天ぷら蕎麦や天丼などで食べることが多い天ぷらですが、揚げたての天ぷらを食べる機会ってなかなかないんじゃないでしょうか。今回は、カウンターで揚げたての天ぷらを提供することにこだわっている「天㐂誠(てんきまこと)」を訪ね、店主の大矢さんにお話を聞いてきました。
天㐂誠
大矢 誠 Makoto Oya
1963年村上市(旧荒川町)生まれ。「ホテルオークラ新潟」や「ホテル日航新潟」で和食の経験を積み、2022年より「天㐂誠」の店主を務める。映画やアニメを観るのが趣味で、最近は「キングダム」にハマっている。
——大矢さんは料理人として豊富な経験をお持ちなんですよね。
大矢さん:そうですねぇ……。和食の道に進んで40年以上になりますからねぇ。
——いろんな料理のジャンルがあるなかで「和食」を選んだのはどうしてですか?
大矢さん:高校3年生の夏休みに、おじさんが東京でやっている寿司屋に行ったんです。そこで職人の仕事を見て料理業界に憧れまして、卒業と同時に「ホテルオークラ新潟」の和食部門で働きはじめました。
——寿司職人に憧れた大矢さんが、天ぷら職人になったきっかけは何だったんでしょうか。
大矢さん:和食の仕事をしてしばらく経った頃、天ぷらカウンターを担当することになったんです。そのときに揚げたての天ぷらを食べて、あまりの美味しさに衝撃を受けたんですよね。
——それまで食べてきた天ぷらとは違ったんですか?
大矢さん:一般的な油や天ぷら粉を使っても、職人が揚げたものってまったく違うんです。
——そうなんですね。天ぷらの修業って、どんなことをするんでしょうか。
大矢さん:私の場合は、魚をおろして下ごしらえするところからはじまりました。下ごしらえがしっかりできていないと、揚げたときに魚がひっくり返ってしまうので、みっちりとやらされましたね。そうして修業を重ねるうちに、「いつか自分で店を出すんだったら、カウンターで天ぷらを提供したい」と思うようになったんです。
——天ぷらに合う食材と合わない食材ってあるんですか?
大矢さん:それはありますね。青魚は合わないから淡白な白身魚を使うし、野菜だと大根みたいに水分の多いものは合わないです。私の個人的なおすすめは穴子ですね。
——穴子の天ぷらって、ホクホクして美味しそうですね。
大矢さん:うちの穴子は一般的な天ぷらの1.5倍もあって、とってもボリュームがあるんですよ。車海老に出世する前の才巻海老(サイマキエビ)を使うお店もありますけど、「天㐂誠」では15cm以上の車海老を使っています。
——へ〜、満足感がありそうですね。他にもおすすめの天ぷらはありますか。
大矢さん:今の季節だったらさつまいもですね。うちの店ではさつまいもの天ぷらに、ブランデーをかけて召し上がっていただくんですよ。そうすることでスイーツみたいな味わいをお楽しみいただけるんです。
——なかなか大人っぽい食べ方ですね。さつまいも以外の天ぷらは、どんな食べ方をおすすめしているんでしょうか。
大矢さん:素材本来の味を楽しんでいただきたいので、塩で召し上がっていただいているんです。村上にある笹川流れの塩と佐渡の藻塩の2種類を使っています。
——素材の味を大切にしているんですね。天ぷらを揚げる際に気をつけていることはありますか?
大矢さん:素材によって衣の厚さや固さを変えていますね。野菜は薄めにつけるようにしています。そうすることで食感が変わってくるんです。
——衣の厚さって大事なんですね。
大矢さん:衣の厚さと油の温度がぴったり合ったときに、美味しい天ぷらが揚がるんです。素材だけじゃなくて気温や湿度でも変わってくるから、加減をみるためには経験や勘が必要になってきます。
——揚げ油はどんなものを使われているんでしょうか。
大矢さん:焙煎したごま油を使うお店もありますけど香りが強くて食べ飽きてしまうので、当店では太白ごま油という生のごまを絞った油を使っています。素材の香りもしっかり生かすことができて、食感も軽やかに仕上がるんです。
——いろいろと天ぷらに対するこだわりをお聞きしましたが、他にもこだわっていることがあったら教えてください。
大矢さん:一番大きなこだわりは、カウンターで揚げたての天ぷらを召し上がっていただくことですね。味はもちろん、油が跳ねる音や香り、サックサクの食感、見た目の美しさを五感でお楽しみいただけると思います。
——天ぷらを使った料理は多いけど、揚げたてを食べられる機会って少ないですもんね。
大矢さん:新潟ってカウンターのお寿司屋さんは多いんだけど、天ぷらの専門店は少ないんですよ。だからぜひ揚げたての天ぷらを楽しんでいただきたいですし、新潟にカウンターで天ぷらを食べる文化が根付いてくれたらと思っています。きっと天ぷらのイメージがガラッと変わると思いますよ。
天㐂誠
新潟市中央区花園1-2-2 コープシティ花園[GARESSO]3F
025-250-0767
16:00-23:00
日曜、祝日、第1第3月曜休