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0.25mmで描く緻密な世界と独特の余白。線画作家「フジタミユ」。

キャンバス地の余白を大胆に生かした繊細な筆致で、新潟や長岡、東京、海外などの街並みを描く線画作家・フジタミユさんの作品展(二人展)『繋ぐ』が、現在、新潟市中央区西堀前通の「ギャラリー蔵織」で開催されています。今回は会期の初日に会場にお邪魔して、創作活動のこと、これまでのこと、影響を受けた作品のこと、いろいろフジタさんに直接お聞きしました。(会期は〜12月11日(日)まで。ぜひ記事と一緒に会場で作品をお楽しみください。)

 

 

フジタミユ Miyu Fujita

1996年見附市生まれ。長岡市在住の線画作家。新潟デザイン専門学校イラストレーション科卒。HI-TEC-Cブラック0.25ミリのペンでキャンバスに街並みを描く。

 

スタイルは、極細ペンによる繊細で細密な線画。

――今回で6回目の展示会ということですけど、そもそもフジタさんが絵を描くことを始められたのはいつ頃ですか?

フジタさん:絵を描くこと自体は2歳か3歳くらいのときからですね。親に自由帳をいっぱい買ってもらって、家にある黒のボールペンで描いていました。恐竜とか、お人形とか。

 

――ボールペン? じゃあ今のペン画にもつながるところがありそうですね。

フジタさん:意外とつながっているかもしれませんね。

 

――今のスタイルに落ち着いたのは?

フジタさん:19歳のときに専門学校の修了制作で人情横町の絵を描いたんですけど、その少し前にターナーっていう絵の具のメーカーのコンペがあって、そこでまったく違う作風の絵を描いたんです。そしたらその絵の上にスペースが余ってしまって、どうしようかなって考えていたら先生から「じゃあ東京のビルを描いてみなよ」ってアドバイスをいただいて、それでペンでビル群を描いてみたのが、この作風のきっかけですね。

 

 

――じゃあそのときに「あ、これがいい」って感じたわけですか?

フジタさん:はい、自分の中ですごくしっくりきて。それ以前は人を描いたりしていて、本当は人を描くのは好きだったんですけど、でも作品にするってなったらどうなんだろうってずっと疑問に思っていて。

 

――人、というのはどんな感じの?

フジタさん:キラキラした目の、少女漫画みたいな感じのイラストです。でもその東京のビルを描いたときに、自分はこっちの方が向いているなって思ったんです。修了制作のときは人情横町の他に、道頓堀、東京のビル、あと新潟の街並みを2箇所描いて、5点の作品に仕上げました。

 

――今はもう、ご自分のスタイルをこの線画で決めたわけですね。

フジタさん:はい、それは主軸としてがちっと決めています。

 

「自分の妙な心地よさ」を追求する、余白と構図。

――普段どんなふうに着想したり、制作したりしているんですか?

フジタさん:外を歩いていて「あ、これがいい」「これを描きたい」って気持ちになったものを写真に撮りためておいて、あとで家に帰ってから描きます。やっぱり角度が違うと見え方が違うので、写真は同じ場所で何枚も撮って、そこから厳選して、みたいな感じです。1点描くのに4時間とか5時間くらいですかね。だいたいひと晩かふた晩で描き上げます。

 

――下描きはせずに直接キャンバスに描かれるということですが、ペンだからやり直しはきかないですよね。

フジタさん:やり直しはきかないですね。

 

――ちょっとくたびれたような古い街並みを描かれることが多いと思いますが、それは新しい整然としたビルよりもそっちの方が好きだからですか?

フジタさん:きれいなビルもすごく好きなんですけど、新潟だと古い街並みの景色の方が多いので(笑)。だから東京行くと、「うわーっ」って新鮮に思うんです。でもやっぱり、結局描くのはちょっと汚い感じとかアングラな感じのするところの方が多いですね。

 

――六本木とか汐留のビル群より、吉祥寺とかがいい、みたいな。

フジタさん:あー、そっちの方がもう全然好きです。

 

 

――フジタさんの作品は余白が特徴的ですよね。実は余白が主人公じゃないかって感じることもあるのですが、これは当然意識して?

