「箱」とひとくちに言ってもいろいろな種類がありますが、今回ご紹介するのは紙で作られた貼箱。新潟市江南区にある「神田紙器」では、式菓子などに用いられる貼箱を製造しながら、飾ったり遊んだりもできる箱「yookee(ヨーキー)」の提案もしています。企画・商品開発を担当している伊藤さんに、新しい視点の箱の使い方を聞いてきました。
yookee
伊藤 麻実 Asami Ito
1977年新潟市生まれ。2014年入社。営業事務として活躍しながらも「yookee」の企画・商品開発に携わる。週末になるとドライブをして新しい発見をするのが楽しみ。最近では、瓢湖で旅立たなかった白鳥を見つけたそう。
――「神田紙器」の「紙器」って、聞き慣れない言葉ですけど、何を作っている会社さんなんですか? やっぱり紙製品とか?
伊藤さん:簡単に説明すると「紙パッケージ」を製造している会社です。メインは「貼箱」という、結婚式などのお祝いの際にお菓子を詰めたり贈答用の高価な品を入れたりする箱を、オーダーメイドで作っています。
――あー、あのしっかりとした箱のことですね。
伊藤さん:燕三条地域では、カトラリーなど職人さんが手間暇かけて作った高価なプロダクトがたくさんあるから、それらを入れる貼箱を手掛けることが多いです。組み立て式の箱よりしっかりとしていて、高級感も演出できますからね。
――ちなみに貼箱って、機械で作るんですか?
伊藤さん:機械で作る工程もありますが、プロダクトや用途に合わせたオーダーメイドがほとんどなので、紙を貼る作業などは職人が行っています。
――あ、そういうことか。箱に紙を貼って作っているから「貼箱」っていうんですね。
伊藤さん:そうなんです。ひとつひとつ「こんな箱で、こんな物を入れたい」という要望を聞いて、ベースを作ってから、職人が丁寧に紙を貼って仕上げているんですよ。でも、そんな手間暇かけて作っている箱の仕事はといえば、箱に入れられた中身を壊さないように、受け取った人の手元に運ぶまで。その使命が終われば、捨てられてしまうことがほとんどです。だから、箱自体が主役になるようなことがしたいと思ってスタートしたのが、この「yookee」なんです。
――「yookee」というのは、いったいどんな箱なんですか?
伊藤さん:「アソブ × カザル × カタヅケル」をコンセプトにして、何かを入れたりするための箱に、遊んだり飾ったりの遊び心を加えた、ちょっとだけ雑貨に近い感覚の箱です。だから可愛らしい柄の箱や、ユニークな形状をした箱が多いですね。
――例えばどんな箱がありますか?
伊藤さん:箱って上下を組み合わせて完成するじゃないですか。その特性を生かして、上部に切れ込みを入れて重ね合わせたらネコになるようにした箱があります。表はネコの顔、裏はしっぽが現れる可愛いデザインで、こんな感じです。
――おー、本当だ。重ねるとネコになった。これなら部屋に飾っても可愛いですね。何種類ぐらいのラインナップがあるんですか?
伊藤さん:箱としては15~20種類ぐらいかな。今年は新型コロナウイルスの影響で参加できていないけれど、いつもはハンドメイドのイベントに出店するたびに新しい箱を企画しているから、ちょこちょこ増えているんですよね。あとは牛乳パックを手軽に可愛い箱に変身させられる紙シールとか、カレンダーや小物入れにもなるアドベントカレンダーみたいな関連商品もあります。
――面白いラインナップがたくさんありますね。どうやって考えているんですか?
伊藤さん:「作ってみたい」「使ってみたい」をメンバーで話し合っています。例えば「ハガキ箱」という商品は、バラバラになりやすい物を手軽に片付けられたり、年賀状とかをまとめられたり。そんな収納にまつわる悩みを、インテリアにもできる「飾れる箱」で解決できたらいいなって考えて、ハガキサイズの「自由に使える箱」として作りました。
――ちなみに、どんなことでもできるとしたら、作ってみたい箱ってありますか?
伊藤さん:そうですね……それなら、貼箱に皮や金属などまったく別の素材を組み合わせてみたいです。素材によってはいろんな加工ができるから、入れる物によって素材を変えても面白いと思うし、飾ったり、遊んだりできる幅がもっと広がると思うんです。
――半分が金属とか、そんな箱も面白そうですね。引き出物に入っていたら驚きそう。
伊藤さん:あと、紙に柿渋を塗る商品を作ったことがあって、いずれは紙を加工する技術を生かした箱も作ってみたいですね……ん~なんか、いろいろやってみたいです(笑)
――「アソブ × カザル × カタヅケル」のコンセプトならいろんなことにチャレンジできそうですね。
伊藤さん:ですね。暮らしに楽しさを加えながらも、ちゃんと便利に使ってもらえる箱を作るのが「yookee」の箱の役目だと思っています。この考えを崩さずに、いろんな箱の提案ができたら楽しいですね。
――それでは最後に、「yookee」を通して伝えていきたいことを教えてください。
伊藤さん:箱は何かを入れておいたり、入れて運んだり、どちらかといえば脇役としての存在です。でも、中身を取り出しても華やぐ箱があること、便利で楽しめる箱があること、そんな箱を「yookee」が作っていることを伝えていきたいですね。
インタビューを終えて、「yookee」のラインナップを手に取りながら雑談をしていました。どの箱も雑貨屋さんに並んでいそうな、飾れて、遊べる箱。そんな箱たちの中から、上下を合わせるとネコが現れる箱をお土産にいただきました。本来であれば中に何かを入れて贈るものだけど、「可愛い箱をもらったよ」と、箱だけを家に持って帰ったら「素敵な箱だね」って家族が喜んでくれました。中身がなくても喜ばれる箱、それが「yookee」の魅力なんだと感じました。
yookee(株式会社神田紙器製造所)
新潟県新潟市江南区亀田大月2-5-40
025-385-8585