長く使えるから、思いを込められる。「庖丁工房タダフサ」の鋼包丁。
ものづくり
2021.12.28
日々の夕飯、お弁当づくりに、レシピサイトや料理本を参考にしている方、いらっしゃいますよね。私は料理の腕を磨こうと、いつもいろいろなサイトを見ています。あるとき、人気料理家さんの愛用品として、三条の「庖丁工房タダフサ」の包丁が紹介されているのを目にしました。いったいどんな包丁なのかとても気になって、包丁メーカー「株式会社タダフサ」さんにお邪魔し、いろいろとお話を聞いてきました。

株式会社タダフサ
大澤 真輝 Naoki Osawa
1978年新潟市生まれ。東京の大学を卒業後、都内で就職。2014年に新潟に戻り「株式会社タダフサ」に入社。役職は「番頭」で、社長のサポートや広報など様々な仕事を担当している。自社の製品で特にお気に入りなのは、ケーキもカットできるパン切り包丁。

株式会社タダフサ
山本 妙子 Taeko Yamamoto
1995年三条市生まれ。東京の専門学校を卒業後、三条市内に就職。美容室で働いた後、2020年に「株式会社タダフサ」へ転職。ファクトリーショップとオンラインショップの担当。自社製品で特にお気に入りなのは、使い勝手の良いペティナイフ。
切れ味はよい、だけど「錆びる」。鋼製の包丁に愛用者がいる理由とは。
——今日はよろしくお願いします。まずは会社のことについて教えてください。
大澤さん:はい、「株式会社タダフサ」は切刃に鋼を使用した包丁を製造販売しています。本職の料理人さん向けもありますが、ご家庭で使っていただく包丁がメインですね。使い勝手と見た目が好評で愛用者も多く、料理研究家さんやフードコーディネーターさん、カフェなどでも使用してもらっています。
山本さん:CMなどの広告活動はしていないんですが、SNSを活用して、お客様とコミュニケーションを取ることを重視しています。そのためか、レシピ本を出されているような料理研究家の方や知名度のあるYouTuberさんなどが当社の製品をよく紹介してくださるんです。それで、「タダフサの包丁」を知ってくださっている方が多いんだと思います。
——そうなんですね。会社の雰囲気はどんな感じですか?
大澤さん:職人、スタッフとも真面目なメンバーが多いですね。日々の学びが多い職場だと思います。それと、当社の社長は「燕三条 工場の祭典」の立ち上げメンバーのひとりなんですよ。地域を盛り上げたいという思いのある会社ですね。
山本さん:ファクトリーショップに立ち寄られたお客さまには、せっかくなので燕三条周辺を巡って欲しいと思うんです。なので、近郊の観光情報などをお伝えすることもありますよ。

——ものづくりのまち、燕三条には包丁メーカーがたくさんありますよね。「タダフサ」の包丁には、どんな特徴があるんですか?
大澤さん:いちばんの特長は、「切れ味がいい」ことです。最近は錆びにくいオールステンレス製の包丁などが主流ですが、当社の製品は鋼を挟み込んだ鋼材を使用しているので、「切れ味は良く、お手入れ次第で錆びる包丁」なんです。なので、お客様には使った後の簡単なお手入れと、半年〜1年ごとの研ぎ直しをお願いしています。毎日のお手入れでは、水分を拭き取り、しっかり乾かすことが基本です。サビが出てしまったときは、研磨剤などで軽く擦ると、簡単にサビを落とすことができます。手入れをして道具を大切に使う。そんな丁寧な暮らしを好まれる方が増えていますね。
山本さん:包丁を長く使っていただくために、職人による研ぎ直しのサービスも行っています。他社の製品でも構いませんので、ご家庭にある包丁をお持ちいただければ、職人が一本一本丁寧に研ぎ直しをします。

