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韓国の家庭で作られるような本場の味が楽しめる、小千谷の「キムチ工房」。

小千谷市にある「キムチ工房」は、本場韓国の製法で作られるキムチのお店。シンプルで身体によい材料だけを使う手作りキムチは、発酵することで酸味が増し、料理との相性もよくなるのだとか。店主の長谷川さんに市販のキムチとの違いやお店が愛される理由など、いろいろとお話を聞いてきました。

 

キムチ工房

長谷川 英明 Hideaki Hasegawa

1981年韓国生まれ。小学校6年生のときに日本へ移住。専門学校を卒業後、小千谷市で焼肉店を営む。2002年に「キムチ工房」をオープン。その後、店舗を家族に託しアメリカで食を学び、帰国後にイタリア、フランス、メキシコ料理店などで経験を積む。3年前に「キムチ工房」へ戻り、現在代表を務める。

 

キムチは酸味を楽しむもの。韓国の家庭で作られる本場の味。

——長谷川さんは、専門学校を卒業されてすぐに焼肉屋さんをはじめられたんですね。

長谷川さん:専門学校は建築系だったんですよ。でも、高校生のときから飲食店でアルバイトをしていたので、そっちに興味が向いちゃって。建築関係の道には進まず、いきなり焼肉屋をはじめちゃいました。小千谷市にもともとあった「山ちゃん」という焼肉屋をそのまま引き継いだ感じでした。旧「山ちゃん」が閉店して、10日後にはオープンしたんじゃなかったかな。しかも、外観も店名もそのままで。

 

——反響はいかがでしたか?

長谷川さん:オープン直後は暇だったんですけど、半年後には予約でいっぱいの満席状態になりました。でも、未熟な状態で営業していたんですね。お客さまは来てくださるんだけど、朝から晩まで働いてもほとんど儲からなくて。

 

——それからどうしてキムチのお店をはじめることに?

長谷川さん:その頃、お客さまの中に市役所や消防署の職員さんがいらっしゃったんです。「キムチが美味しいから、職場に売り来てよ」とリクエストされて、お昼に販売しに行ったら、1時間半くらいで焼肉屋の1日の売り上げに到達したんです。それで「キムチ1本に絞った方がいいんじゃないか」ということで、建物を購入して、母と一緒に「キムチ工房」をはじめました。

 

 

——長谷川さんは韓国ご出身ですよね。キムチはやっぱり本場の味?

長谷川さん:韓国の家庭の味です。日本では紅生姜や梅干しが酸味を足す副菜ですよね。韓国では、それがキムチなんですよ。乳酸が発酵して酸っぱくなるところにも韓国らしさがあります。日本のスーパーで売られているキムチとはちょっと違いますかね。大量生産型のキムチは味を安定させる、発酵の過程で容器を膨張させないなどの理由で、甘みと辛味、酸味のバランスが最初から整っていてph調整剤や保存料が入っていますから。

 

——なるほど。もう少し違いを教えてください。

長谷川さん:うちは韓国の製法で、唐辛子などは韓国の材料を使っています。それを出来立てで販売しています。フレッシュな状態で食べても美味しく召し上がっていただけますし、1週間ほど経つと野菜と薬味の旨味が調和してまた違った味わいになります。2週間以降で徐々に乳酸発酵が進み、辛さがマイルドになってキムチ特有の酸味が出てきます。発酵が進むと身体にもよいですし、料理に使用するにはより相性がよくなるんですよ。

 

——へぇ〜。2週間経ってからの味が楽しみになりますね。

長谷川さん:「キムチ工房」のキムチは、うちの母の味ですね。日本でいうぬか漬けみたいに、私が小さい頃はどの家庭でも当たり前にキムチを漬けていました。

 

保存料未使用。シンプルな材料で作られる、健康食品。

——店頭販売以外に、小千谷市近郊のスーパーにキムチを卸しているんですね。

長谷川さん:コロナ禍で移動販売をしなくなったので、スーパーさんに卸す量を増やしました。中越エリアが多いですけど、新潟市や新発田市の「韓ビニ」さんでも購入していただけますよ。

 

——これだけ種類豊富なキムチを扱っているお店って、珍しいのでは?

