「家のこの場所にこの大きさの家具が欲しい」「部屋にこんなデザインの家具を置きたい」自宅のインテリアや家具のこと考えていて、そう感じることってありますよね。ちょうどいい場所に、自分好みのちょうどいいものを。そんな要望に応えてくれるオーダー家具店が、新潟市江南区の「thinkwood」です。会社を設立したばかりの古泉さんに、普段どんな依頼を受けてどんな家具を作っているのか、いろいろなお話を伺ってきました。
thinkwood
古泉 徹 Toru Koizumi
1976年新潟市生まれ。幼少期からもの作りが好きで、高校卒業後、家具職人の道へ。20年をかけてふたつの家具工場で修業を積み、2021年5月に「thinkwood」を設立。趣味は薪割りをすること。
――あの、すみません。初歩的な質問になるんですけど、オーダー家具っていうのは、オーダーメイドで作る家具、ってことで合っていますか?
古泉さん:はい、オーダーメイドのことです。うちではセミオーダーからフルオーダーまで作っていて、建築屋さんからデザインされたものを頼まれることもありますし、個人の方から「こういうものを作れますか」という依頼を受けることもあります。
――「thinkwood」を設立してオーダーで家具を作ることになったいきさつを教えてください。
古泉さん:基本、会社ですと、どこかしらの建築会社が必ずくっついていて、そこから頼まれた家具を作るのが主流になるんですね。最初は私も勤め人だったので、指示されたものを作っていたんですけど、仕事を重ねていくうちに友達から「こんなもの作れない?」という依頼をされるようになって。それで自然とオーダー家具を作るようになりました。
――なるほど。これまでにどんな家具を作られてきたんですか?
古泉さん:キッチン本体、キッチンに付ける収納家具、洗面台や下足の収納、あと手洗い食器の収納……。住宅に関わるものはほとんど作ってきたと思います。最近では、美容師の方から美容室に置くための家具の依頼を受けました。
――個人のお客さんも?
古泉さん:もちろん個人で依頼される方もいらっしゃいます。これは金銭的な話になってしまうんですけど、個人のお客さんの場合、建築会社を通してオーダーされるより、直接依頼していただいた方がコストをかなり抑えられるんですよ。
――お客さんからの依頼に対して、古泉さんの方から何か提案をされることはありますか?
古泉さん:例えば「4メートルのテーブルを作ってほしい」という依頼をいただいたときは、「継ぎはぎではなく、一枚板で作った方がカッコいいですよ」といった提案をしますね。長い板ってなかなか手に入らなくて、どうしても金額が高くなってしまうんですけど、「こうした方がいい」と思ったことはきちんと伝えるようにしています。
――作り手の意見を直接聞けるというのも、オーダー家具ならではの魅力ですよね。どんなときにやりがいを感じられますか?
古泉さん:やっぱり、お客さんから「頼んでよかったわ」とか、完成したものを見て喜んでもらえたときは嬉しいですね。あとは、難しい要望を受けたときですかね。
――難しい要望というと、例えばどんなものが?
古泉さん:例えば「木は暗っぽいイメージで」とか、「木目はこんな感じで」とか、そういうふうに抽象的なイメージで伝えられたりすると難しいですよね。ただ私の場合、図面を見れば「ああ、完成はこうなるな」っていうイメージができるので、他の人よりも考える時間が少ないかもしれません。
――さすがプロですね。
古泉さん:たぶん、もともと得意なんです(笑)。図面の線だけではどうしても互いのイメージにズレが出てしまうので、完成のイメージができたら、それを手書きの漫画にしてお客さんに見てもらっています。
――え、漫画?
古泉さん:個人のお客さんから依頼を受けるときは業者をはさまないので、ヒアリングで聞いたことから漫画を描いています。時間がかかってしまうんですけど、こちらの提案とお客さんの求めていたものがマッチしたときはグッときますね。
――ところで家具作りのノウハウはどちらで学ばれたんですか?
古泉さん:「thinkwood」を設立する前、ふたつの家具工場で修業をしていたんです。ひとつ目の会社で7年、ふたつ目の会社では13年働かせてもらいました。ふたつ目の会社ではオーダー家具を受注していて、そこでは工場長を務めていました。
――ってことは、20年間も修業されていたんですか。じゃあ満を持しての独立だったんですね。
古泉さん:えーっと、そこは(笑)
――あ、お答えいただける範囲で大丈夫です(笑)
古泉さん:独立を意識していたわけではないんですけど、以前勤めていた会社とは方向性の違いが出てきたり、自分自身もやりたいことができたりして、その結果、独立するということになりました。今、一緒に働いている他のふたりは前にいた会社の仲間で、「thinkwood」のために引き抜きました。
――そうだったんですね。すごく気になっていたんですけど、社名の「thinkwood」の名付けは?
古泉さん:近(こん)っていう、うちにいる社員の奥さんが考えてくれた候補の中から選びました。「木のことを考える」。語呂もいいし、ロゴにしたときにもよさそうだなと思って。
――古泉さんの考える「thinkwood」らしさって、どんなところですか?
古泉さん:んー。みんな、人がいいところですかね。家具は人が作るものだし、作業のすべてに人が関わっているじゃないですか。「義理じゃ飯は食えない」とも言いますけど、やっぱりそこなしにはいいものは作れない。これは常々、みんなにも言っていることです。
――やっぱり古泉さんは、ずっと家具職人になることが夢だったんですか?
古泉さん:いえ、そういうわけではなかったです。小さい頃からものづくりは好きだったんですけど、「家具職人になる」という考えはありませんでした。でもあるとき知り合いから、最初に勤めた家具工場を紹介してもらって。それが家具作りを始めたきっかけですかね。
――それから20年以上家具作りを。オーダー家具の魅力とはなんでしょうか?
古泉さん:住宅の話になるんですけど、ちゃんと自分で考えて作ることができれば、決められた場所へ家具をピッタリ収めることができます。それは量販店にある家具ではできないことで、お客さんと直接やりとりをしながら、その家にふさわしい家具作りができる、そんなところがオーダーメイドの魅力だと思います。
――それでは最後に、今後の目標を教えてください。
古泉さん:従業員をもう少し増やして、働いている全員が一番手、どこに出しても問題ないと誇れる職人へ育てていきたいですね。いつも同じ職人の腕だけが買われるのではなくて、「この会社にお願いすれば安心だ。誰に頼んでも絶対に高いクオリティーのものができる」そう言ってもらえるような会社を目指していきたいです。
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