扉の先の非日常で楽しむ、食体験。
六日町にある「Switch House」

食べる

2026.04.01

text by Ayaka Honma

六日町の商店街にある「Switch House」。お店に入ると雑貨や本、ステレオレコードプレイヤーなどで彩られたおしゃれな空間が広がります。ここでは、パスタやカレーなど、思わず写真を取りたくなる見た目もきれいなお料理を楽しむことができます。「喋る人」こと店主のマルヤマさんに、お店をはじめたきっかけや、ちょっと踏み込んだマルヤマさんの「生き方」のことなど、お話を聞いてきました。

Interview

マルヤマ トシキ

Toshiki Maruyama(Switch House)

1980年静岡県出身。高校卒業後、会社員として働く。28歳のときに新潟に住みはじめ、十日町市内の飲食店で働きはじめる。その後独立を決意し、2025年の4月に六日町で「Switch House」をオープンする。27歳まではバンド活動もしていたそう。

自分の好きなことを頑張りたい。
マルヤマさんが、お店を作るまで。

――今日はよろしくお願いします。マルヤマさんは、静岡県のご出身なんですね。

マルヤマさん:そうなんです。新潟に住みはじめる前までは、地元で会社員として働いていました。28歳のとき、奥さんの地元の十日町に移り住むことになったんです。「せっかくなら何か新しいことをしたいな」と思って、飲食店をいくつか経営している会社で働きはじめたました。

 

――新しくはじめた飲食のお仕事、どうでしたか?

マルヤマさん:最初はホールの仕事からはじめて、そのうち、新しく立ち上げるレストランのディスプレイやメニュー作成を任せてもらえることになったんです。そのときは12月のオープンに向けて、10月くらいから動きはじめて。

 

――かなり短い期間で準備しなければいけなかったんですね。

マルヤマさん:でも、それが楽しかったんですよ。自分でいろいろ決めて、お店を作っていくのが面白かったんだと思います。オープンしてからは、お店の経営に関わる数字の管理や、人の管理もするようになって。ただ、最初は格好つけてなんとか頑張っていたんですけど、続けていくうちに苦しくなって、「いつか限界が来るかもしれない」 って思うようになったんです。

 

――お店の経営や管理は、骨の折れる仕事だと思います。

マルヤマさん:大変さももちろん感じていたんですが、そもそも好きじゃないことを頑張るのが苦手だったのかもしれません。僕はきっと、ひとりで自由に好きなことをやっているのがすごく好きで、「やらなきゃ、頑張らなきゃ」って思いながらコツコツ努力するのが苦手だっていうのに気づいて。それなら思い切って独立しようって思ったんです。

 

――自分の好きなことをするために、独立することを選んだんですね。

マルヤマさん:自分のお店を出したら数字の管理はしないといけないですが、自分の好きなことを好きなだけできると思って。16年働いた会社をやめた後、1年後にお店を出すっていう目標に向けて、準備をはじめました。

 

――具体的には、どんな準備をされたんでしょう。

マルヤマさん:まず、自分が会社員時代に得意だったことを振り返ってみたんです。そうすると、お店のメニューとか、デザイン系の仕事が好きだったし、褒められていたなと思って。会社の人にインタビューして、社内報を作ったこともありましたね。今はお店のメニューを作ったり、Instagramの投稿をしたりもしています。

 

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日常から、非日常へ。
ここは、そのスイッチになるお店。

――お店の中に入ると、のどかな外の雰囲気からは想像できない、おしゃれで独特な雰囲気の空間が広がります。

マルヤマさん:お店の椅子やテーブルたちは、準備期間に買い集めましたね。「こんな感じの雰囲気にしよう」みたいな狙ったイメージはあんまりなくて、自分の好きなものを感覚的に置いているんです。ここ、元は居酒屋さんで、窓は障子戸でしたし、小上がりの和室もあったんです。それも洋風にしたくて障子戸にフィルムを貼ったり、床を張り替えてもらったりして、お店をつくっていきました。

 

――マルヤマさん自ら、DIYもされたそうですね。

マルヤマさん:お店の内装のことも、やっぱり自分でやってみたいなって思って。お店に残されていたテーブルの脚を変えてみたり、カウンターの壁に廃材を組み合わせてつけてみたり、壁の色を選びました。お店のテーブルや椅子がバラバラなのには、実は意味があるんですよ。

 

――どんな意味なのか、ぜひ聞きたいです。

マルヤマさん:ここは、非現実的な空間にしたかったんです。これはお店の名前の由来にもなっているんですけど、日常から非日常へのスイッチになるようなお店にしたくて。美味しいご飯を食べるときって、日常を忘れることができると思うんです。お店の雰囲気からも、日常から離れてリラックスしてもらいたいと思って、椅子とテーブルをあえてバラバラにしてみました。