長谷川さん:東京ではキムチ専門店がいっぱいありますよね。韓国ではアイスクリーム屋さんみたいにたくさんの種類を販売していますよ。岩海苔のキムチ、貝のキムチなんかもあるんです。

 

——ちなみに本場では、キムチの食べ頃はいつなんです?

長谷川さん:酸っぱくなってからです。「キムチ工房」では、酸っぱくなってから召し上がっていただく前提で作っています。キムチ通にはたまらない熟成キムチに仕上がるのは、製造してから2週間経ってからです。

 

 

——厨房には見たことないくらい大きな桶がありましたね。きっとすごい量を作られるんですね。

長谷川さん:数百パックは作りますかね。初日は材料を塩漬けして、翌朝水を切ってから味付けをします。白菜キムチに使う白菜は、日本と韓国ではちょっと違います。水分が少ない白菜がキムチに向いているんですけど、日本の白菜はお鍋用なのかちょっと厚くて水分がたっぷり含まれているので、しっかり水抜きをしないといけません。八百屋さんには、なるべく葉の薄い白菜をお願いしています。

 

——ベーシックなキムチはやっぱり白菜ですか?

長谷川さん:白菜、大根、きゅうりですね。うちはその他にイカキムチ、チャンジャ、サキイカキムチ、ニラキムチ、セロリキムチ、水キムチなどもご用意しています。

 

——「キムチ工房」さんらしい工程ってありますか?

長谷川さん:特別なにか仕込んでいるわけじゃないけど、素材が肝かなと思います。キムチってすごくシンプルに作られているんですよ。塩、唐辛子、ニンニク、生姜、魚醤、あみエビの塩辛が大事で。それらは「本当に美味しい」と思うものを選んでいます。保存料などは一切使っていないので、安心して食べていただけるし、発酵食品は身体によいですよね。だからうちのキムチは健康食品だと思っています。

 

美味しくて身体によいキムチを提供することに意義がある。

——長谷川さんはアメリカに留学したり、イタリア料理、フレンチなども勉強されたりいろいろ経験されたそうですね。

長谷川さん:人が足りなくて大変だというので3年ほど前に「キムチ工房」に戻ってきました。料理人として経験を積んだので、それで食べて行こうと思っていたんですけどね。

 

——「キムチ工房」さんに戻る決め手はなんだったんですか?

長谷川さん:母の年齢的な問題もありましたし、料理人としての経験を生かしてファンの方々のために愛されている味を継承したい、未来へ繋いでいきたいという思いがありました。

 

 

——ご自身で立ち上げたお店ですもんね。

長谷川さん:23、24歳まで2年くらい「キムチ工房」を営んで、それからアメリカに食べ歩き留学に行ったんですよ。カフェブームだったし、おしゃれなカフェでもはじめてみたいなと思って。

 

——ということは、当時は「キムチ工房」さんがゴールではなかった。

長谷川さん:「ずっとこの商売を続けるのか」と思ってはいました。若かったですし(笑)。飲食の仕事が好きだったので、自分の人生がキムチだけ、日本だけで終わるのは嫌だったんです。アメリカから帰国してフレンチレストランで修行し、それからイタリアンの勉強もして。中越地震のとき、店を建て替えてスーパーにも卸そうかというタイミングで一旦帰ってきたんですけど、落ち着いてからまた外に勉強に行きました。

 

——そして再び「キムチ工房」さんでお役目がめぐってきたと。

長谷川さん:20年以上続けられているのは、皆さんに必要とされている商品を作っているってことですよね。安心できる素材だけを使って、身体にいい発酵食品を提供するのはうちの役割だと思っています。お客さまの身体によい食品、そして味もよいものを作ることに意義があると思っているので、今の製法でこれからも本場のキムチをお届けしたいですね。

 

 

 

キムチ工房

住所/新潟県小千谷市薭生丙1404

営業時間/9:00〜18:30

定休日/土曜日

TEL/0258-82-2406

※掲載から期間が空いた店舗は移転、閉店している場合があります。ご了承ください。
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