古町6番町の「古町演芸場」が閉鎖してから約2年。今年の4月に復活を遂げたこと、皆さんご存知でしたか? しばらくシャッターの降りていた演芸場前には、明るく灯った提灯が並び、のぼり旗が風になびき、かつての賑やかな雰囲気が戻ってきました。「古町演芸場」を復活させた支配人の逸見さんを訪ね、復活への思いやいきさつを聞いてきました。
古町演芸場
逸見 友哉 Yuya Henmi
1980年山形県生まれ。新潟大学演劇研究部にて演劇活動をおこない、多数の演劇に関わる。同OB会を経てフリーランスの役者として活動をはじめる。新潟の舞台芸術を活性化するため「創るつながるプロジェクト」に所属。「新潟古町えんとつシアター」「古町演芸場」で舞台芸術監督兼支配人を務める。
——支配人の逸見さんも演劇をやられているんですよね?
逸見さん:はい、学生の頃から演劇に関わってきました。現在は「古町演芸場」と「新潟古町えんとつシアター」で支配人と舞台芸術監督を兼任しています。
——もともと子供のときから演劇に興味を持っていたんですか?
逸見さん:叔母が秋田で劇団を運営しているので、それを見て育ったというのもありますが、本格的に興味を持ったのは高校時代からでした。演劇コンクールで全国制覇をした演劇部に入部して演劇を続けるうちに、その面白さや奥深さにハマっていったんです。
——演劇のどんなところに 魅力を感じたのでしょうか。
逸見さん:当たり前のことなんだけど、テレビや映画とは違って、舞台での演劇っていうのは観客の目の前で生のお芝居をするんですよ。だから毎回同じことをやっているのに、芝居の間や観客の反応というのは毎回違ってくるんです。そういったライブ感が大きな魅力だと思いますね。
——なるほど。それで大学でも演劇部に入るんですね。
逸見さん:高校のときにやっていた演劇は、コンクールなんかの大きな舞台ばかりだったんですけど、大学ではアングラな小劇場での公演がほとんどで、高校時代とはまったく違った魅力があったんですよ。台本、演出、舞台のすべてを自分たちで作り上げる楽しさがありましたね。僕は役者をやりながら舞台監督も務めていました。大学時代はもう、演劇かバイトしかしていなかったですね(笑)
——どっぷり演劇にのめり込んだ学生時代を過ごしたんですね(笑)。大学卒業後も演劇を?
逸見さん:いえ、サラリーマンになって観劇専門になりました。ところがしばらくして大学の後輩に誘われて演劇部のOB会に参加して、それからふたたび演劇に戻ることになったんです。フリーランス期間を経て「劇団第二黎明期」に所属することになりました。
——逸見さんは「古町演芸場」の他に「新潟古町えんとつシアター」の支配人も兼任されています。
逸見さん:僕達が演劇の公演に使っていた「シアターent.(エント)」という西区の小劇場が、2014年に閉鎖されることになったんです。自分たちが公演できる劇場がなくなってしまったので、僕が脱サラして新しく劇場を作ることになりました。サラリーマンとしてではなく、好きな演劇の道で夢を追ってみたいと思ったんです。
——脱サラして自分で劇場を立ち上げるとは……。演劇に賭ける強い情熱を感じますね。ちなみに「えんとつシアター」っていうユニークな名前には、どんな由来があるんですか?
逸見さん:以前使っていた劇場が「シアターent.」という名前だったので、それにあやかって「シアターent.2」とつけたんですが、それをもっと親しみやすく平仮名に変えて「えんとつ」にしてみました(笑)
——たしかに誰にでも読めて親しみやすい名前です(笑)。その「えんとつシアター」の運営をやっている逸見さんが、「古町演芸場」の支配人になったのはどうしてなんですか?
逸見さん:コロナ禍の影響があって、一昨年の5月に「古町演芸場」が一度閉館することになったんです。でも、ただでさえ寂しい古町がもっと寂しくなってしまうと思ったし、せっかくの施設を取り壊すのはもったいないと思ったので、オーナーに交渉して僕に運営を任せてもらうことにしたんですよ。
——でも、一度閉館した「古町演芸場」を復活させるのは、大変だったんじゃないですか?
逸見さん:いや〜、大変でしたね。クラウドファンディングをして、足りない分は借り入れして資金を作りました。
——演芸場を復活させるにあたって、新しくはじめたことってあるんですか?
逸見さん:前のように大衆演劇だけでは同じように立ち行かなくなると思ったので、演劇をやっていない時期でも活用できるコミュニティスペースをはじめたんです。作業場や会合などに幅広く使っていただけると思います。劇場を利用した多目的ルームの他、トレーニングルーム、シアタールーム、キッズルーム、それから仮眠室まであるんですよ。
——ところで大衆演劇って、どんなところが魅力なんですか?
逸見さん:僕がやってきた演劇よりもエンターテイメント性が強くて、誰もが無条件に楽しめるところですかね。演劇だけじゃなく歌あり踊りありで、サービス精神にあふれた舞台を楽しむことができます。若い人にはあまり馴染みがないかもしれませんが、是非一度体験してみてほしいですね。
——サービス精神旺盛だからこそ、一度見てハマる人も多いんでしょうね。
逸見さん:県外からも追っかけのお客様が来られるほどです。そういう意味では立派な国内版インパウンドだと思いますよ。古町を盛り上げる力は十分に持っている施設だと思いますね。先日は「花魁道中(おいらんどうちゅう)」を再現して、古町モールを花魁が練り歩いたんです。そのときも多くの人たちが集まって盛り上がりを見せました。そんなふうに今後も商店街を盛り上げていけたらいいなと思っています。劇団を呼ばない期間には、落語や寄席の公演をしたり、お化け屋敷を開催したりして、若い人たちにもどんどん足を運んでいただいて、大衆演芸や古町の良さを知ってもらえたら嬉しいです。
古町演芸場
新潟市中央区古町通6番町967番地
025-201-8201
10:00-18:00
不定休