——私、いつもはシャープナーを使って包丁を研いでいるんです。でも、シャープナーって包丁の切れ味が戻ったな、と思っても、すぐにまた切れなくなるような気がするんですが……。
大澤さん:私たちは、ご家庭で包丁をメンテナンスしていただくのがいちばん良い方法だと思っています。なので、シャープナーを使うことに問題はないんですが、包丁の切れ味は長持ちしないかもしれませんね。家庭でのメンテナンスって面倒でしょうし、どうしたらよいか分からない方もいると思いますので、ご自宅で研ぎ直しをしてみて「いまひとつだな」と思ったら、どうぞお気軽に包丁をご持参ください。
——自宅の包丁を職人さんが手入れしてくれるなんて、嬉しいですね。
山本さん:いつも数名で来てくだるお客さまは、お友達の分もまとめて毎回10本以上の包丁を持って来られますよ。その本数だと2時間くらいお時間をいただくので、こちらが作業している間に、皆さん、ランチに行かれたり、観光されたりと周辺散策を楽しんでいらっしゃいます。

道具の手入れも楽しんで。何十年も使える「タダフサの包丁」。
——タダフサさんの包丁って、どれくらい使えるものなんですか?
山本さん:「おばあちゃんから代々受け継いで、30〜40年使っている」という方もいらっしゃいます。鉛筆って、芯がある限り使えますよね。それと同じで、包丁に鋼が残っている限り、研ぎ直して使うことができるんです。
大澤さん:遠方にお住いの方にもご利用いただけるように、包丁の研ぎ直しは郵送でも受け付けているんですよ。それから、柄(持ち手)が割れた場合などでも、できるかぎりの修理をしています。

——包丁の種類がたくさんあるなかで、「基本の3本 次の1本」というセットが気になりました。
大澤さん:包丁っていろいろな種類があるから、分かりにくいんですよね。それで、「まずこれだけ揃えれば十分」という、パン切りナイフ、三徳包丁、ペティナイフを「基本の3本」。料理の腕が上がったら揃えたい1本として、牛刀、出刃、小出刃、刺身包丁を「次の1本」としてご案内しています。
山本さん:工芸品のリブランディングをサポートしている奈良の「中川政七商店」さんと一緒に作った企画で、発売してもうすぐ10年経ちます。どなたにも使いやすい組み合わせなので、贈り物としても人気があるんですよ。

長く使える包丁を支えるため、包丁の相談場所のような存在に。
——包丁のプレゼントって、とっても嬉しいですよね。必ず使うものですし。
大澤さん:以前は、包丁って「縁を切る」などと言われて、お祝い事にふさわしくないと思われていました。でも、最近は「悪縁を絶つ」「未来を切り拓く」という意味合いが受け入れられて、新生活や結婚のお祝いとして選ばれることが多いようです。
山本さん:12月はクリスマスがあるので、いつも以上にオンラインショップの受注が増えるんですよ。愛用者さんが口コミで広げてくださったり、贈り物としてリピートしてくださったり。何十年も使える包丁なので、製品をお届けした後も長いお付き合いをさせていただけるんですよね。
——包丁がただのツールではなくて、特別なものに思えますね。
大澤さん:安価な包丁を頻繁に買い替えるという選択もあります。でも僕たちは、包丁は使い捨てするものではなく「自分の思いを込められるもの」だと思っているんですね。そんな包丁を1本持って、長く使っていただくためにも包丁の相談場所のようになりたいと思っているんです。

取材後、ご用意いただいた包丁で野菜を試し切りさせてもらいました。自宅の包丁とは、切れ味がまったく違ってびっくり。「サクッ、サクッ」と野菜が切れる感覚を手元に感じることができ、それがとても心地良かったです。長く使える包丁を探している方は、ぜひ「タダフサ」へ。ファクトリーショップでは現物を見ることができますし、タイミングが良ければお値打ち品もあるそうですよ。
株式会社タダフサ
三条市東本成寺27-16
TEL: 0256-35-4848
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