120匹のフトアゴヒゲトカゲがお出迎え。村上市の「蜥蜴喫茶LIFE」
カフェ
2022.02.12
国道7号を車で走っていると、村上市の荒川地区にとっても気になる看板が。「蜥蜴喫茶LIFE」という見慣れない漢字と言葉の組み合わせのこのお店は、今年1月にオープンしたばかり。蜥蜴=トカゲを抱いたり撫でたり撮影したり、ふれあいを楽しめるカフェで、トカゲの中でも「フトアゴヒゲトカゲ」に特化したお店とのこと。店内でのんびり過ごしている100匹以上(!)のフトアゴさんたちに囲まれながら、同店の前田さんに詳しくお話を伺ってきました。



蜥蜴喫茶LIFE
前田 知子 Tomoko Maeda
1977年村上市生まれ。家族ぐるみのフトアゴヒゲトカゲの飼育趣味が高じ、愛玩動物飼養管理士をはじめとする各種資格を取得して2022年1月にふれあいカフェ「蜥蜴喫茶LIFE」を開業。 お店の立ち上げや運営には中3の息子さんと中1の娘さんも協力。自宅では猫も2匹飼っている。元教員。

出会いは意外と最近、ひょんなことがきっかけ。家族ぐるみで虜に。
――しかしすごい数ですね……いったい何匹いるんですか?
前田さん:生後3カ月の幼体から4歳の成体まで、120匹います。みんなとっても大人しくてかわいいですよ。
――みんな同じ種類なんですか?
前田さん:そうです、みんなフトアゴヒゲトカゲです。原生地はオーストラリアの内陸なんですけど、本国からの直輸入は禁止されているので、いま日本にいるのはペットとして他の国から輸入された子や、国内で繁殖した子です。野生の子はもっと砂漠っぽい色なんですけど、うちにいるのはハイカラ―というやや色鮮やかなタイプです。品種改良されてもっとハッキリした色を持った種類もいるんですけど、ハイカラ―はそれらに比べて野生に近い分、丈夫で飼いやすいといえるかもしれません。
――前田さんはやっぱり元々こういった爬虫類がお好きだったんでしょうか?
前田さん:子どもの頃から確かに動物好きで、近所でカナヘビを捕まえたりもしてましたけど(笑)、実はペット自体はあまり飼ったことはなかったんです。フトアゴアゴヒゲトカゲを飼い始めたのも、4年ほど前からです。

――意外と最近ですね。この4年の間にいったい何があったんですか?
前田さん:(笑)。きっかけは、娘が猫を飼いたがったことですね。それで休日に家族でペットショップに行ったんですけど、実は最初から娘に諦めてもらう算段だったんですよ。値段を見せて「こんなに高いからやめましょうね」って(笑)。でもそのはずが、そのお店で偶然目に入ったフトアゴヒゲトカゲに家族全員心を奪われてしまって……。
――そうなんですか(笑)
前田さん:猫を避けたのは息子がアレルギー体質で毛の落ちる動物は心配だったこともあったんですが、爬虫類なら毛が落ちることもないし。とにかくかわいいし、値段もそれほど高くないし(笑)、購入して連れて帰ってきたのがすべての始まりです。その子も今お店にいますよ。

猫や犬より飼いやすい? その魅力を多くの人に伝えたい。
――その最初の一匹からここまで増えたのは?
前田さん:飼い始めて次の子どもたちの誕生日に何が欲しいか聞いたら、ふたりとも「自分のフトアゴが欲しい」って(笑)。それで新たに2匹仲間入りしたんです。しばらくしたら、最初に飼ったメスと次に飼ったオスとの間で卵ができちゃって。普通に飼っていれば卵ができることも、孵化させることも難しいはずなのですが。それでも命を授かったわけだから、子どもたちも含め知識をつけて世話をがんばって、孵化させることができたんです。とはいえ、たくさんは飼えないので、子どもたちが里親募集のチラシを手作りして撒いたりして譲渡もしてきたんですけど、気が付けば自宅の一室が専用の「トカゲ部屋」になってました。
――その二匹がアダムとイブだったんですね(笑)。でもトカゲって、飼うのが大変そうなイメージがあるのですが。
前田さん:そんなことありませんよ。フトアゴヒゲトカゲは昼行性だし、本当に大人しいし、噛んだり引っかいたりもほぼしないし、音もほとんど立てません。食事も幼体のときはコオロギやミルワームなどのタンパク源が必要ですが、成体になれば菜食になります。ペットショップで栄養バランスの取れた専用の餌も売っていますし、そもそも餌や水分の限られた砂漠育ちなので食事にはうるさくなくて(笑)、日光浴することで体内で自給できる栄養素もあります。室温のキープさえ気を付けていれば、ひょっとしたら犬や猫よりも手がかからないかもしれません。日光浴や温浴(お風呂)が大好きで、そのときの気持ちよさそうな表情はたまならいですよ。
――そうなんですね……。で、それから開店までは?
前田さん:自宅の「トカゲ部屋」が手狭になってきたこともありますが、私自身、フトアゴヒゲトカゲに救われたところもあったので、多くの方にその魅力をお伝えしたいと思ったんです。また、譲渡先募集では想定以上の反応があり「好きな人、興味のある人ってこんなにいるんだな」との実感もありました。それから、実際にもらってくれた方から「飼っている人たちが集まれる場所、コミュニティがあったらいいね」という話もいただいて。それで愛玩動物飼養管理士をはじめ必要な資格を取得し、展示・販売の許可も得て、開店しました。開店にあたっては、子どもたちも積極的に取り組んでくれました。看板やマスコットキャラクターなどは娘のお手製ですし、息子はコーヒーの淹れ方を極めてくれたりしています。

