新潟市東区に「山の下市場通り」と呼ばれる、昔ながらの面影を残す商店街があります。精肉店や酒店、生活雑貨店などが建ち並ぶなか、隠れ家のように佇むのが今回ご紹介するカフェ&パティスリー「Allenson(アレンソン)」です。オーナーパティシエの相羽さんから、様々なこだわりについてお話を聞いてきました。
Allenson
Allenson
相羽 暁 Satoru Aiba
1988年新潟市東区生まれ。製菓専門学校を卒業しそのまま同校の製菓助手となる。その後退職しパティスリーなどで働き、3年後に講師として製菓専門学校へ復帰。2020年10月に山の下で「Allenson」をオープンする。ファッションと猫が好き。
——まずは相羽さんがパティシエを目指すことになったいきさつから教えてください。
相羽さん:美味しいパンを自分の手で作ってみたかったので、最初はパン職人を目指していたんです。ところが製菓専門学校でパンと一緒にお菓子作りを勉強しているうちに、お菓子作りの魅力にハマってパティシエになりたいと思うようになりました。
——お菓子作りのどんなところに魅力を感じたんでしょう。
相羽さん:お菓子作りって、めちゃめちゃ難しいんですよ。素人がプロと同じものを作ろうとしたら、何年もかかると思います。でもそれほど難しい作業だからこそ、上手く出来たときの達成感や喜びは大きいんですよね。
——それでパティシエを選んだんですね。専門学校を卒業してからは?
相羽さん:そのまま母校で製菓助手として働きました。体調を崩して一度辞めて他の仕事についたんですが、3年後にまた講師として母校から迎えていただいたんです。
——今度は教える側に立ってみて、いかがでした?
相羽さん:人に教えるためには、自分もその分勉強しなければならないんです。特に講師になりたての頃は教えるための知識が足りなかったので、夜中の3時くらいまで授業の準備や勉強をすることも多かったんですよ。人に教えながら、自分も教わっていたような感じでしたね。
——なるほど。ところで自分でお店をはじめようと思ったのはどうしてなんですか?
相羽さん:学校で学んだ多くの知識や技術を生かして、自分ひとりでどこまでやれるのかを試してみたくなったんです。
——店名になっている「allenson」って言葉は、あんまり聞き覚えがないような気がします。
相羽さん:「Allen Iverson(アレン・アイバーソン)」っていうNBAのバスケットボールプレイヤーの名前から、自分の名前の「アイバ」を差し引いたものなんです。これには自分の名前よりも、自分の作った商品を前に出したいという意味を込めました。彼の背番号は3番だったので、この店名にも3つの意味を込めたんです。
——じゃあ、あとふたつの意味が隠されているんですね。他にはどんな意味があるのか、教えていただけますか。
相羽さん:ちょっと長くなるんですけどお話ししますと、アイバーソンの愛称は「答えを出す」という意味の「THE ANSWER(ジ・アンサー)」なので、このお店でもお客様の求める「答え」が見つかればいいなと思うんです。あと彼の身長は180cmしかないんですが、ダンクシュートができるジャンプ力があるんです。このお店も彼のジャンプみたいに、大きく飛躍できたらという願いを込めました。ちなみに、僕は全然バスケットボールに詳しくないんですけどね(笑)
——最後にすごいオチがありましたね(笑)。今度は「allenson」のコンセプトを教えてください。
相羽さん:頑張っている大人を応援するお店でありたいと思っています。僕にとっての「大人」って年齢はあまり関係なくて、他人の気持ちを考えて行動できる人のことなんです。だから年齢に関係なくご利用いただきたいと思っています。
——ちなみに、どんなふうに大人を応援していきたいと思っているんでしょうか?
相羽さん:ケーキの糖質には精神の疲労を回復する効果があるので、美味しいケーキを食べて元気になってほしいですね。あと、カウンターでいろいろな人と話すことで、少しでも気持ちを軽くしてほしいなって思っています。子どもたちは大人の背中を見て育つんだから、まずは大人に元気を出してほしいと思っています。
——お菓子を作る上でこだわっていることを教えてください。
相羽さん:「Allenson」に来なければ食べられないような、味や見た目のケーキを意識して作るようにしています。
——オリジナリティを出すように心がけているということでしょうか。
相羽さん:そうですね。例えばイチゴムースに少しだけラズベリーのピューレを加えてみるというように、ちょっとした変化をつけることで、他のお店とは違うオリジナリティが生まれると思うんです。
——なるほど。
相羽さん:パティシエには素材を生かして作る人と、自分で味を作り上げる人の2種類がいると思うんです。僕は後者のタイプなんですよ。生のフルーツをふんだんに使うよりも、パティシエの技術を生かしたケーキを作りたいんです。
——料理でいうとフレンチっぽいタイプなんですね。他にもこだわりがあったら教えてください。
相羽さん:ひとりでお店をやっていると忙しくなりがちなんですけど、忙しくなり過ぎないように気をつけています。他人に優しくできるのは、自分に余裕があるからだと思うんです。僕は周りの人たちに優しくありたいので、心に余裕を持つようにしています。疲れると作るお菓子の味にも影響が出ますし……。
——えっ、どんなふうに影響が出るんですか?
相羽さん:疲れていると身体が糖分を求めるせいか、作るケーキが甘くなり過ぎてしまうんです。
——それは知りませんでした。ケーキ作りって、とても繊細な作業なんですね。
相羽さん:最初にお話したように、ケーキを作るのってめちゃめちゃ難しいんです。その上、長時間立ちっぱなしの重労働でもあるんですよ。そういった苦労もあるんですけど、お客様に美味しく召し上がっていただいて、元気になっていただければ嬉しいですね。
Allenson
新潟市東区山の下町7-25
025-369-4170
12:00-19:30(土曜祝日は18:00まで)
日月曜休