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昼と夜、ふたつの顔を持つ交流カフェ居酒屋。南魚沼市の「やまとなり」。

浦佐駅の近くにオープンした「やまとなり」。昼はカフェ&イベントスペース、夜は居酒屋スタイルで営業しています。「若者が交流できる場所を作りたい」と意気込む島田さんが昼の部を、浦佐で飲食店「AKO cafe&bar」を営む小島さん夫婦が夜の部を担当しています。店名の「やまとなり」には、旧大和町らしさを意味する「大和なりに」と、すぐ隣にそびえる八海山にちなんだ「山隣(やまとなり)」のふたつの意味が込められているのだそう。

 

やまとなり

島田 眞伊 Mai Shimada

1991年新潟市生まれ。看護大学を卒業後、新潟市と南魚沼市で看護師として働く。2025年3月に「やまとなり」をオープン。ボードゲームやカードゲームが大好き。島田さん考案のミステリーゲームは、ビジネスコンテスト「NIIGATAベンチャーアワード2025」で最優秀賞を受賞。

 

やまとなり

小島 花織 Kaori Kojima

1986年湯沢町生まれ。短大卒業後に神奈川県で保育士として働く。地元に戻ってからは飲食関係の仕事に就き、2020年から夫婦で「AKO cafe&bar」をオープン。「やまとなり」夜の部を担当。

昼夜で変わる、「やまとなり」の2部制スタイル

――まずは「やまとなり」がどんな場所なのか、小島さん、特徴を教えてください。

小島さん:店舗は同じなんだけど、昼と夜の営業で料理もコンセプトも違うってところが面白さかなと思います。

 

――確かに、ちょっと変わった営業の仕方ですよね。どうしてこういうスタイルにしたんですか?

小島さん:ある交流会で島田さんにお会いして「考えがマッチしているかも」と思ったんです。島田さんは昼に人が集まれる場所を探していたし、私たちは夜に居酒屋をやってみたいと考えていたもので。

 

――でも小島さん、ご夫婦で「AKO cafe&bar」を営んでいらっしゃいますよね。

小島さん:「AKO cafe&bar」はラーメンやパエリアなどが人気で、どうしても「ご飯屋さん」ってイメージが強くて。「やまとなり」は「AKO cafe&bar」よりアクセスがいい場所にあるので、居酒屋営業にぴったりでした。

 

――「AKO cafe&bar」と「やまとなり」、それぞれのお店でメニューは変えているんですか?

小島さん:「AKO cafe&bar」は、夜の居酒屋タイムにも昼間と同じようなメニューをお出ししていましたけど、「やまとなり」では、お酒に合うお肉やチーズなどのおつまみ系を充実させています。

 

 

――続いて、島田さんにお聞きしますね。昼の部はどんな営業スタイルなんですか?

島田さん:カフェ兼イベントスペースとして営業しています。浦佐には大勢で集まれる場所が少ないから、交流の場を作りたいと思っていて。普段は占い師さんや足ツボマッサージ師さんに出店してもらっています。レンタルスペースとして貸し出したり、私が好きなボードゲーム関連のイベントをしたりと、いろいろなかたちで運営することを想定しています。

 

――お昼はどんなメニューがいただけるんでしょう?

島田さん:昼営業は、ワンプレートランチや丼、カレー、お菓子が定番です。ひとつの器にお野菜、お惣菜、メインをたっぷり盛り付けて、食べ応えバッチリ、栄養満点の献立になるようにしています。イベントでお越しの方には、お茶とお菓子を用意しているんですよ。チョコブラウニー、チーズケーキ、シフォンケーキも、もちろん手作りです。

 

出会いと縁が紡ぐ、たった3か月のスピード開業

――おふたりは交流会で意気投合されたと聞きましたが、小島さんは島田さんと会ったときの印象をおぼえていますか?

小島さん:初めて島田さんに会ったとき、「方向性が似てるかも」って思いました。地域を少しでも盛り上げたいと思っているところとか。

 

――ちなみに初対面のときというのは?

島田さん:去年の12月です。

 

――えぇ?!  オープンしたのは、年が明けた今年の3月でしたよね。

小島さん:島田さんに会ってから、1、2週間後にはこの物件を借りようと決めていました(笑)

 

 

――じゃあとんとん拍子で準備が進んだんですね。

島田さん:実は「小島さんご夫婦が居酒屋営業をするための物件を探している」と前から知っていて。同じようなタイミングで、ここが空き物件になることが決まっていたんです。「もしかしたら共同経営できる可能性があるかも」って、はじめから小島さん夫婦をロックオンしようと思っていました(笑)

 

――誘いを受けて、小島さんはどう思われたんですか?