癒しから絆の媒介、「命の教育」にも。気軽にふれあいや相談を。
――今さらになってしまいましたが、お店のシステムを改めて教えてください。
前田さん:1ドリンクとお菓子、トカゲとの「ふれあいタイム」付きで入場料が大人1000円、小・中・高校生500円です。時間制限はありません。写真や動画の撮影もフラッシュをオフにしてもらえれば自由です。ケージ等に入れてきてもらえれば、ご自身の爬虫類ペットの同伴もOKです。お店ではフトアゴヒゲトカゲ本体のほか、ひと通りの飼育グッズ、スターターセットなども販売しています。もちろん相談にも乗りますので、興味がわいたら気軽に声をかけていただければ。
――飼おうかどうか迷っている方が、ここで「お試し」でふれあうこともできるということですね。
前田さん:そうですね。逆に飼いたいけれど諸事情で飼えないという方も、お店でじっくり堪能してもらえればと思います。

――ところで先ほどチラリと仰っていた、ご自身が「フトアゴヒゲトカゲに救われた」経験というのは。
前田さん:えーと……率直に言えば勤め人だった時代、仕事で心身ともに疲れ切っていたんです。医師からも「引きこもりになっていてもまったくおかしくない状態」だと言われました。そんな私が、フトアゴに出会って、世話をすることによって回復することができたんです。飼育を通じて、子どもたちとのコミュニケーションが活発になり、家族の絆も強くなりました。今から振り返れば、体調を崩していた時にフトアゴに出会って飼うようになったのも、それからお店を開くことになったのも、偶然に偶然が重なった結果といえばそうですが、すべては必然ような気もしています。塞翁が馬ならぬ、塞翁がトカゲ、なのかな(笑)。だからこそ、このお店は来てくれた方にとって癒される空間にしていきたいと思っています。
――まだ開店まもないですが、反応はいかがですか。
前田さん:大雪やコロナもありなかなかですが、子どもたちの友人が来てくれるのは嬉しいですね。「初めは怖いと思ったけど、実際に抱っこしてみるとすごくかわいい」と言ってくれる子もいて、開店してよかったなと思います。息子自身も、以前は虫が苦手で触れませんでしたが、フトアゴを飼うようになってからはすっかり大丈夫になりました。お店の営業を通じて、子どもたちへのそういう効果も広めていければなとも思います。
――ひいては「命の教育」のような。
前田さん:そうですね。私たち家族も飼育を通じて本当に色んなことを学びました。もちろんどれだけ大切に育てても、死に接する機会はありますし……。このお店が命のかげがえのなさについて学ぶきっかけにもなればと思います。そのことは、店名に込めた思いのひとつでもあります。

取材中、実際に「ふれあい」体験をさせてもらいました。初めはおそるおそるでしたが、ゴツく見える表面は拍子抜けするほど柔らかく、痛そうなトゲも実はフニフニ。お腹からは体温が感じられ、背中をなでると気持ちよさそうに目をしばたかせます。そののんびりとした動きや表情、環境によって微妙に色が変わる表面の模様は、猫や犬とはまた違った「ずっと見ていたい」類の魅力があります。コロナ禍で何かとストレスを溜めがちな昨今、みなさんもぜひこのお店に足を伸ばして体験してみてはいかがでしょうか。


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