下田地域の大自然に囲まれて味わう手打ち蕎麦「そば処 山河」。
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2021.08.19
栗ヶ岳や守門岳に囲まれる三条市下田地域はとても自然が豊かなエリアで、イワナやアユが泳ぐ五十嵐川の上流には、特別天然記念物カモシカの生息地としても知られる笠堀ダムがあります。ハヤブサの繁殖地でもある八木ヶ鼻は、県天然記念物にも指定されています。そんな貴重な自然が残っている下田地域に、手打ち蕎麦や料理を提供している「そば処 山河(やまか)」という店があります。今回は店主の中山さんから、自然を生かした蕎麦や料理についてお話を聞いてきました。


そば処 山河
中山 博貴 Nakayama Hiroki
1981年三条市生まれ。東京で働いていた後、2008年に新潟に戻り、父親が経営する「そば処 山河」を手伝い始める。2011年に起こった「新潟・福島豪雨」により店舗が被災するが、2016年に営業を再開。現在は二代目店長として、こだわりの手打ち蕎麦を提供。「ミシュランガイド2020 新潟版」にも掲載される。実益を兼ねた渓流釣りが趣味で、五十嵐川の生態系を守るため「ブラックバスターズ」を主催。
豪雨被害による店舗倒壊からの復活。
——「そば処 山河」は中山さんが開業したお店なんですか?
中山さん:いいえ、「そば処 山河」は親父が始めた店で、僕は二代目になります。最初は他にやりたい夢があったので、東京で夢を追いながら働いていたんですよ。でも結婚を機に夢に見切りをつけて、下田に戻って親父の店を継ぐ決心をしたんです。
——蕎麦作りはお父さんから教わったんですか?
中山さん:まったく未経験のまま帰ってくるわけにもいかないと思って、帰ってくる前に東京の蕎麦屋で修行してきました。とはいっても、新入りは粉に触らせてもらえなくて雑用ばかりだったので、親方や先輩の仕事の様子を目に焼きつけるだけでした。休みの日は図書館に通って蕎麦関係の本を読んでは勉強していました。

——「そば処 山河」では、以前から手打ち蕎麦をやっていたんですか?
中山さん:親父がやっていた頃は製麺所から取り寄せた麺を使っていたんですが、これからの蕎麦屋は手打ちじゃなければダメだと思ったので、親父の下で働きながら、休みの日は蕎麦打ちの練習をしていました。自分が打った蕎麦を常連のお客様に食べてもらうと評判が良かったので、僕の手打ち蕎麦でやっていくことになったんです。でも、その矢先に店が倒壊してしまったんですよ……。
——えっ、ちょっと待ってください。お店が倒壊したって、どういうことですか?
中山さん:平成23年の7月29日に起こった「新潟・福島豪雨」で、店の後ろにある五十嵐川がダムの放流で増水して、岸が崩れて店も一緒に倒壊してしまったんです。ちょうどその日は息子が風邪をひいて熱を出してしまったので、僕はお休みをもらって、店ではなく家にいたんですよ。今考えると、息子が僕を助けてくれたのかなと思ったりするんですけど……。幸い店で働いていた父も母も避難していて無事だったんですが、お店はひどい状態でしたね。

——それは大変でしたね……。じゃあ、今のお店は建て直した建物なんですね。
中山さん:そうなんですけど、再建がなかなか大変だったんです。水害保険なんて入っていなかったし、父は70歳を過ぎていたので借金できないし、僕も新居を建てたばかりだったから住宅ローンがあったし……。親父は八方手を尽くして再建しようとしましたが、なかなか目度が立たなかったんです。僕は蕎麦屋を諦めて、地元の会社でサラリーマンとして働き始めました。
——生活もあるしローンもありますもんね……。でも、そこからお店を再建して、こうして再開。
中山さん:息子が家で蕎麦打ちの真似をしていたんです。被災したときはまだ1歳だったのに、僕が蕎麦打ちの練習をしていたのを見て覚えていたんですね。その息子の「またパパの作ったお蕎麦が食べたいな」という言葉を聞いて、蕎麦打ちへの情熱がよみがえったんですよ。周りの人たちの協力もあって、なんとか「そば処 山河」を復活させることができました。本当に感謝しています。