フジタさん:意識してやっています。それこそ修了制作のときから、正確に測っているわけではないですけど、自分の中ではミリ単位で絶対にこの位置、ここらへん、というのはしっかり考えてやっています。余白や構図に関しては、自分の妙な心地よさを追求したくて。本当のあるべき構図よりも、少しズレたところに置きたい気持ちがあるんですよ。

 

「レオナルド・ダ・ヴィンチの手稿がめちゃくちゃ好きで。え、何この人! って思ったんです」

――絵をずっとやっていこうというのは、子どもときから思っていたんですか?

フジタさん:「創作をしたい!」って強い気持ちがあったわけではないんです。でも思い返してみると、「自分の存在を残すものが欲しい」というのは常にあって。友達と過ごす時間ももちろん楽しくて好きなんですけど、ひとりで絵を描く時間がもう何よりも好きでした。のめり込んで「自分の世界に浸りたい」って気持ちが子どもの頃は強かったですね。

 

――絵から離れていた時期はなかったんですか?

フジタさん:高校が農業高校だったんで、そのときは実験とかでいろいろ忙しくて、あまり描かなかったなってのはありました。

 

――農業高校? そこからデザイン専門学校に入るっていうのは異色ですね。高校時代に進路を選ぶときも「描きたい」という気持ちがあったわけですね。

フジタさん:絵は常に描きたいと思っていましたね。やっぱり進路としてはまわりから反対されました。「そこに行って何があるの?」みたいに。でも自分がどれだけできるか試したい気持ちが強くて、親に頭下げて(笑)

 

――今までに影響を受けた作品はありますか?

フジタさん:私、レオナルド・ダ・ヴィンチの手稿がめちゃくちゃ好きで。授業ではじめて見たときに「え、何この人!」って思ったんですよ。教科書に載っていたんです、手稿が。一本の線でこれだけ描けるのか、こういう人がいたんだ、って衝撃で。

 

――やっぱり細い線、好きですよね?

フジタさん:細い線、大好きですね(笑)。それで、それからは大友克洋さんの作品をサブスクとかアニメで見て影響を受けて。

 

――影響というのは作風とかテクニックの面ですか? それよりも気持ちの面の方が大きいですか?

フジタさん:気持ちが大きいですね。まず気持ちがガッと動いて、それから自分の中にどう落とし込もうかなって考えていきます。あとは、影響という面では、小学生のときに長岡の近代美術館に祖父母に連れて行ってもらったことがあって、そのときはじめて西洋絵画を生で見たんですけど、それが雷に打たれたような衝撃だったんです。それは今でもはっきり思い出せるんですよ。絵は平面でじっとしているのに、そこから伝わってくる不思議な何かがあって。あ、自分の好きな世界ってここなんだ、って感じたんですよね。

 

 

――これから描いてみたいもの、あったら教えてください。

フジタさん:もう、自分が見たもの全部を描きたいです。見たもの、食べたもの、嗅いだもの、花の匂いとか、全部。そこから派生して自分の世界を作って、自分の世界で街を作っていきたいという気持ちもあります。

 

――大きなサイズの作品に挑戦したいという思いはありませんか?

フジタさん:ありますね。100号がサイズとしてはいちばん大きいんですけど、でもそれ以上のものも描いてみたいと思っています。将来的なことでいえば、30歳になったら大きな美術館で飾れるくらいのものを描けるように、力をつけていきたいと思っています。

 

――これからの作品もとても楽しみです。今回はお忙しい中ありがとうございました!

 

 

 

▼開催中

フジタミユ/yasu

『繋ぐ』

2022年11月26日(日)~12月11日(日)

11:00~18:30(水曜定休/最終日11:00~16:00)

会場:ギャラリー蔵織

 

フジタミユ

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