今年8月に中央区万代にオープンした「ヨウビ」は、食材やコスメ、調味料やトゥンカロンなど、韓国人オーナーの鄭さんが本場韓国で流行っているアイテムをいち早く入荷して販売しているお店です。今回は鄭さんにオープンまでの経緯や取扱商品、トゥンカロンのことなど、いろいろとお話を聞いてきました。
鄭 賢眞 Jeong Hyunjin
1992年ソウル市生まれ。作曲の専門学校を卒業後、軍隊生活を経て日本語学校で日本語を学ぶ。その際、講師のボランティアをしていた、のちに奥様となる春香さんと出会う。2016年に来日し東京の日本語大学へ入学。新潟市に移住したのを機に2017年「鄭家(ちょんか)のタッカルビ」をオープン。2019年に店舗を万代に移転し「コリアンダイニングぽちゃ」としてリニューアルオープン。
――「ヨウビ」さんは、韓国のアイテムを取り扱うお店です。どんな商品がありますか?
鄭さん:コスメ、お菓子、ラーメン、ドリンク、調味料、マカロンがメインになっています。韓国の20~30代の、流行に敏感な層が普段買っているような商品をいち早く取り入れて、販売しています。毎週東京に行って、輸入代理をお願いしている会社さんを訪ねているので、韓国で今人気があるものをリアルタイムで取り入れることができています。
――以前「コリアンダイニングぽちゃ」さんも取材させていただいたんですが、今年、2店目として「ヨウビ」さんをオープンするまでの経緯を教えてください。
鄭さん:日本での生活で食べ物に満足ができない時期があったんです。私が食べたい韓国の食材が見つからなくて、置いてあったとしても辛ラーメンとか日本向けに人気があるもので、私が韓国で暮らしていたときに食べていたものは新潟のどこを探してもなかったんです。だったら自分でお店を開いたら早いんじゃないかと思ったのが、この店を作ったきっかけになります。
――例えばそれは具体的にはどんなものですか?
鄭さん:味噌ひとつにしても、韓国の味噌汁に使う味噌が見つからなかったです。それは「ぽちゃ」でも同じで、本場の韓国の味を追求していったときに、どうしても代用がきかない調味料がでてくるんですよ。
――味噌汁の味は日本と韓国では全然違うんですか?
鄭さん:韓国の味噌汁は味がまったく違いますね。日本がしょっぱくて醤油系の味だとすると、韓国のはもうちょっと出汁がきいているようなイメージです。韓国は味噌汁を「おかず」としてご飯を食べる習慣があるので、味の付け方が日本よりしっかりしていて、メインディッシュになるので味も濃いめが多いと思います。
――他にはどんなものがありますか?
鄭さん:醤油の味も全然違うし、塩も種類があって、キムチ専用の塩があったりするんです。唐辛子の粉にしてもキムチ用と料理用で分かれていたりしますし。そういうのはやっぱ日本にはなかなかないんですよね。もちろん日本食は大好きなんですけど、そもそもジャンルがもうまったく別物なんです。
――じゃあ、来日当初はホームシックになったんじゃないですか。
鄭さん:東京に住んでいたときはなかなか日本食に慣れなくて、とても苦労した記憶があります。小さい頃から韓国の味噌汁を飲んで育ったので、日本の味噌汁が少し苦手でした。それはどちらが美味しいとかではなくて、単純に慣れとか好みの部分なんですけど。特に赤味噌が苦手で、白味噌にすると少しは飲めます。やっぱり調味料ひとつで大きく味が変わってしまうんです。一度スンドゥブチゲが食べたくてコンビニで買ったんですけど、やっぱり本場とは全然味が違っていて食べれなかったということもありました。日本の韓国料理は、やっぱり日本の調味料で日本人向けに作られているので、本場のとは違うわけですね。
――韓国料理とはいえ、やっぱり日本人向けに作られているんですね。
鄭さん:なので「ぽちゃ」を始めたのは、本場の韓国料理を私が食べたかったからで、「ヨウビ」を始めたのはより本場の味に近づけるために調味料を調達するためっていう部分が大きいです。
――新潟でも本場の韓国の味が楽しめるわけですね。
鄭さん:新潟のご飯はとても好きです。韓国に住んでいたとき、魚は食べられなかったのに、新潟で臭みのない魚料理に出会って魚を食べられるようになりました。でもやっぱり故郷の味も恋しくなることがあるので、そうなったときに食べられないのは、どこか満たされない部分がずっとあるような感覚ですね。
――心が落ち着くふるさとの味ってありますよね。
鄭さん:日本でも味噌、醤油とか、日本食によく使われて慣れ親しんでいるものほど微妙な変化って気がつきやすいですよね。海外に行って日本食料理屋に行っても「なんか違う」って経験ありませんか? 急に食べたくなったときに食べられないっていうのはとても辛いですよね。
――お店のお客さんの反応はどうですか?