 

――それを感覚でできるって、すごいですね。ところで、お店の奥には雑貨を販売しているスペースもありますね。

マルヤマさん:僕と調理のスタッフだけでお店が回せるようにしたかったんですけど、このお店はそれには少し広くて。お客さまに待ってもらっている間に見てもらえるように雑貨を販売するスペースを作ることにしました。これも、僕の感覚で集めた雑貨たちです。

 

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「喋る人」と「作る人」が考える、
来るたびに楽しめる、料理たち。

――ところで、マルヤマさんはご自身のことを「喋る人」と呼んでいます。

マルヤマさん:そうそう、僕が「喋る人」で調理をするのが「作る人」、言葉のままですね(笑)。「作る人」とは、前の職場で一緒に働いていて。いいなと思うものがちょっと似ていて、僕がいろいろ言ったときも「そうだね」ってさらっと返すけど、僕の要望をかたちにしてくれて。たまに喧嘩もしますけど(笑)、 理解してくれている人だなって思ってますね。

 

――そんな「作る人」のお料理は、どんなものがあるのでしょう。

マルヤマさん:実は、これもあまり決めていなくて(笑)。美味しそうだなって思ったものをメニューにしています。洋食というのはある程度固まっていますが、看板メニューとかはないですね。「こういうのいいな」とか「こんなメニューをいれたいな」みたいなのを作ってみて、美味しかったら提供しよう、みたいな。

 

――ここも感覚だったとは(笑)

マルヤマさん:「看板メニューがあったほうがいいよ」って言われるんですけど、いざはじめてみたら、新しいメニューを楽しみに来てくださるお客さまがたくさん来てくれるんです。何回も来てくださる方が、新しいメニューを試して、「美味しかったよ」って言ってくれると、これはこれでよいんだって思えていますね。

 

――思わず写真を撮りたくなってしまう、お料理の見た目も魅力的です。

マルヤマさん:うちのお客さまは98%くらい女性なんじゃないかっていうくらい、女性のお客さまに多く来ていただいています。みなさん料理の写真をとってくれるので、同じメニューを何回も撮ってもらうよりは、毎回違うものを撮ってもらえたほうが良いかな、と。うちは混んでいなければ、お席の時間に制限はないので、ゆっくり料理を楽しんでもらえたら嬉しいですね。

 

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やりたいことをかたちにしてきた、
マルヤマさんの今と、これから。

――「Switch House」は今月で1周年を迎えます。

マルヤマさん:最初の2ヶ月は泣きながら仕事をしていたんですよ。辛かったわけじゃなくて、嬉しくて。お客さまがお店に入ったとき、パッと表情が明るくなって、料理を出したときに歓声を上げて喜んでくれるのを見ると、本当に嬉しいんです。

 

――マルヤマさんとお話をしていると、独立っていいものなんだ、と感じることができます。

マルヤマさん:もう最高ですよ(笑)。自分のやりたいことがかたちになっていくのも面白いし、お店を続けている今でも自由にやりたいことができて。小さい頃ってだいたい秘密基地に憧れるじゃないですか。ここは、大人版の秘密基地を作っているような感覚なんです。自分の好きなことができる場所で、しかも自分が頑張れば、お客さまが喜んでくれて、僕も生活ができる。こんなにいいことはないな、って思いますね。

 

――自分のやりたいことをはじめるって、勇気がいることでもあると思うんです。一歩を踏み出すとき、大事にしている考えはありますか?

マルヤマさん:中学校からの大切な友達が、「死なないから大丈夫」ってことあるごとに口にしていたんです。この言葉は今でもふと頭に思い浮かびますね。今こうして好きなことができているのも、この子の言葉があったからなのかなって。根拠はないんですけどね(笑)、でもすごく安心するんですよ。

 

――最後に、マルヤマさんのこれからの目標を教えてください。

マルヤマさん:このお店が20年続くかといったら、きっとそうはいかないと思うんです。時代の変わるスピードも早くなっていますし。だから、10年以内を目安に、お店のかたちを変えていかなきゃなのかなって考えています。世間のニーズを取り入れつつ、僕の好きなことやこだわりを大事に、お店を変化させていけたらいいですね。

 

Switch House

南魚沼市六日町2168-1

ランチ 11:00-14:30

ディナー 17:30~21:00

火曜定休

※最新の情報や正確な位置情報等は公式のHPやSNS等からご確認ください。なお掲載から期間が空いた店舗等は移転・閉店の場合があります。また記事は諸事情により予告なく掲載を終了する場合もございます。予めご了承ください。

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