国道113号沿い、「三代目麺屋 小松家」の跡地に昨年オープンした「食堂ねこや」。朝早くから営業している、夜勤明けの人たちに嬉しい食堂です。「小松屋」から引き継いだ油そばのほか、ローストビーフ丼や油淋鶏定食など、さまざまな料理を楽しめます。店主の渡邉さんに、朝早くからお店を開けている理由や提供しているメニューについて聞いてきました。
食堂ねこや
渡邉 薫平 Kunpei Watanabe
1992年新潟市生まれ。新潟調理師専門学校を卒業後、「新潟グランドホテル」に就職。退職後はローストビーフの店やバーなど、さまざまなジャンルの飲食店で働き、総料理長や店長兼シェフを経験。2023年9月に独立し「食堂ねこや」をオープン。
――渡邉さんが「食堂ねこや」をはじめるまでのことを教えてください。
渡邉さん:新潟調理師専門学校に1年通って、和食のコースで学びました。卒業してからは「新潟グランドホテル」に就職したんですけど、身体を壊して9ヶ月くらいで辞めちゃって。そのときに和食以外のジャンルもやってみたいなと思っていろんな店で働いて、イタリアンとかフレンチ、中華、あとは寿司とか蕎麦、エスニック料理もやりましたね。いろいろと作れるようになって「ああ、すごい楽しいな」と思いました。
――料理が本当にお好きなんですね。
渡邉さん:いろんなジャンルの調理技術とか知識をひとつの料理にまとめて、自分の料理を作ってみたいなっていう目標が最初からあったんです。だからいろいろな店を転々としていましたね。
――そもそも料理を好きになったきっかけってなんだったんですか?
渡邉さん:うちは母子家庭だったので、母親が料理している姿をずっと見ていたのもあって「料理をしてみたいな」って思うようになりました。母親に教わって料理をしているうちに、自分専用の包丁を買ってもらったりして。それで高校卒業する頃になって「料理が好きだから料理の道にでも行こうかな」と軽い気持ちで料理学校に入ったんです。そこからもう14年ぐらいは、ほぼほぼずっと料理の業界にいますね。
――独立される直前はどんなお店で働かれていたんですか?
渡邉さん:独立前はバーで働いていたんですよ。夜の業界だったので、夜9時から朝方5時とかまで料理をしていましたね。お客さんのおつまみを作るような感じです。そのときの経験がこの店をオープンしたきっかけにもなるんです。
――どんなきっかけがあったんでしょう?
渡邉さん:夜の仕事って、終わるのがだいたい朝の7時とかだと思うんですよ。でもその時間帯にご飯を食べに行こうと思うと、意外と店がないんですよね。あったとしてもチェーン店で、どうしても飽きるんです。自分自身「飽きるな〜」と思っていたのもあって、朝早くからスタートして、昼過ぎぐらいには閉めちゃうような店をやったら面白そうかなと。
――ご自身が「あったらいいな」っていうお店をかたちにされたわけですね。店内も猫雑貨だらけですけど「食堂ねこや」という店名にはどういう由来が?
渡邉さん:うちの妻と考えまして。お互い猫好きだったというのもあるんですけど、自分の好きなアニメの中に「異世界食堂」っていうのがあって、そのアニメに出てくるお店の名前が、「洋食のねこや」なんですよ。それで「これいいね」って、「食堂にして『食堂ねこや』にしようよ」って。そんなノリでではじめた店です。
――お料理についても教えてください。どんなメニューがあるんですか?
渡邉さん:いろいろなジャンルのメニューがあります。メインは「ローストビーフ」。前の職場でも作っていたし、見た目が映えますからね。あとは和食をやっていた経験から「角煮丼」。「タレカツ」は豚のヒレ肉だとどうしてもコストがかかって価格が上がってしまうので、鶏を使ってコストを下げています。ある程度安く提供するようにしているんです。
――お手頃な価格にもこだわっているんですね。
渡邉さん:あとはこの場所、前は「小松屋」さんっていう油そばのお店が入っていて、そのレシピを教えてもらえたのでうちでも油そばを出しています。あと「ねこやそば」っていうのは、バー時代に作っていたラーメンを昼間向けに作り変えたものなんです。他にも定食とか、週替りでキーマカレー、グリーンカレー、洋食とか中華も……この周辺で食べられないようなメニューを作るように意識しています。
――メニューにある、「ローストビーフサンド」っていうのは?
渡邉さん:パンの中心を割って、そこにローストビーフを巻き付けて、中にサラダとクリームチーズの味噌漬けの燻製、自家製のピクルスを挟んでいます。その上からデザートによく使われる「レモンカード」をアレンジした「塩レモンカード」をかけて、甘じょっぱくてさっぱりした、くどくない味付けになるように作っています。
――なんだかおしゃれな組み合わせですね。メニュー全体の味付けで、気をつけていることはありますか?
渡邉さん:美味しくても食べたときに尖った感じがあると、口の中に残るんですよね。その尖った部分をできるだけ丸めるというか(笑)。パンチ力はあるけど、嫌味のない、口当たりのいい味になるようにしています。
――独立されてから初めて気づいたことってありましたか?
渡邉さん:雇われているときは、お客さんが来てくれることが当たり前になっていたんです。でもこうやって自分の店を持ってみて、その店のブランドがあるからお客さんが来てくれていたのであって、お客さんが来てくれることって、ぜんぜん当たり前のことじゃないなって気づきましたね。
――お客さんがお店に来てくれることのありがたさに、改めて気づいたんですね。
渡邉さん:「ねこや」っていうブランドを自分ひとりで、ゼロから作り上げていかないといけないので、本当に大変だなと思いました。まずは小さなところから積み上げていきたいですね。
食堂ねこや
新潟市中央区三和町6-11