鄭さん:まず「これ何?」って聞かれることはとても多いですね(笑)。韓国好きでドラマとかよく見ている方は、「あ、これドラマで見たやつだ」って言って買ってくれたりしますね。韓国ドラマで出てくるのに買えないものって多かったと思うんですけど、それがうちにくれば買えますね。
――当然、韓国の方も来られますよね?
鄭さん:韓国人の方が来ると「あ、やっとここにあった。ずっとこの調味料を探してたんだ」とか「この調味料入れてくれてありがとう」みたいな反応はとても多いですね(笑)。日本人の方にはやっぱ見ただけでは分からないので、使い方など説明しながら販売させてもらっています。
――リピーターさんもいらっしゃるんじゃないですか。
鄭さん:調味料は結構リピーターさんも多くいますね。韓国の方は懐かしい味が楽しめますし、日本の方も韓国の本場の味がお家で再現できるのがよいところだと思います。若い方向けのお店作りにはなっていますけど、主婦の方にもおすすめです。
――この「トゥンカロン」というマカロンみたいな商品についても教えてください。
鄭さん:韓国人の方が新大久保で運営しているトゥンカロンのお店があるんですけど、そこがトゥンカロン系のお店の中で全国で売り上げが一位なんです。「すこぶる動くうさぎ」っていうキャラクターを持っている会社さんで、そのキャラクターを使ったトゥンカロンなんですけど、そのお店とご縁があってうちのお店でも販売させてもらっています。12月7日にはこのお店をもう少し拡大リニューアルしてカフェも併設する予定になっているんですよ。全国でいちばん人気のあるトゥンカロンが新潟でも食べられるってすごくないですか?
――ちなみにどういうきっかけで?
鄭さん:妻がもともとそこのトゥンカロンが好きで、「ヨウビでも販売したい」と言っていたので、直接電話をして交渉させてもらいました。そうしたら代表の方と意気投合して、置かせてもらえることになったんです。なかなか契約をしてくれるのが難しい会社さんと聞いていたのでとても驚きました。
――このトゥンカロンの特徴を教えてください。
鄭さん:他のトゥンカロンと比べると少し甘さは控えめなんですけど、素材の味がしっかりと出ていますね。ブルーベリーのジャムにしてもパウダーとか香料でごまかすのではなく、きちんとブルーベリーを刻んだものが入っています。そういうのってなかなかないんですよ。あと、ここのトゥンカロンはイタリアの製法を取り入れていて、外はカリカリで中はふんわりの食感が楽しめます。日本ではフランスの製法を取り入れているパリパリした食感のものが多いので、イタリア製法のトゥンカロンは珍しいと思います。
――日本で食べられるマカロンとは、じゃあ製法が違うんですね。
鄭さん:でも若い子たちは新大久保に結構行っている子も多くて、商品をすでに知っていて買ってくれる子もいますね。逆にまったく知らないけど、見た目が可愛いから買って、次の日にもっと買いにきてくれる子とかもいます。見た目で買ったけど味も美味しくてリピーターさんになってくれるんです。
――これから「ヨウビ」をどんなお店にしていきたいですか?
鄭さん:韓国好きの皆様にはもちろん、韓国をあまり知らない人にももっと楽しんでいただけるお店作りを心掛けていきたいです。飲食店は「ぽちゃ」だけなんですけど、飲食業ももっと広げていきたいです。お店からの購入だけじゃなくてネット販売や、宅配もやっていけたらいいなと思っています。もっと手軽に韓国の料理や商品などを楽しんでいただきたいですね。
ヨウビ
TEL:025-384-8482
営業時間:10:00~22:00
定休日:なし