師走になりクリスマスが近くなると、洋菓子店はとても忙しくなります。そんななか、取材に応じてくれたのが新潟市秋葉区にある「菓子工房マツサカヤ」さん。クリスマスムードに彩られた店内で、3代目店主の齋藤さんから洋菓子づくりのこだわりを聞いてきました。
菓子工房マツサカヤ
齋藤 一平 Ippei Saito
1990年新潟市秋葉区生まれ。「にいがた製菓・調理専門学校 えぷろん」卒業後、家業の「菓子工房マツサカヤ」でお菓子作りの修業に励む。現在は父の後を継ぎ3代目店主として、新たなお菓子に挑戦を続ける。最近キャンプをはじめ、アウトドアライフを楽しんでいる。
——クリスマス前のお忙しい時期なのに、取材対応していただき、ありがとうございます。
齋藤さん:いえいえ、うちは毎年クリスマスケーキの動きが遅いので、これから徐々にバタバタしてくる感じなんですよ。
——じゃあ、ギリギリのタイミングだったんですね(笑)。「菓子工房マツサカヤ」さんは歴史の古いお店なんですか?
齋藤さん:うーん、うちは祖父も父も早くに亡くなってしまったので、昔のことはあまりよくわからないんですよね……。でも祖父が創業してから63年くらいは経っていると思います。元々は和菓子屋だったんですけど、父の代に洋菓子が流行ってきたので、上京して洋菓子の知識や技術を学んできたそうです。それからは洋菓子をメインに続いてきました。
——おじいさんが創業したってことは、齋藤さんで3代目ということですよね。最初からお店を継ごうと思ってました?
齋藤さん:いや、最初はもっと他に面白いことがあると思っていたので、違う仕事をやりたかった時期もありました。でもお菓子作りの仕事をやってみたら、父が朝から晩まで夢中になって働いていた気持ちがわかる気がしましたね。
——夢中になって働いていた気持ち、というのは?
齋藤さん:お客様の顔を直接見ることができなかったり、声を聞くことができないような仕事もあるなかで、お客様の顔を見ながら働けるのって、幸せなことだと思うんです。お客様の支えがあるからこそ、頑張れるんだなぁと感じましたね。
——齋藤さんは若いときはどこかのお店で修業をしてきたんですか?
齋藤さん:東京のいろいろな洋菓子店を食べ歩いて、すごく美味しい店を見つけたんですよ。どうしてもそこで修業したかったんですけど、残念ながら働くことができなかったんです。その店で働けないんだったら、他で働かなくてもいいかなと思ったので、家業の「マツサカヤ」で働きながら、父からお菓子作りを学びました。
——お店に並んでいるお菓子は、お父さんの代から続いているものなんですか?
齋藤さん:昔から続いているお菓子もあれば、僕がはじめたお菓子もあります。新しい商品を開発するときは、失敗を繰り返しながら試行錯誤して生み出していますね。
——新商品を考えるときに意識することってあるんですか?
齋藤さん:コンビニスイーツが強力なライバルだと思っています。コンビニスイーツって、テレビ番組で紹介されるとすぐに人気が出て売り切れが続くじゃないですか。その上、値段ではとても太刀打ちできない。だからうちではコンビニができないことをやるようにしています。
——コンビニではできないスイーツって、どんなものなんですか?
齋藤さん:少し値段は高くなってしまいますが、新鮮な旬のフルーツを使うようにしています。今は季節に関係なくフルーツが手に入りますけど、僕は季節にこだわりたいと思っています。だからイチゴショートにしても、モンブランにしても、旬を過ぎたフルーツを使っているケーキは作りません。
——旬を意識した商品には他にどんなものがありますか?
齋藤さん:春と秋にはヨモギを使った草餅が定番になっていますね。昔から地元の人たちに人気がある商品なので、やめるわけにはいかないんですよ(笑)。夏には旬のフルーツを使った「くず氷」を季節限定で作っています。国産の葛粉と旬の食材で作ったシャーベット状の商品で、くずの弾力とシャリシャリした食感が人気ですね。イチゴミルク、抹茶、パイン、マンゴー、巨峰など、期間中は常に10〜12種類を用意しています。
——なるほど、新旧の人気商品にも旬がしっかり意識されているんですね。他にもおすすめがあったら教えてください。
齋藤さん:父の代からの人気商品にロールケーキがあります。いつも7種類は店頭に並んでいるんですけど、すべて生地が違うんですよ。けっして見た目の派手さはありませんが、味には自信があります。ちょっとした手土産には最適なお菓子ですね。
——変わったお菓子といえば?
齋藤さん:にいつ商店街のイベントをきっかけに作った「レールバウム」ですかね。新津はかつて「鉄道の町」といわれていたので、レールをモチーフにしたバウムクーヘンを作ってみました。鉄道モチーフのお菓子って商品として難しいんです、色が暗くなりがちで(笑)
——ああ、確かに。でも「レールバウム」には、秋葉区を盛り上げたいという気持ちがこめられている気がします。
齋藤さん:そうですね。今は特に商店街がさみしいと感じますよね。閉まっているシャッターに鉄道の絵を描いたりして盛り上げようとしていますけど、お店が開いているに越したことはないですもんね。うちのお菓子が、少しでも秋葉区を盛り上げるお役に立てればと思っています。
——このカウンターはイートインスペースなんですか?
齋藤さん:そうですね。お店でコーヒーくらい提供したいなと思って作ったんです。カフェっぽくなったせいか、カウンターを作ってから若いお客様が増えましたね。今後も気づいたところは少しずつ改装していきたいと思っています。
——なるほど。他にも今後やってみたいことはありますか?
齋藤さん:キャンプ場が併設されたカフェをやってみたいですね。秋葉区には宿泊できる施設がほとんどないので、気軽に泊まれるようなキャンプ場があったらいいのにと思うんですよ。
先代から受け継いだ味を守りながらも、新しい味に挑戦している齋藤さん。旬にこだわるため、お店に並ぶお菓子のラインナップはちょくちょく変わるのだとか。ぜひ旬の味覚を求めて、その季節だけ食べられるお菓子を買いに「菓子工房マツサカヤ」へ行ってみてはいかがでしょうか。コンビニスイーツでは味わえない、特別な美味しさに出会えるかもしれませんよ。
菓子工房マツサカヤ
新潟市秋葉区金沢町2-6-10
0250-22-1159
9:00-19:00
月曜休