新潟の家具屋さんといえば、誰もが名前を挙げる「S.H.S」。でもお店に足を運んでみると分かるように、家具屋という枠に捉われず、レストランやアパレル、雑貨など、いろいろなショップインショップが敷地や施設の中に立ち並んでいます。今回は、社長を務める城丸さんに「S.H.S」が提案する「暮らし」についてお話を聞いてきました。
S.H.S
城丸 学 Manabu Shiromaru
1980年新潟市生まれ。短大卒業後、家業を手伝うために「株式会社ツールボックス」に入社。2020年に代表取締役社長に就任。作ることが好きで、高校時代にはデニムから鞄を自作したほど。休日でも倉庫で作業に没頭。
――「S.H.S」さんって、レストランや寝具店、アパレル、雑貨、花屋など、いろんなショップが入っていますよね。いったい、何屋さんなんですか?
城丸さん:家具屋です(笑)。ただ、元は壊れた物を直して販売しているリサイクル店だったから、「家具を売らなければいけない」という考えには固執していません。それに、僕自身はめちゃくちゃ家具が好きって訳でもないので(笑)
――え? 城丸さん、それって家具屋としていいんですか(笑)
城丸さん:もちろん、店で働いているスタッフは、インテリアやプロダクトが大好きで働いている人たちばかりです。でも、僕は昔から家具やインテリアが身近な存在だったから、あんまり特別感がないんですよね。洋服も好きだし、車も好きだし。そんな好きなモノのひとつというか。
――なるほど。身近過ぎて、当たり前の存在ってことなんですね。ちなみに、どうして家具屋さんの中にいろんなショップが存在しているんですか?
城丸さん:この場所(鳥屋野)にお店を出したのは、今から20年前です。オープン当初は賑わっていたけど、3年も経てば客足は遠のいていくもので……。それで改めて来てもらったお客さまに何を提供しないといけないかをじっくり考えたんですよ。その答えが、「ゆっくりとした時間」だったんです。
――つまり、来てくれた人たちにゆっくりと過ごしてもらうために、たくさんのお店が入っていると?
城丸さん:はい。それではじめに「CAVE D’OCCI(カーブドッチ)」の方に「レストランを一緒にやっていただけませんか?」ってお願いしたんです。そこから、ひとつ屋根の下にいろんなお店があったらと、年々いろんなお店が増えていって。計画を立てて進んだわけじゃなくて、偶然が重なって今に至っています。
――いろんなお店が集まっていると、お客さまは楽しいと思います。でも、家具を売るには……実際、どうなんですか?
城丸さん:人生で家具を購入するタイミングって、大きく分けると「結婚するとき」「家族が増える、新しい生活になるとき」「子どもが巣立って夫婦だけの生活に戻るとき」の3回あるんです。そのそれぞれに、ショップインショップを使ってもらえるんですよ。だから、指輪を買う、子ども服を選ぶ、住宅の相談をする、夫婦で食事を楽しむ……、それがみんな家具につながるんです。
――あー、なるほど。暮らしの中のタイミングで、それぞれに必要とされるものの後から家具がついてくるんですね。
城丸さん:そうなんです。だからいろんなタイミングで「S.H.S」に来て、ついでに家具を見てもらえることが大事なんですよね。で、必要なときにうちの家具が選ばれればいいかなって。
――「さぁ、今日は家具を買いに行こう」って意気込んで探すより、普段の暮らしの中で「このソファいいね」「こういうテーブルでご飯を食べたいね」って、「いいな」を膨らませているほうが良い出会いがありそうですもんね。
城丸さん:家具って高価だから、失敗したくないじゃないですか。日頃から「こんなのいいな」と思いながら見て、試して、スタッフと話して、いざ購入するタイミングで納得してもらえれば、きっと自分たちの暮らしに合った家具にめぐり会うと思うんです。
――「見たら買わないといけないプレッシャー」ってあるじゃないですか(笑)。そう言ってもらえると、気兼ねなく家具を見て歩けますね。
城丸さん:現状の暮らしで「困っている」「ここを良くしたい」そんなことを、膝を突き合わせて会話することで、買ったときに「相談してきてよかったな」につながるのが、「S.H.S」の在り方だと思っています。だから気兼ねなく家具を見たり、触れたりしてほしいですし、気軽に私たちスタッフにも話しかけて欲しいんですよね。私たちからも声をかけさせてもらうので。
――ぷらぷらと買い物ついでに家具の相談ができて、いざというときに頼りになる。安心した家具選びができそうです。
城丸さん:食事をしたり洋服を買ったりするのは、みんな日頃から経験しています。でも、家と同じで家具を買うのって回数は限られているんです。それなら現物を見て、試して納得できる暮らしを用意してもらいたいんですよ。
――「S.H.S」という存在はもうとっくに認知され、確立されている気もしますが、目指しているお店作りってあるんですか?
城丸さん:常に目指しているのは「毎日のより良い」です。気持ちが通じ合わないと、家具を買っても「良かったな」にはならないから、私たちは店を構える意味、接客する意味をよく考えながら、居心地の良い空間を作っていきたいと思っています。そして、古いものを直して売ってきた経験から、古いものには自分たちの知らない背景やバックボーンがあることをきちんと伝えられるように、今の新しいものも何十年後かにそんな存在にできるように、納得できる家具選びのお手伝いをしていけたらと思っています。
S.H.S
新潟県新潟市中央区女池南3-5-10
025-290-8220