若い世代に農業の魅力を伝える「株式会社ベジ・アビオ」の若き女性社長。
ものづくり
2022.07.06
「農業」って聞くと、皆さんはどんなイメージを頭に思い浮かべますか? 「自然を相手にするから不安定で大変そう」「おじいちゃんや、おばあちゃんがやっている仕事」「土や泥まみれになりそう」そう思う人も多いのではないでしょうか。そんなイメージを取り払い、若い人たちにも農業への興味を持ってもらおうと取り組んでいるのが「株式会社ベジ・アビオ」。今年の2月、新社長に就任したのは26歳の女性でした。真っ赤なトマトの実るビニールハウスを訪れ、社長の山﨑さんから新しい農業のあり方について聞いてきました。


株式会社ベジ・アビオ
山﨑 瑶樹 Tamaki Yamazaki
1995年胎内市生まれ。新潟大学経済学部経営学科卒業。株式会社NSGホールディングに入社し、株式会社サーティファイ、株式会社ベジ・アビオで経験を積む。2022年2月に株式会社ベジ・アビオ代表取締役に就任。20年近くの剣道歴があり三段の腕前。
若い女性が農業法人の社長に就任した理由。
——山﨑さんは今年「株式会社ベジ・アビオ」の社長に就任されたばかりなんですよね。最初から農業に興味があったんですか?
山﨑さん:特に農業への興味があったわけではないんです。子どもの頃から経営者だった祖父や父の背中を見て育ったので、自然と経営者になる道を選んでいました。昔から目立ちたがり屋で、リーダーシップを取ることも多かったんです。
——じゃあ最初は農業というよりも、経営に興味があったんですね。
山﨑さん:そうですね。だから大学では、経済学部経営学科で経営の勉強をしました。卒業後は経営者になる近道だと思って「株式会社NSGホールディングス」に入社して、そこで「経営者養成コース」を選んだんです。
——ほう、そこではどんなお仕事を?
山﨑さん:最初に出向したのは「株式会社サーティファイ」という、各種能力試験を取り扱っている会社でした。そこで全国の専門学校相手に教育商材や検定の営業を2年間やって、ビジネスマナーや社会人としての責任感を叩き込まれました。あと全国的な広い目線でマーケットを見ることができるようになりましたね。
——経営者としての基礎を学んだわけですね。
山﨑さん:とてもいい勉強になりましたね。でも、もっと全体を把握できる小規模な会社を経験してみたかったので、2020年に「株式会社ベジ・アビオ」へ異動することになりました。社長の他にふたりの社員と6人のパートさんだけという小さな会社で、私は営業、企画、広報、経理、人事、総務といった農作業以外の仕事全般を担当することになりました。

——仕事の幅が広すぎるような……(笑)
山﨑さん:むしろいろいろ任せてもらえるのが嬉しかったですね。なにしろ、入社3日目で商品企画を任されましたから(笑)。大きな組織だと仕事の段取りとか、関わる人間や部署の関係性とかに気を使わなければならないんですけど、「株式会社ベジ・アビオ」ではスピーディーに物事が進められるのでやりやすいんです。
——なるほど。仕事が多くて大変というよりも、何でもできて楽しいという気持ちが強かったんですね。でも、どうして山﨑さんが社長に就任することになったんでしょうか?
山﨑さん:前社長はIT技術出身で研究畑の方なんです。農作業をやりながら事務作業をこなすのは大変なので、私に会社の経営面を任せてくれていたんですよ。でも、もっと前社長が農作業に打ち込みやすくするために、私が社長業を受け継いだといった流れなんです。社長にのし上がったわけじゃなくて、それぞれの役割分担をした結果こうなりました(笑)