自然の恵みを受けて作る蕎麦や天ぷら、そして魚料理。
——「そば処 山河」の蕎麦はどんなことにこだわっているのか教えてください。
中山さん:蕎麦の「鮮度」を大切にして、「挽きたて」「打ちたて」「茹でたて」にこだわっています。その日の提供分だけを石臼で挽いて手早く打ち上げ、お客様からの注文が入ってから茹でるようにしているんです。
——作りたての蕎麦を食べることができるわけですね。他にもこだわっていることはありますか?
中山さん:下田で作られている「とよむすめ」という品種の蕎麦を使っています。この蕎麦はルチンなどの栄養価が高くて、粒が大きいんです。その蕎麦と井戸水で汲み上げた五十嵐川の伏流水を使って打つことで美味しい蕎麦ができるんです。蕎麦を育てた水と蕎麦を打つ水が、同じ下田の水だから相性がいいんですよね。

——蕎麦も水も下田の自然から生まれたものを使っているんですね。
中山さん:蕎麦以外の天ぷらや魚料理も、下田の自然に育まれたものを使っています。天ぷらは地元で採れた旬の食材を使った7品で、春は山菜、夏は夏野菜、秋はきのこが楽しめます。魚料理は僕が釣ったものや地元の漁師さんから分けてもらったものなので、手に入ったときしか提供できないんですけど、イワナやヤマメの塩焼き、カジカの唐揚げなどをときどきお出ししています。8月に入るとアユの塩焼きなんかもお出しできるときがありますね。魚が手に入ったときには店内のPOPで告知しています。

——蕎麦以外にもかなり下田の恵みを受けているんですね。それも自然に恵まれた地域だからできるんでしょうか。
中山さん:そうですね。ただ、五十嵐川にも外来種のブラックバスによる生態系破壊の被害が増えてきているんです。僕は漁師の知り合いもいて漁協とのつながりもあるので、たびたび被害の話を聞いていたんですよ。それで自分にもブラックバスを駆除する協力ができないかって考えて、「ブラックバスターズ」というシステムを立ち上げたんですよ。
——どんなシステムなんですか?
中山さん:釣り上げたブラックバスを「そば処 山河」にお持ち込みいただくことで、持ち込んだ数によって、割引や無料サービスが受けられるというものです。皆さんの力も借りながら、五十嵐川本来の姿を守り続けていきたいんですよ。

——なるほど。ブラックバスって放っておくと、生態系を壊してどんどん繁殖してしまうんですよね。ちなみに持ち込まれたブラックバスはどうするんですか?
中山さん:ブラックバスも自然の恵みとして美味しくいただくことはできないかと考えまして、燻製に挑戦している処です。店の裏に燻製の製造所を作って、現在は販売許可の申請中なんです。ゆくゆくはブラックバスの燻製が下田の名物になったらいいなと思っています。
——そうなったら下田の生態系も守られるし、一石二鳥ですね。
中山さん:僕はこの自然豊かな下田に人を呼びたいと常に考えていて、勝手に「しただPR大使」を自称しているんですよ(笑)。具体的に何をしたらいいのかまだ考えているところですが、「そば処 山河」をきっかけにして、多くの人が下田にきてくれたらいいなと思っています。

自然の災害によって一度は店を失いながらも復活を遂げ、その自然を生かしながら蕎麦や料理を提供し続ける「そば処 山河」の中山さん。近年は下田の自然を守るために、五十嵐川の環境保全の一環として「ブラックバスターズ」の取り組みを行い、下田の観光PRについてもできることはないかと考えています。皆さんもお出かけの際は下田地域を訪れてみてはいかがでしょうか。豊かな自然と「そば処 山河」の美味しい手打ち蕎麦が味わえますよ。
そば処 山河
新潟県三条市大谷地94-1
080-2140-5556
11:00-蕎麦がなくなり次第終了
水曜休
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