていると思ったら、カウンターの上に調味料がないんですね。

土谷さん:僕は料理に白醤油を使うことが多いんですけど、お客様が色だけ見て味見もしないで醤油をドボドボ入れてしまうことが多くて、めちゃめちゃショックを受けたんですよ(笑)。まずはそのまま味わってみてほしいので、カウンターに卓上調味料を置かないようにしました。

 

——新潟の人たちは、見た目も味も濃い料理に慣れているのかもしれませんね(笑)。料理を作る上でこだわっていることがあったら教えてください。

土谷さん:当たり前のことだとは思うんですけど、どんな料理でも必ず出汁をとってから作るようにしています。醤油も料理によって4種類を使い分けていて、ときにはブレンドして使っています。調味料は修業時代から使い慣れているものを変わらずに使っています。あとはなるべく添加物を使わないとか、食材は市場に足を運んで自分で選んでくるとか、温かい料理は温かく、冷たい料理は冷たくしてお出しするとか、料理人としては当たり前のことばかりです。でも、その当たり前のことをしっかりとやることが大事だと思っています。市場に行って業者の方から食材についてのお話を伺うのは、新しい料理へのヒントにもなるんですよ。

 

 

——お品書きを見ると魚料理が多いみたいですね。

土谷さん:僕は魚料理が得意なので、どうしても多くなりますね。あまり家庭で食べる機会のない、ちょっと珍しい魚をお出しするように心掛けています。珍しい魚がお客様と会話するきっかけになることも多いんですよ。

 

 

——さて、今後はどんな料理を作っていきたいと思いますか?

土谷さん:お客様からの要望が多い、肉料理にも力を入れていきたいんです。そのためにスチームコンベクションオーブンを入れたので、ピザも作れるようになりました。

 

——さらにメニューの幅が広がるのは楽しみですね。

土谷さん:これからもお客様とのコミュニケーションを大切にして、「また来たい」と思っていただけるようなお店でありたいですね。

 

 

 

四季彩食 こし路

新発田市富塚町3-13-320-4

0254-24-8155

17:00-23:00

水曜休

※掲載から期間が空いた店舗は移転、閉店している場合があります。ご了承ください。
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