イチゴ並みの糖度を誇る「とマとマとマと」。
——ところでそもそも「株式会社ベジ・アビオ」って、どんな会社なんですか?
山﨑さん:2016年に設立したベンチャー農業法人なんです。データ収集と分析を活用した、環境の自動制御によるスマート農業に取り組んでいます。
——「スマート農業」って?
山﨑さん:情報通信技術やロボット技術を活用して、省力化や高品質生産の実現を目指す新しい農業です。私達が決めた規定数値をもとにコンピュータが、栽培施設内の室温や水量を管理してくれるんですけど、それによって少ない労力で効率的に作業することができますし、比較的季節の影響を受けることなく安定した質や量の農産物を生産することができます。常にデータを集めて分析しているので、問題点の改良にもつなげやすいんです。
——なるほど。今までの農業とは違った、新しい農業なんですね。
山﨑さん:新潟県の農業が直面している、農業人口の減少や高齢化っていう課題を解決するために、たどり着いたひとつの方法ですね。今までの農業は長年関わってきた経験や勘が必要なんですけど、スマート農業を取り入れることで経験のない若い世代でも農業をはじめることができるんですよ。

——へ〜。その「スマート農業」を取り入れながら、どんな作物を作っているんですか?
山﨑さん:「とマとマとマと」っていうブランドのフルーツトマトを作っています。ただのフルーツトマトではなく、付加価値の高いフルーツトマトの市場を作りたかったのでブランド化したんです。言いにくい品名ですけど、その分印象に残るんじゃないかと思います。「マ」は「マジメ」の「マ」を表現したくって、カタカナ表記で強調してあるんです。

——その「とマとマとマと」って、どんなトマトなんですか?
山﨑さん:「アイメックフィルム農法」っていう栽培方法で作られた、甘くて美味しいフルーツトマトです。ナノサイズの細かい穴が開いたフィルムを苗と養液の間に挟むことで、養液を吸い上げにくくするんです。そうすることでトマトに負荷がかかって、実が小さくなる代わりに濃くて糖度の高いトマトになります。ちなみに糖度は10〜12度あって、イチゴやスイカ並みの甘さなんです。

——食べてみると本当に甘いですね! こちらの「そのママとマと」というのは?
山﨑さん:トマトを使ったドライフルーツです。規格外品や豊作期に収穫したトマトって、安い価格で出荷することになってしまうんですよ。でも加工品にすることで適正な価格で出荷することができるんです。ただでさえ甘いトマトを乾燥することで、甘さがさらに濃縮されます。福祉施設と連携しながら製造しているので、障がいを持つ方の就労支援にもつながっているんです。

新社長として若い世代に農業をアピールしていきたい。
——山﨑さんは新社長として、どんなことをしていこうと思っていますか?
山﨑さん:商品だけではなく、農業の魅力を伝えていきたいと思っています。私のような若い女性が農業法人の経営者をやっているのを見て、若くても農業ができるということを知ってもらいたいんです。同時に作業着じゃなく、できるだけ綺麗な格好で人前に立つことで、農業の楽しさも伝えられたらと思っています。
——はじめからずっと気になっていたんですけど、そのトマトの帽子も……。
山﨑さん:はい。農業の楽しさを伝えたくて(笑)。農業は「3K」と言われていて「汚い」「きつい」「稼げない」っていうイメージがあるんです。でも、これからは「効率的」「かっこいい」「稼げる」の「3K」にしていきたいですね。そのためにも「スマート農業」を取り入れた働き方改革を広めていけたらと思います。
——なるほど。トマトの収穫体験もその一環なんでしょうか?
山﨑さん:そうなんです。次世代農業の担い手を育てていきたいという思いもあって、お子さん達に農業を体験してほしいと思って開催しています。トマト嫌いなお子さんでも、自分で採った愛着あるトマトを食べることで、食べられるようになったりするんですよ。農業をより身近なものとして感じてもらえたら嬉しいですね。

——最後に若い人に向けて農業の魅力を伝えてください。
山﨑さん:農業は農作物と向き合う仕事だから、人間関係なんかの理不尽なストレスを感じることが少ないような気がします。今の若い世代にこそ、農業をやってみてほしいですね。

株式会社ベジ・アビオ
新潟市北区新富町1419-50
025-278-8062
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