小島さん:「AKO cafe&bar」で忙しくさせてもらっていたから、次の店舗を持つとしても「余力があれば」というくらいの気持ちだったんです。でも私たちが2店舗目を探しているっていう噂がなぜか広まって、この物件の前オーナーさんから「ぜひ、店舗を見て欲しい」と相談されて、島田さんとは関係なく、物件の下見をしたことがあるんです。前オーナーさんは「店を畳んでしまったら、浦佐が寂しくなって切ない」と話されていて。それは確かにそうだなと思いつつ、私たちだけでここを切り盛りするのは難しいという気持ちもありました。でも島田さんからのお誘いに、「やれないことはないかもな」って思えたんです。

 

地域への想いが詰まった、場所づくり。

――島田さんは、当初からこの場所をカフェ兼イベントスペースにしようと考えていらしたんですか?

島田さん:最初は、イベントスペースとして貸し出すだけでもいいかなと思っていたんです。でも、採算面などを考えてカフェ機能も取り入れました。やりたいことはあるんだけど、それだけでは成り立たないかなと判断したんです。

 

――やりたいことって?

島田さん:私、前職は魚沼基幹病院の看護師で、後輩の教育係だったんです。大きな病院だから、市外から来た若い看護師さんが大勢働いているんですけど、数年経つと「ここにいる意味がない」って辞めてしまうんです。話を聞くと、「飲み屋さんがない」「休日に楽しめる場所がない」と思っている人がすごく多くって。それを聞いて、「若い子たちが集まって交流できる場所を作らなくちゃいけない」と思うようになったんです。看護師時代もボードゲームの大会を開いたり、若者の交流会を開催したり、自主的にいろいろ取り組んでいたんですよ。

 

――後輩が職場に定着しないモヤモヤ感があったんですね。

島田さん:私は、すべて覚えるのに2年かかるといわれている「手術室」に勤務していました。育成に時間がかかるのに、途中で若者が辞めてしまったら大きな損失です。退職に至るのにはいろいろな事情があるんでしょうけど、もし地域にちゃんと居場所があったら、少しは状況が変わるのかなと考えていて。「みんなでお昼ご飯を食べる」でもいいし、「パブリックビューイングできる」でもいいし、まずは「交流できる場所を作りたい」って気持ちで「やまとなり」をはじめました。

 

 

――小島さんにも質問です。本格的な居酒屋営業はどうですか?

小島さん:「AKO cafe&bar」とはお客さまの層がぜんぜん違って、不思議ですね。「やまとなり」は広いから、団体のご予約も多くて。これまでのお店ではできなかった「飲み屋さんらしいこと」ができて充実しています。

 

――気軽に飲みに行けるお店が増えるのは、ありがたいです。

小島さん:この辺りでは珍しいんですけど、予約なしの飲み放題メニューも用意しているんですよ。呑兵衛さんにはぴったりだと思うんですが、まだまだ浸透していなくって。飲み物の種類も豊富なので、ぜひご利用いただきたいです。

 

「やまとなり」だから、できること。

――これから、実現したいことはありますか?

島田さん:世界的なボードゲーム「カタン」の地区予選を開催できる権利を持っているので、今年は「やまとなり」を会場に企画してみようかなと思っています。県外からも「カタン」ファンが大勢やってくるんですよ。

 

――「カタン」って、聞いたことあります。

島田さん:私、この前、新潟だけでプレイできるようにカスタマイズしたオリジナルのマーダーミステリーゲームを作成して、ビジネスコンテストで優勝したんです。その「やまとなり」版を作ってみたいと思っていて。正真正銘「ここでしかプレイできないゲーム」なので、皆さんに楽しんでもらえるんじゃないかな。

 

 

――夜の部担当、小島さんはどうですか?

小島さん:物価高ではありますけど、浦佐の皆さんには飲みに出てきてもらいたいです。私たちができる範囲、つまり美味しい料理と美味しいお酒をもっと充実させて、地域のためになれたらいいなと思います。主人が日本酒マニアなので、全国から取り寄せた変わり種の日本酒を扱うことも計画中なんですよ。観光でいらした方にも、地元の方にも「『やまとなり』にしかない食」を楽しんでもらいたいですね。まずは1年。「これはいけるぞ」となれば、2年、3年と続けていきたいと思います。

 

 

 

やまとなり

南魚沼市浦佐1622-4

※掲載から期間が空いた店舗は移転、閉店している場合があります。ご了承ください。
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