うっすらと雪化粧をした弥彦山の麓、弥彦駅から弥彦温泉に向かう途中にある「割烹 お食事 吉田屋(よしだや)」。あたたかい笑顔の女将さんに迎えていただき、お店の歴史や心掛けていることについてのお話を聞いてきました。
割烹 お食事 吉田屋
佐藤 さよ Sayo Sato
1949年長岡市生まれ。22歳のときに結婚し、ご主人の家業である「吉田屋」を手伝いはじめる。6年前に亡くなったご主人の後を継ぎ、五代目店主となる。高校時代にソフトテニスでインターハイ出場した経験を持つ。
——こちらのお店は、女将さんで何代目になるんですか?
佐藤さん:四代目だった主人が亡くなって後を継いだので、私は五代目ってことになりますね。
——歴史のあるお店なんですね。
佐藤さん:初代は魚屋をやりながら、仕出し割烹を営んでいたそうです。新潟市にあった「小三(こさん)」という老舗料亭で腕を磨いた三代目が、今の場所に「吉田屋」を移転したんですよ。
——「小三」で修業した方がはじめられたとは。
佐藤さん:「小三」時代はお座敷で天ぷらを揚げていたそうです。ですから、うちの天ぷらは「小三」の揚げ方を受け継いでいるんです。あるとき高齢の男性がうちの天ぷらを食べて「これは小三の天ぷらだ」と仰ったので驚いたことがありました。
——食べる人が食べればわかるんですね。佐藤さんのご主人もどこかで修業をされたんでしょうか?
佐藤さん:東京の料亭で修業をしてきたんですが、東京と弥彦では味の好みが違うので、地元の方々が好む味に近づけるよう苦労したみたいです。
——いつ頃からお食事処もやるようになったんでしょうか?
佐藤さん:私が嫁いできたときは、まだ仕出しと割烹だけだったんですけど、これから先は仕出し割烹だけでやっていくのは難しいと考えた主人がお食事処もはじめたので、昼も夜も働き詰めになってしまいました(笑)
——お店の歴史をお聞きしたところで、今度はおすすめのお料理を教えてください。
佐藤さん:ひとつは40年ほど前からご提供している「わっぱ飯」ですね。主人がどこかで食べてきて、食事としてもお酒を飲んだ〆にも合うといって、うちの店でも提供するようになりました。塩引鮭といくらを乗せた親子わっぱ飯なんですけど、塩引鮭の塩味が強くなり過ぎないように、身をバラして塩味の濃い部分と薄い部分をバランス良く混ぜて使っているんです。お米は地元の「伊彌彦米(いやひこまい)」、お醤油は「伊彌彦醤油」を使っています。
——地元の材料にこだわってつくられているんですね。ほかにもおすすめの料理はありますか?
佐藤さん:もうひとつは「稲庭うどん」なんです。これも主人が食べて気に入ったので提供をはじめました。よく「おたくは秋田のご出身なんですか」なんて聞かれるんですけど「美味しいから提供しているだけです」なんて答えています(笑)
——どちらもお酒の後の〆に合いそうですね。
佐藤さん:そうですね。あと「大判イカメンチ」も看板料理です。直径約15cmの大きなイカメンチを、切らずにそのままお出ししています。ソースで召し上がっても美味しいんですけど、醤油とも合いますので是非試してみていただきたいですね。
——おお、ものすごいボリュームですね(笑)。料理をつくる際に心掛けていることってあるんでしょうか?
佐藤さん:人の口に入るものだということを意識して、衛生面に特に気を使ってつくるように心掛けています。あと主人がよく言っていた「万人受けする味がいちばん」という言葉も忘れないようにしているんです。
——お店を営業していく上で大切にしていることってありますか?
佐藤さん:お越しくださったお客様に喜んで帰っていただけるよう、心を込めた接客を心掛けています。それで次回もまた来ていただけたら嬉しいですね。
——実際にまた来てくれるお客さんって、多いんでしょうか?
佐藤さん:ありがたいことに、たくさんいらっしゃいますね。うちの店を気に入ってくださった観光のお客様が、次の旅行の際にも旅行社に「昼食は弥彦の吉田屋にしてほしい」とリクエストしてくださったこともあるんです。
——それは嬉しいでしょうね。
佐藤さん:飲食店をやっていなければ出会うことのなかった方々と出会えるのは、本当にありがたいと思いますね。お客様と年賀状のやり取りをすることも多いんですよ。あと有名人が来てくださることもあります(笑)
——ご主人が亡くなってからは、ご苦労されたんじゃないですか?
佐藤さん:ちょうど地元の大イベント「弥彦菊まつり」のシーズンで、団体の予約がたくさん入っていたんですけど、スタッフと力を合わせてなんとか乗り切りました。子ども達もそれぞれ他の仕事についていたので、店を閉めようと何度も思ったんですけど……、その度に予約が入ってきたので、辞めずに続けてきたんです。
——そうだったんですね。
佐藤さん:子ども達も「母さんがやりたかったら続ければいい」と言ってくれたので、75歳までは頑張ろうと思って。
——失礼ですけど、もうその年齢になられたんじゃ……。
佐藤さん:そうなんですよ。2年前に息子が東京から帰ってきて、ときどき店の手伝いもしてくれるようになったし、今は出来るところまで精一杯頑張ってみようと思っています。
割烹 お食事 吉田屋
西蒲原郡弥彦村弥彦941-2
0256-94-2020
10:00-14:30/17:00-20:00
不定休